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<ネタバレ>前作はそれなりに楽しんで観た口だが「フォースの覚醒」は多くの謎を投げっぱなしにした作品だった。まずレイは何者なのか。なぜ強大なフォースを持っているのか。そしてファーストオーダーの最高指導者スノークの正体は?ルーク・スカイウォーカーが身を隠しているのは何故か。その答えを用意されているのが今作だと思っていた。
前作を観た時にも予感があったのだがどんな理由があろうと暗黒面に落ちた弟子をほったらかして引き籠っているルークはちと卑怯ではないのか と。そして結局はその理由も自分の弱さから来ているものだったことが今作を観て分かってくると、なかなか重い腰を上げないルークに観客はイライラを募らせていくのではないだろうか。そしてたいした修行をしたようにも思えないレイの相変わらずの強大なフォース。彼女が何者なのかも結局はわからないまま。そして、スノークの死。え?死ぬの?で、いったい誰やねんこいつ。
たいした答えも用意されないまま進んでいくストーリー。しかしこの作り方は作り手たちの意思表明なのかも知れない。何者でもない者の物語。レイもフィンもポーも結局は何者でもないのかも知れないが物語の主人公になれるのだと。私たちもそうなれるのだと。「フォースはジェダイの為のものではない」という言葉も何者でもない少年のラストカットで今作が終わることもきっと無関係ではない。そして何者でもない者たちとスカイウォーカーの血筋との戦いになっていくことを予感させる構図は、新しい作り手とジョージ・ルーカスの構図にも見えてくると言ったら言い過ぎなのだろうか。
しかしこの作り方は危うさも感じられる。「帝国の逆襲」も主人公側が一方的に追いつめられる作品だったがダース・ベイダーがルークの父親だという衝撃の新事実もあって次回作の期待は膨らむ一方だったのではないだろうか。しかし「最後のジェダイ」を観終わった後残るのは新キャラクターばかりの心細い面々。ルークも消えてしまいレイアは(まさかのフォース発動で)生き残ったが役者本人が亡くなってしまっている為多くの出番は望めない。そしてまさかの敵方の大ボスの死。「フォースの覚醒」でハン・ソロという駒を消し今作でも多くの駒を消していったが、それに代わる新しい駒たちはどれほどの成長を得たのだろうか。正直それほどの実感はない。結局は自分が「フォースの覚醒」を観た後に感じた懸念は払拭されず次回作に期待を持てるのかと問われるとう~ん…である。
いろいろ書いたが観ている間は結構楽しめたのも事実だ。フィンとローズの結局は失敗に終わる冒険はあまり魅力を感じなかったが、終盤のレイとカイロ・レンの共闘やルークの最後の雄姿はやはり観どころだしグッとくる。ローラ・ダーン演じるホルドの特攻もシリーズでは見られなかったやり方だ。何と言っても惜しみなく予算を注ぎ込んだ映像の大洪水は一見の価値がある。
ルークは消えてしまったが消えていった者たちが主人公を導いてくれるのもスター・ウォーズの物語だ。スピンオフも絡めれば毎年スター・ウォーズが観られるというこの状況。コンテンツを消費していくだけなのか。それとも不滅のスター・ウォーズを作り続けられるのか。良い導きによってこのシリーズが多くのスター・ウォーズファンが満足できるものになることを願うばかりだ。