<ネタバレ>物語の行く末を左右する100歳越えの老婆は最後まで姿を見せる .. >(続きを読む)
<ネタバレ>物語の行く末を左右する100歳越えの老婆は最後まで姿を見せることなく、
独自の風習が残る村の葬儀目当ての都会人であるテレビマンが振り回される。
携帯電話で会話するにも電波が届く、くねくね曲がる道の先の丘まで車で走らなければならず、
他方で村の人々はのんびりマイペースな分、滑稽に映る。
とは言え、一見美しい黄金の麦畑が広がる長閑な村でも、
家族への忠誠のため、面子のために辛い因習に従わざるを得ない現実がある。
死を待っていてもやって来ることなく、苛立ちを隠せないテレビマンが、
村人の生き埋め事故を切っ掛けに人命を救う側に回っていく。
このまま放っておけば珍しい葬儀を取材できるのにである。
撮影して放送して、ただエンタメとして消費されるだけ。
裏側を見ない我々は普段提供されているものに対して、それを期待しているのではないか?
そこに人間の矛盾と不可思議さが感じられる。
キアロスタミの芳醇な会話劇は今作も健在で、医者の詩の引用にハッとさせられる。
「天国は美しい所だと人は言う、だが私にはブドウ酒の方が美しい」。
"風が吹くままに"生きられたらどれだけ素晴らしいのだろうか。
仕事に雁字搦めのテレビマンは執着を手放し、現実に折り合いをつけてこれからの人生を生きていく。