<ネタバレ> あらすじを読んだ限りでは「お父さんのバックドロップ」(20 .. >(続きを読む)
<ネタバレ> あらすじを読んだ限りでは「お父さんのバックドロップ」(2004年)を彷彿とさせる映画なのですが……
終盤で上手い具合に着地して、一味違った魅力を出してるのが見事でしたね。
「わるもの」であるヒールレスラーにスポットを当てた内容であり、単なる格闘技ではないプロレスの魅力を、きっちり描いてる。
勝ち負けよりも「相手の強さを引き出して、試合を盛り上げる事」が大切なんだと教えてるかのような内容であり、観ていて(そうだ、そうだよなぁ……)と、何度も頷いちゃいました。
本物のプロレスラーが多数出演している為、プロレス物としての説得力が段違いに高い点も、これまた素晴らしい。
自分は然程プロレスに詳しい訳じゃないけど、それでも「棚橋弘至vsオカダ・カズチカ」というビッグネーム同士の対決には心躍るものがあったし、他にも有名所が色々出演しているんですよね。
棚橋の「フライ・ハイ」の迫力や、オカダの打点の高いドロップキックにも惚れ惚れしましたし、もし彼らを知らない状態で観たとしても(この二人、凄ぇな)と魅了され、興味を抱くキッカケになってたと思います。
「オールスター的な華やかさがあって、マニアも満足」そして「新たなファンを開拓するのにも適した内容」って訳であり、完成度が高い。
勿論、子役の寺田心の可愛さを満喫する事も可能だし、とっても欲張りな映画でしたね。
主演の棚橋と併せて「レスラーなのに、演技が上手いな」「子役なのに、演技が上手いな」と感心させられたし……
何ていうか「本職ではない」「まだ幼い」というハンデを背負ってるにも拘わらず、立派に好演してみせる姿が、作中の「膝の爆弾というハンデを抱えつつ頑張る主人公」の姿と重なるものがあり、ストーリーと演者のシンクロ率が高かった事も、評価に値すると思います。
心くんが嫌いになった悪役マスクマンの正体が、実は自分の父だと判明する流れも切なかったし……
最後の試合が終わった後、声援を送らずに罵声を浴びせる事で、ヒールとしての父の心意気に応える展開も良かったです。
結局、後半で主人公は二連敗を喫する訳だけど「本物のチャンピオンベルトより、更に価値のあるものを手に入れた」って結末なので、ビターではない、甘いハッピーエンドを迎えている辺りも、嬉しくなりましたね。
「試合には負けたけど、ハッピーエンドだよ」って事に、これだけの説得力があったという一点だけでも凄い。
難点としては……
唐突に挟まれる「トランキーロ」とか、知識が無いと意味が分からない小ネタがあるのは、ちょっと残念。
知ってる自分でも(内藤哲也の出し方、無理矢理だなぁ)と思えて白けちゃったし、ノイズになってた気がします。
小ネタにしても「石橋憲武」なんかは由来を知らなければ気にならず、分かった人だけクスッと出来る感じなので、そのくらいの見せ方の方が良かったんじゃないかと。
その他「心くんが机を叩いてクラスメイトを振り返らせる場面は、音が小さ過ぎて振り返るのが不自然」ってのも気になるし、そこかしこで作り込みの甘さが目立ちます。
総合的に判断すると、冒頭に挙げた「お父さんのバックドロップ」と同じくらい楽しめたけど、あちらは個人的に大好きなスネオヘアーが主題歌担当、神木隆之介が主演っていう強みがあった訳だし……
純粋に物語として評価するなら、こちらの方が上かも知れませんね。
プロレスが好きな人、興味がある人ならば、必見だと思います。