1.「この漫画がサッカーブームを作った」という話をよく聞きますが、そもそも昔から子供はみんなサッカー好きでした。自分も休み時間はサッカーばかりやってた気がする。ただ野球における水島新司や吉森みき男のような詳しい知識を教えてくれるマンガがなかった。
当時のサッカーマンガと言えば、主人公が点取り屋のフォワードで、ライバルが同じイケメンのフォワードやゴツいキーパー・・・という設定くらい。野球マンガで言えば主要キャラがピッチャーとバッターだけの「巨人の星」や「侍ジャイアンツ」のようなもの。そんな中でキャッチャー(山田)やサード(岩鬼)やセカンド(殿馬)が活躍する「ドカベン」が斬新なブームを起こしたわけです。
本作も同様で、まず初っ端の修哲小戦、キーパーの若林はいいとして、フィールドプレーヤーに長髪イケメンの井沢、ガタイのデカい高杉が登場、これまでのマンガだとこの2人がフォワードかと思うところ、それぞれミッドフィルダー、ディフェンダーのポジション。当時の小学生の常識としては「一番上手い奴がフォワード、ヘタクソはフルバック(ディフェンダー)、どっちでもないのはハーフバック(ミッドフィルダー)」だったので最初は「え?」って感じでした。フィールドの中心選手はフォワードでなくミッドフィルダー、ディフェンダーはサイドから上がってゴールを狙うのも役割…等々ほとんどの子供がサッカーの基本的な常識をこのマンガで初めて知ったと思う。
その後主人公はフォワードからミッドフィルダーに転向、同じミッドフィルダーやディフェンダーを主軸としたチームと闘うという展開がなんと斬新だった事か。本作がサッカーブームを作ったというより「もっと本格的なサッカーマンガが読みたい」という子供達の潜在的な需要に確実にヒットしたという事だと思います。
更に言えばワールドカップに関する知識も群を抜いていた。他の人気マンガだとラストに世界最強チームとしてソ連(ロシア)と闘ったものがあったと思う。オリンピックと混同してたのかも知れませんが、当時はプロの漫画家も編集者もこの程度でした。
本作での元ブラジル代表の日系人ロベルト本郷やドイツ代表のシュナイダー達を通じ、子供たちの間に実在のワールドカップへの憧憬が醸成され、一昔前のマニアが深夜にこっそり楽しむイベントから五輪を上回る視聴率が取れるブームへと繋がっていった事は確かに間違いかもしれません。
個人的には小学生編:南葛-明和戦、中学生編:南葛-比良戸戦、JWY編:日本-アルゼンチン戦がベストマッチ。