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<ネタバレ>“Thank You for Smoking”『喫煙してくれてありがとう』。
この映画のおかげで(せいで?)“ディベート”に興味を抱き、自分の中で賛成意見と反対意見を考えて競わせる…なんて脳内遊びをしてましたね。困ったことに人の話を聞いている時にも、相手の主張と逆の視点で考えてしまい、それをつい口に出して、相手を不快にさせてしまったことも…。私のレビューで、酷評書いてるのに点数は高かったり…なんてのがあったら、脳内ディベートの弊害ですね。
ケーブルテレビでやっていたのをたまたま観ました。軽快なテンポでとても面白かったです。なのでDVDを買って改めて観たんだけど、なんかイマイチ。原因は字幕でした。思えば当時ケーブルで観たのは吹替版でした。字幕ではニックのマシンガントークが、端折られた字幕に殺されてるのもあるんだけど、字幕だと私が一番好きなEGO社の一連のシーンが、あまり面白くなかったんです。ここではニックは聞き役で、社長のジェフと助手のジャックの軽快なトークが面白く、吹替版でこそ面白さが伝わります。ってか、字幕が酷すぎだと思います。文字で内容は伝わるけど端折りすぎててニュアンスが伝わらない。これじゃ映画の内容も薄っぺらく感じます。
かなり日本びいきのジェフ社長と、EGO社でデカデカと流される、シャチがアシカを襲う映像。俳優にタバコを吸わせて、観る人にカッコいいと思わせるように、シャチの残虐性を見せつけて、反捕鯨をひっくり返す印象操作の一環なんでしょうかね?
でもこの映画の主題は喫煙の善悪ではなく、語り手の腕次第で人の印象がどう変わるかです。遊園地でジョーイと『バニラとチョコ』のディベートをします。「お前を説得したいんじゃない、ターゲットは彼ら(大衆)」。物事の善悪を何が決めるのか、とてもわかり易かったと思います。上院議員のように、強い意志を持って何かを決める意見は“個人の選択の自由”と言う反対意見…というか寛容な逃げ道には勝てない、大衆は選ばない。でもこの映画で大事なのは、“個人の選択の自由”って結論に至るまでの、話の組み立ての過程で、そこが字幕版では欠如していたように思います。…ディベートを扱った映画なのに。
私は選べるなら字幕を選ぶ派ですが、この映画をたまたま吹替版で観たから、素直に面白いと思いました。でも字幕で観ていたら、そこまで良い印象は無かったかもです。また最初に観た方(吹替)で良い印象を持てば、後から観た方(字幕)がイマイチでも、その作品自体の評価は変わらないものです。他の映画でも同じことが言えるでしょう。観るなら字幕か吹替か。最初に観た方の印象って大事だってことを、この映画から学びました。
ちなみに、この映画を観たときには、私は禁煙に成功していました。なので劇中に出てきたニコチンパッチの恐ろしさは重々承知しています。…説明書に書いてましたが、パッチしたまま寝ると本当に悪夢を観られますよ。