4.ありふれた少年コミックの多くが、戦闘の駆け引きがやや複雑なだけでストーリーそのものはひどく単調であるのに比べ、極めて入念にプロットが練りこまれている。その上戦闘描写も極めて複雑、かつスリリングだ。「念」という概念や、「GI」というゲームのルールの作り込みようにはほとんど偏執的な情熱が感じられる。主人公達の成長もさまざまな伏線が張られているだけに楽しみで、とくに純粋さゆえの危うさも感じさせるゴンがどう変わっていくのかが気になるところ。
ところで、休載について苦言を呈されることが多いようだけれども、個人的には別にかまわないと思う。冨樫信者ってわけじゃないけど、じっくり仕事をするだけ作品の質が上がるなら好きなだけ休んでほしい、というのが本当の気持ちだ。そもそも週刊連載自体が異常に過酷なわけで、編集部が冨樫を甘やかしているというよりは、これまでの漫画業界全体が厳しすぎたように感じる。才能を使い捨てるようなやり方を少しでも改めて、力のある作家を大切に見守るようになったのなら、むしろいいことだと思う。
〈追記〉それにこの作品の場合、たまにしか読めないことが逆に評価を吊り上げているような気がする。若くして夭折したアーティストが熱烈に支持されるのにも似て、連載が飛び飛びになることでじらされて、面白さが三割増しして感じられるんじゃないだろうか。「冨樫は天才」とよくいわれるけれども、他にもそう呼べる漫画家はいないわけではないと思う。