<ネタバレ> 「ユニークで愉快な宣伝家族」を描いた品かと思いきや、死者ま .. >(続きを読む)[良:1票]
<ネタバレ> 「ユニークで愉快な宣伝家族」を描いた品かと思いきや、死者まで発生する陰鬱な展開に吃驚。
とはいえ、急転直下に作品の空気が変わる訳ではなく、少しずつ悲劇を予兆させるのが上手かったもので、違和感は無かったですね。
序盤にて
(この家族、なんか変だぞ?)
と観客に思わせる描写も丁寧であり、すっかり映画の中に惹き込まれちゃいました。
「偽りの家族の中で、主人公のスティーヴだけは本当の家族になりたがっている」という設定も絶妙であり、自分としては大いに感情移入。
チームが崩壊しかけた時「家族に問題は付き物さ」と場を繕おうとするも「家族じゃないわよ」と、妻役のケイトに素っ気なくされる場面なんか、凄く切なかったですね。
単純に「ケイトを愛しているから、本当の夫婦になりたい」というだけでなく「皆で本当の家族になりたい」と願っているのが、絶妙なバランスだったと思います。
それだけに、好成績を認められて他のチームと組むよう上司に命じられても、それを拒否して「今の家族と一緒に頑張る事」を選ぶ場面が、凄く痛快。
スティーヴとケイトが、失恋した娘を慰め「家に帰ろう」と促す場面も
(偽物なんかじゃなくて、立派な家族じゃないか……)
と思えて好きです。
終盤にて、隣人のラリーが自殺する場面もショッキングだったし、そこからスティーヴが「ご近所さん」に真相を告げる流れも、不思議なカタルシスがあって良かったんですが……
そこが最高潮で、その後に失速しちゃったというか、ラストの纏め方が強引だったのが残念ですね。
「スティーヴとケイトが結ばれ、前々から話してたアリゾナ行きを実現させる」って形なので、この二人にとってはハッピーエンドなんだけど
(……で、息子と娘は置いてくの?)
って事が気になっちゃうんです。
息子と「父子のような抱擁を交わして」別れる場面は良かったんですが、その分だけ
(娘とはロクに会話もしてないけど、寂しくないのか)
って疑問も湧いてくる。
他にも「同性愛者な息子の恋人ナオミ」についても放ったらかしで終わってるし、どうも風呂敷の畳み方が拙かった気がします。
エンドロールにて「まだまだ他にも宣伝家族は沢山いる」って示すのも、後味が悪くなっただけなんじゃないかと。
個人的には「夫婦」ではなく、四人揃って「家族」としてハッピーエンドを迎えて欲しかったですね。
総評としては「隠れた良作」って感じで、充分楽しめたんですが……
一抹の寂しさが残ってしまう映画でした。[良:1票]