<ネタバレ>これは思いのほか良かった、拾い物作品。
演出になんの工夫も .. >(続きを読む)
<ネタバレ>これは思いのほか良かった、拾い物作品。
演出になんの工夫もない(と思える)のでフツーのドラマになってしまっているが、脚本はかなりイイと思う。
それぞれのキャラクターを説明するエピソードがなかなかイイのだ。
主人公バディ(ベン・アフレック)がちょっとイヤな奴だということは開巻すぐに分かる。
空港のバーで一緒に飲むことになった作家の男性に対して、開口一番「当ててみようか。国語教師?」だと。
この短いセリフに「アンタ、頭は良さそうだけど堅物で稼ぎも少ないんだろうな」ってな“上から目線”のニュアンスが滲む。
ベン・アフレックがまた軽薄そうな薄ら笑い浮かべちゃって、あのツラが鼻持ちならないのだよ(笑)。
この映画、ホント「ダイアローグ(会話)」が上手いなぁと思う。ダラダラと冗長な説明ゼリフもないし、何より凡庸じゃない。
ヒロインのアビー(グウィネス・パルトロウ)が「ニコチンガム中毒をやめるためにタバコを吸ってる」って言うのなんか、すごく可笑しい。
このエピソード、ちょっとファニーな彼女の魅力を伝えているだけじゃなくて、実は1年前に夫を失くした彼女が立ち直っていく過程を語っているのだ。
このとき彼女はこう説明している。「去年、友達から『神経を落ち着かせるのにいい』ってニコチンガムを勧められてやめられなくなった」と。つまり、夫の死で不安定になっていた彼女に「これ噛んでると落ち着くよ」って友達がガムをくれたって事なんでしょう。それが中毒になるほど彼女はずっとずっとガムを噛み続けていた・・・。
「悲しかった」とか「辛かった」とか直接的な言葉を使わないで、彼女の心を表現している訳で、実に上手い脚本だなぁと思う。
もう、いちいち書いてるとキリがないけど、あと一つだけ書いちゃおう。私がいちばん気に入ったのはコレ。
バディが素性を隠して自分たちに近づいたという事実をアビーが知り、バディに別れを告げる。(ここもすごくイイ。涙目のベン・アフレックが可愛い)
で、その後、親友のドナに「騙されてた」と愚痴った時にドナはむしろアビーをいさめ、「(彼は)貴方たちが心配だったのよ」とバディをかばう。それに対してアビーが「確かめたらすぐに立ち去るべきよ」と反論すると親友は言う。
「男はドジを踏む生き物よ」
くぅ~~っ、上手い!バディが思いがけずアビーに惚れてしまったことを「screwed up(ドジった)」と表現するなんて。洒落てるゼ!
かつて本当に恋人同士だったベンとグウィネスは、惹かれあっていく様子も苦渋に満ちた別れもリアルで響いてくる。そんな2人の繊細な演技も見もの。
いやぁ、これは隠れた名作じゃないかなぁ。衣装とかロケ地がもっと美しくて演出も凝ってたら、「恋人たちの予感」(1989)ぐらいの作品になってたんじゃないだろか。(褒めすぎですかね?)