1.僕は時間の死んだ街で生まれた。
良くも悪くもマイペースで強情で、変化を嫌うこの街では、澱んだ時の流れすら平穏だとか、安寧と呼ばれる。変えられない、変わらないのでは無く、そもそも変えたいと思わないのだ。まるで大腿骨のように強靱なまでの真一文字さが、この街には絶えず横たわっていて、人々の心までせき止めている気がする。
↑このようなナレーションでこの物語は幕を開ける。私の地元が舞台のこの物語は至極的確にこの街を表していた。たしかに、動物園くらいしか観光の目玉はなく、他の観光地への通り道となっている感は否めない。人々は皆変化を嫌い、そこそこ大都市でもあるが経済的に停滞した感がある。誇れる事と言えば地震が少ないという事くらいだ。
そんな街が舞台で繰り広げられる、骨に纏るミステリー。
主人公の櫻子さんは標本士。
死んだ動物を見つけては嬉々として煮込んで骨だけにする、ちょっとやばい人だけど、美人で大きな屋敷に住むお嬢様という無敵のスペックにより、何をやっても許される感がある。しかし、一般人なのにこんなに警察の捜査に割って入れるなんていかにもフィクションだなぁと思ってしまう。
とは言え、櫻子さんを慕う少年との絡みが面白く、ついつい引き込まれてしまう。
地元が舞台という事でちょっと点数甘めです^^