2.この素晴らしさを、どう言葉で表現すればいいのかわからない。懐かしいようで新しい、温もりのある画と、なんてことのない素直な物語を宝石にしてしまう、鮮やかな語り口。これで「新鋭」? だとしたら、入江亜季さんには語り部としての天性の才能があるのだろう。
国や時代を超えたさまざまな舞台で描かれるヴァリエーション豊かな短篇集で、一篇一篇が楽しい。まぶしいほどに青々とした青春もの、台詞のない秀逸な幻想譚、なぜか一巻に一話は入っている囚われのお姫様を題材としたファンタジー、どれも切り口は違えど、確かに群青色がかって見える。
自分も「薄明」がいちばん好きです。無理にベスト3を決めるとしたらこれと、「待宵姫は籠の中」「時鐘」、でしょうか。「ニノンの恋」や「赤い屋根の家」なども愛らしくて捨てがたい。(ていうかタイトルの付け方も絶妙だなあ。)