いい映画です。極限状態でも自分の息子を守る為に、表面的にはあ .. >(続きを読む)
いい映画です。極限状態でも自分の息子を守る為に、表面的にはあたたかい表情で、しかし本心は冷徹な判断の上で、このような行動を主人公は息子の見ているところで演じたのだろう。自分の命は失ったが大事な大事な息子を守りきった主人公に拍手。この作品を見て塩野七生著『ローマ人の物語』のローマ帝国、初代皇帝アウグストゥスの業績でふれられていたことを思い出す。彼のことを著者は歴史上、傑出した政治家の1人であると書いていますがその中で、本心は悪なのに表面上、善を装うことを偽善という、しかし偽善には下等なものと上等なものがある、前者が普通われわれが使う偽善であり、後者は公共の利益つまり国民の利益の為に自分の政策に反対する抵抗勢力に嘘をつくことを意味すると書かれていた。彼は抵抗勢力に嘘をつき続け300年続いた共和政から帝政というローマの大改革を実現した。その上で、彼が土台を築いた帝国は500年も続いた。ローマ帝国は後世においてプラスマイナスさまざまな意見があるが、この本を読んで、このような考え方のできる人物が政治家に出てこないから日本の改革が進まないのだという感想を私は持った。映画に戻りますが、主人公の行動は上に書いた「上等な偽善」の変形だというのが理解できる。主人公のように自分にとって大切なものを守るために、初代皇帝アウグストゥスのように国民の利益(=社会)に貢献するために、このような高度なテクニックが必要なんだということを学び、理解することが出来て大変良かった。そしてこの映画を見て、2000年前からのヨーロッパの人の考え方の一端は変化していないのだということが確認できた。他者の利益、社会の利益になる、このような嘘をつける人間になれたらいいのに。