新宿の映画館に入ったとき、閑散としていたため余計に感情移入し .. >(続きを読む)
新宿の映画館に入ったとき、閑散としていたため余計に感情移入して観た記憶があります。幼い頃より愛された実感が無いために、自分が受けた事と同じように暴力でしか親子のコミュニケーションが取れない母親。常に不幸な結果が頭をかすめ、その不安に耐えられなくなると自ら不幸を招くようにこれでもかこれでもかと子を虐待する。それでも子から見れば親。自分が悪いのかと悩み、愛されたいと願い、いい子でいようとする。心の支え、生きる自信はたった一言だけの誉められた記憶だったのだろう。去っていく夫への心の叫び「怖いよ。独りにしないで」。幸福を受け入れることが不安になるのは何故?素直になれないのは何故?自分でもわからない悲しさを抱えたまま母は老いる。ラスト、ひとつの鏡に映る母娘。自分を愛することは相手を愛すること、自分を許すことは相手を許すことと気がついたのかもしれない。母親を捨てたのではなく母親が捨てさせたのだから。同じ目、同じ手、同じ心がそこにある。母がいたからこそ今の幸福を受け入れられる自分がそこにいる。20数年前「大地の子守唄」で原田美枝子が演じた主人公に感動をしました。この作品の母親の姿がそれに重なります。