これこそが『日本の特撮映画』だ。怪獣側と人間側、南海の孤島 .. >(続きを読む)[良:2票]
これこそが『日本の特撮映画』だ。怪獣側と人間側、南海の孤島と北極海、ビジネスに走る者と愛に走る者、そして当然、キングコングとゴジラ、というように、常に対極を交互に描きながら、それらがぶつかり合うクライマックスへと持ってゆく手法は、古典的ではあるが、観客を惹きつける脚本の王道でもある(他には「モスラ」がそうだ)。細部に荒唐無稽な部分があっても、テンポの良さの方に重きをおいたと言うことができる。特撮映像も、東宝特撮の特徴でもある明るいオープンセットを生かしたもので痛快である。レビューが技術論に走ってしまうと、現代の映画ばかり有利になってしまうが、総体として怪獣映画史上では10点の位置としたい。 なお、最近の怪獣映画で、怪獣に人が殺されるシーンをはっきり見せたからリアリティがあったという感想があった。監督側も、過去の映画のような暗示はもどかしい、ナマで見せてしまう方が客が喜ぶということだろうが、そうやって観客を呼ぼうという目論見は、より強い刺激を求めるマニアを満足させる一方で、他の多くのファンを失わせる、言わば特撮映画ファン人口の「縮小再生産」を生み出しているように思う。いい加減に今の特技監督たちには目を覚ましてもらいたい。「キングコングの逆襲」で円谷英二監督が反対して、あえて赤い血を流させなかったことをもう一度思い直すべきである。[良:2票]