アニメーションにしては、というよりフィクションにしてはまさに .. >(続きを読む)
アニメーションにしては、というよりフィクションにしてはまさに‘描ききった’といわざるを得ないほどのものであり、この作品が今日、他のアニメなどと並列され、埋もれているのが、今の日本の大衆の眼の悪さというか、自国の文化を正当に評価できない、例の明治以来の悪癖なのかと嘆かざるを得ない。かといってこの内容に手を振って喜ぶことは出来ない。南雲の描写だって、ラストでこれ見よがしに手を組んだ絵を出すところは型にはまりすぎているし、荒川の「スタンドアローンで~」という科白なんか変に趣味性を出すのではなく、きっちりと、彼の語られなかった思想を裏付けるように統一して欲しかった。とは言え、彼が作中でいかにもな語り口で述べる、経済大国の現状とその成立過程は、ある意味で事実に最も近い形のものだが、それを認識しているものは多くは無いし、それが現実の空虚な描写だとしても、それを指摘できるものはあまりにもすくなすぎる。日本に何故、億単位の税金をつぎ込んで米軍基地を置いているのか疑問に思わない、あるいはその事実すら知らない、知っていても誰も何も言わない。そういう事態が変革されない限り、劇中荒川が言ったように、この国が戦後からやり直すとまでは言わ無いまでも、黒船来航以来日本人を捕らえて今なおはなれない、ある種の感情、およびそれにより引き起こされた事態を解消する手段は、今なお存在しないと言わざるを得まい。どちらにせよこれが優れた作品であることは誰の目にも明らかであるが、それをまた最上のエンターテインメントとする程度の常識、および良識は持ちたいものだと感じる。