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<ネタバレ> 舞台となる場所は、盲人に優しいとは言いがたい半地下の部屋。ドアを開けるといきなり階段になっているし、キッチンに行く途中にも段差がある。目が不自由な居住者のための工夫も全く無さそう。盲人の妻を持つ夫は何もそのへん考えないのだろうかといささか疑問に思わないでもないが、バリアフリーなんて言葉が無い時代はこんなものなんだろう。
夫の職業はカメラマン。部屋の壁にも妻を写した写真が飾ってあるが、妻自身はきっとそれを見ることはない。写真は「目が見える」ことの象徴なのか。
目が見えないスージーの代わりに「目」の役割を果たすのは、隣人であるグロリアという少女。この子の服が目にも鮮やかな赤だったり、鋭角的フレームのメガネをかけていたりするのも「目が見える」ことの象徴なのだろう。
スージーが身の危険を感じて家中の電球を壊し、暗闇のシーンが何度か登場する。セリフは聞こえるが、画面は真っ暗。リアルタイムで映画館でこれを見ていた観客たちは、まさに漆黒の闇の中に身を任せ、「目に見えない」映画を体感したことだろう。
物語は麻薬を詰めた人形を巡るサスペンス。監督が007シリーズの中でも大袈裟で有名な「サンダーボール作戦」や「ドクター・ノオ」を撮ったテレンス・ヤングなので、変な人形型の仕込みナイフやらクローゼットの戸袋に無理矢理隠した死体とか瀕死の男が横っ飛びに襲いかかってきたりと、随所に妙な動きやギミックが登場して面白い。そういえば人形を抱えたまま空港を通過したりしていたが、この時代は麻薬犬もいなかったということだろうか。大らかな時代である。