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<ネタバレ>“Philadelphia”都市名。アメリカ合衆国最初の首都で、ギリシャ語の『兄弟愛』の意味を持つ。
振り返ると、コメディ映画で人気者のトム・ハンクスが、社会派ドラマの俳優として一歩踏み出した記念すべき作品かも。
偏見に満ちた社会で、自分の本性を隠して生きてきたアンドリュー。病魔に襲われて死が迫る中で、自分の本当の姿を隠す必要性が無くなり、徐々にやせ細っていく彼に、美しさを感じました。トム・ハンクスにここまで繊細な演技が出来るとは思ってもいませんでした。
'90年頃、エイズもゲイも、遠くの世界のごくマイノリティな問題だと思っていました。同性愛に対する偏見から間違った知識が広がっていたというより、どっちも身近に存在しないから解らなかった、身近な病気として興味を持てなかったんでしょうね。この映画が公開された頃、薬害エイズ問題が大きく報道されるようになり、性的マイノリティ以外にも感染のリスクがあることがじわじわと広まってきて…
アンドリューがエイズになった原因は、薬害とかでなくゲイだったから。これはかなり直球でした。まだ同性愛が後ろめたい時代でした(…今がどうなのか良く判りませんが)。同性愛=世間的に良くない行為として観ていたため、「ゲイだったら、エイズになっても仕方ないんだろうな」という観方もしていましたので、一方的とはいえ解雇に踏み切った会社側の反応も、理解出来なくもない時代でした。
裁判に関して、令和6年の今の目で観ると『そうなるよなぁ』というものでしたが、平成5年の当時に観ていたら、どう思ったでしょうか?
ゲイに理解を示せとは言わないけれど、それと解雇は別。という進め方に、エイズという今後もっと身近になる問題について抱いた偏見を、崩せるところから崩していこう。…という、映画界(芸能界?)の、エイズや同性愛に対する今後の方向性のようなものを感じました。
この映画が観せたかった社会と、昨今のLGBT運動が目指すものが、同じ方向を向いているのかは、私には判りませんが…
あんまり映画と関係ないけど、スプリングスティーンの起死回生の主題歌がとても良かったです。イマイチなアルバムの2枚同時発売、クラプトンに刺激されたイマイチなライブビデオのあとに、しっとりとした往年のBOSSらしいこの1曲が書けたのが嬉しくて、ホッとしました。