1.実力のある作家が深く考えずに手癖だけで描き上げてしまったという感じの、凡作。
無駄に残酷なだけで、それを通して何を伝えたいのかさっぱりわからない。凄惨な題材を選べばそれだけで深いドラマが描けるというわけではないだろう。自分は暗い系統の作品が好きなのでそれなりに知っている(マンガに限らず)方だと思うが、これはその中でもできの悪い部類に入る。
画は相変わらず上手い。しかし設定は強引でリアリティに欠け、何よりあざとい。ストーリー展開は予想通り、人物にも台詞にも血が通っていない。ほんとうに沙村広明がこれを描いたのかと疑うほど、薄い。
著者あとがきに自分でもなにがしたいのかわからなくなったとあるが、読んでいてそれがよくわかる。これならいっそ、サディスティックな成年漫画を真剣に描いた方がよかったと思う。