1.《ネタバレ》 ジブリアニメというのは良くも悪くも純粋な少年少女が平和と自然を守るお話であって、親が子どもに見せたくなるような優等生的な作りになっている。でも実は宮崎駿の頭の中にはもっと複雑で一筋縄ではいかない、大人も価値観を揺さぶられるような突き詰めた思索がある。それが盛り込まれているのは、アニメ映画ではなくこの長編漫画作品の方だ。
映画版ナウシカは原作漫画の本の一部でしかなく、慈愛心の強い少女でしかない。しかし遥かに長大な原作では、ナウシカはさまざまな試練を越えて、善悪をも超越した場所にたどり着き、登場人物の台詞を借りれば「破壊と慈悲の混沌」となる。こういう言い方をすると怒られるかもしれないけど、アニメ版とは深さがまったく違う。手塚治虫の『火の鳥』に並べても遜色のない、名作中の名作です。