29.史上最強の漫画。そう言い切っていいだろう。
連載が終わって20年以上。もちろんアニメもやってないのに、ちょっと大きな本屋では、未だに連載当時そのままの姿で並んでたりする。
こんな恐ろしい漫画は今まで見たことないし、これからも出ることは想像できない。
さて、この漫画の最終31巻をほめる人が多いけど、実は連載初期から抜群に面白いと思う。
この漫画がバスケのみになるのは9巻からだけど、連載開始からそれまでおよそ1年半。
少年ジャンプという、最も人気に厳しい雑誌の連載だから、つまらなかったらそこまで続くわけない。
というより、その頃にはすでにジャンプの看板になっていたと記憶している。
自分がリアルタイムで読み始めたのも、ちょうどその頃。理由は「断然面白いバスケ漫画がある」という噂からだったし。
この漫画が抜群に面白い理由は、8巻までのヤンキーバスケ漫画時代を長い長い伏線にして、主人公・花道の心を成長させたことにある。
スポーツ漫画の世界では、心技体のうち、技はうまくなって当たり前、体も大きくなることはままある。
しかし、心は成長しない。
心を成長させるっていうことは、キャラが変わってしまうということであり、人気のある漫画ほど許されないから。
そういう意味で、この漫画は奇跡。
おまけに、巻が進むごとにどんどん絵が上手くなっていくからたまらない。
それから、よく読むと、ほかのチームメイト、特に赤木なんかは最初よりはるかに大人になってくる。
だから泣ける。
もう一つ、この漫画を驚異と思うのは、次から次へ魅力的なサブキャラが出てくること。
だから、陵南VS海南大附属なんていう、主人公が出てこない回を1巻分続けても、まったくテンションが落ちない。
こんなことができた漫画も、自分は他に知らない。
ちょっと笑えるのは、「次から次に出てくる魅力的なサブキャラ」は、全員男子だということ。
女子キャラは、最初の1巻でもう終わり。
そして、魅力がないからどんどん影が薄くなる。
もし、スラダン好きで「一番好きなキャラは晴子」という人がいたら、ちょっと人間性を疑ってしまうなあ。
対戦相手も全て男子校と思われる。だって客席でさえ、他校の女子生徒は描かれたことがないから。
最後に、この漫画のライバルを挙げておきたい。
漫画にはライバルがいないから、小説から二つ。
司馬遼太郎「竜馬がゆく」と、山中恒「ぼくがぼくであること」。
どちらも少年の成長譚。販売部数はスラダンの足元にも及ばないけど、代わりに50年以上売れている。大きな本屋なら、今でも置いてある。
ちなみに、自分は後者の方が断然好き。