どこかにあるはずなのに、どこにもなかった「原風景」を見事に現 .. >(続きを読む)
どこかにあるはずなのに、どこにもなかった「原風景」を見事に現出させた。
となりのトトロの主人公は、トトロでも人物でもなく、世界である。
自然とは、人間に対置するものではなく、人間の心の中に宿っているものであるということが、この作品によってはっきりと伝わる。
この大きさに匹敵する芸術作品がどれだけあるだろう。ターナーの絵やブルックナーの音楽と並べても遜色のない作品だ。それらの作品はどれも、「絵画と鑑賞者」や「舞台と観客」を対置させない。確かに五感を通じて心のなかにそっと侵入してくる。まるで実家にあがりこむように、どかっと座り込んでくる。そうしてちょっとした思い出話をでも語り始める。
映画のストーリー自体はささやかな"おまけ"にすぎない。