1.氏の短編集という事でコメントさせて頂きます。本作品も含め初期短編/連作はコミックスの刊行ごとにタイトルや収録作品が異なるようなので。 氏の作品はホラーとしてだけでなく「不条理漫画」として秀逸に思います。個人的には「ねじ式」や「伝染るんです」、初期の「BLAME!」或いは安部公房や筒井康隆の短編小説群などと同じカテゴリーな感じ。特に傑作は「道の無い街」「あやつり屋敷」「路地裏」「首吊り気球」「落下」「四重壁の部屋」など。 絵柄もデッサン力があってシンプルというある意味理想的なものだし、一つ一つのエピソードに出てくる登場人物の描写がリアル。俗に言う「人間が描けている」という事なのか、例えば「路地裏」のメンバーで普通に小津安二郎の映画みたいな話が展開されてもそれはそれで読めてしまいそう。ホラーや不条理などの非日常は、こういうリアルな描写力があってこそ生きるのだな…と実感します。