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<ネタバレ>リバイバル上映で改めて映画館で鑑賞した。15歳の娘から誘われて観に行こうと言われた時は驚いた。
これを見ようという娘も大したものだと思った。最初のシーンは覚悟して観なさい。と伝えて一緒に鑑賞。
改めて大画面でこの映画を鑑賞できるのはとても嬉しい。
オマハ・ビーチの地獄のような上陸シーンは、その凄惨さとリアリティによって圧倒される。戦争の狂気を真正面から描き出した。
その後の救出任務をめぐる物語も、戦場における道徳、犠牲、そして生きることの意味を問うものだった。
しかしながら、個人的にどうしても引っかかる部分がある。それは、トム・ハンクス演じるミラー大尉の運命についてだ。
ここまで強運続きで生き抜いた彼が、まるで脚本の都合のように「やっぱり死ぬべき運命だった」とばかりに最期を迎える。
「Earn this(これに見合う生き方をしろ)」とライアンに語るシーンは感動的だが、
どうしても「ここで彼を死なせるために、脚本が無理に運命を決めたのでは?」と感じてしまうのだ。
とはいえ、作品や物語の中で「キャラクターの生死」を描き、それをドラマやテーマの演出に活用することは、
古今東西・ジャンルを問わず極めて一般的な手法ではある。
スピルバーグほどの監督が理解してないわけではない
これは受け止めるしかないのかなとも思う。
ライアン二等兵の存在感の薄さも気になってしまう。
ライアンは題名になってはいるものの、主人公というわけではない。
とはいえ、彼の葛藤や内面がもう少し掘り下げられていたら、物語全体のテーマにより重みが増したかもしれない。
そして、本作は戦争を美化していないと言われるが、ラストのライアンの墓参りのシーンや、星条旗を掲げる映像には
「米国に特化して感傷的すぎる」と感じる部分もあった。
戦争の悲惨さをここまでリアルに描いた映画だからこそ、観客の国籍によっては違和感が残るのではないかと思う。
これをもって本作の評価を下げるつもりはない。むしろ、それを超えるほどの魅力がこの映画にはある。
まず、戦場描写のリアルさは間違いなく映画史に残るものだ。
オマハ・ビーチのシーンは、まさに「戦場に放り込まれた」かのような感覚を味わわせる。戦争を経験していない私だが、
これほどまでにリアルな戦争の恐怖を感じた映画はない。
また、キャスティングも素晴らしい。トム・ハンクスはもちろん、部下たちのキャラクターもそれぞれ魅力的で、
特にバリー・ペッパー演じる狙撃兵ジャクソンの存在感は圧倒的だった。彼の「戦場における信仰」の表現は興味深く、
死の中で神に祈る姿が印象に残った。
この映画は間違いなく傑作だ。
戦争映画の歴史を変え、映画技術を新たな段階へ押し上げた作品であり、映像のリアリティ、俳優陣の演技、
戦争の道徳的ジレンマの描写など、あらゆる点で卓越している。
この映画が「戦争映画の金字塔」であることに変わりはない。
もし、まだこの映画を観ていない人がいるなら、ぜひ観てほしい。
戦争を知らない世代こそ、本作を通じて歴史の重みを感じるべきだと思う。