<ネタバレ> 米国は日本と異なり、「家柄」だの「家を守る」だの「ご先祖様 .. >(続きを読む)
<ネタバレ> 米国は日本と異なり、「家柄」だの「家を守る」だの「ご先祖様」という意識は希薄なのだろうが、さすがにこれだけの豪邸を代々受け継いできた家系となると、そうやすやすとは手放すわけにはいかないだろう。ただ、この物語では、「家を守る」意識よりも、過去にその邸内で起こった殺人の記憶が家を手放さないようにと主人公を呪縛している。
そうした観点からこの傑出したスリラー&サスペンスを観ると、より面白い見どころが掴める。
今作では孤独で病的な老女を演じたベティ・デイビスがいつもより一歩二歩引き気味の演技。そう感じさせるのは、もう一人の主人公オリヴィア・デ・ハヴィラとントの腹黒さをたたえた偽善者キャラがメリハリの利いた演技で大いにインパクトを放っているせいだろう。この人は年輪を重ねることで、どこかいわくありげな美貌と才気という稀有な存在感が際立ってきている。そしてアグネス・ムーアヘッドの鬼気迫るファナティックな芝居が物語に毒のある花を添えている。
一件落着したかにみえたラストでベティがみせる狼狽した表情が、観る者にまだ残る謎を投げかけてハッとさせる演出も心憎い。
観る回を重ねるごとに色んな発見が出てくるという意味でも必見の作品だ。