1.萩尾ワールド版『闇の左手』。SFとしての完成度は、アイデア/ディテール/キャラクター共に『スターレッド』を凌駕している(スケールでは負けるが)。そして暗黙の男性上位にあるメインストリームSFの世界に撃ち込まれた、ヘビー級パンチ。
どこに出しても恥ずかしくない、堂々としたバイオテクノロジーSFで…普通やりますかぶぉーいずらぶオンリーの世界創造を…。
そもそもが、コミケ会場で「やおい」の言葉がやっとこさ現れ始めた80年代後半に本作は出版された。多くのジャンルで萩尾望都はいつも先駆者だ(コミケ自体の先駆者と言う話もある)。今なら普通に読めるこの作品も、当時、多くの人間が黙って通り過ぎて行った。萩尾アンテナは10年未来からのタキオン粒子に反応していたのだ。
まあ正直な話、ハードSF部分は女性層に受けると思えないし、メインストーリーは男性読者がドン引き。どう考えても、作者が「自分の読みたいマンガ」を描いたとしか考えられない。そういう手すさびにここまでのパワーを傾けちゃうんですか。後悔しませんか先生。
いっやぁ萩尾作品には永遠に勝てませんわー。