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<ネタバレ>半世紀前の映画にも関わらず、あまりにスタイリッシュなオープニングと武満徹による美しいワルツに心を鷲掴みにされる。攻めの姿勢で独創的な映像と診察室のセットを作り上げ、"仮面"における理屈めいた自己分析と会話によって紡ぎあげられていく展開に古臭さは感じられない。誰もが人間見た目が全てと言わんばかりにレッテルを貼り付けられて生きている。より良く見せようとSNSで素を偽るのと同じ。だが、そんなもの建前で自己に帰結したら何もない。内面の劣等感を偽りで埋めようとしてもどうにもならないことが、他人として妻を誘惑して寝たことで証明してしまう。所詮は"仮面"という演技で構築された夫婦生活なのだから。顔を失った男が新たな顔を得た自由と引き換えに行き場も自分自身も失い孤独に陥る皮肉な結末は、現代の文明病に通じる普遍さと先見性があった。