★1.良質のエンターテインメントというモノは、言ってみれば流れを邪魔しないで、受け手が物語世界へ接触できる空間なり作品である。言い替えると「ツッコミのないボケ」である。そもそもツッコミは受け手の代わりとなって、その世界の独自ルールなりを橋渡しする役目。そんなまだるっこしい手順はない方がいいのだ。「突っ込む必要がないボケ」を実現できるのが良質のエンターテインメントだと言っていいだろう。 料理マンガの世界を見回すと、この「ツッコミ役」が異常に幅を利かせているのがわかる。ブームの発端が『美味しんぼ』だから、仕方のない面はある。あるんだが、あまりに物語の流れが生まれない。知る限りで唯一及第点を出せるのが本作だ。 というより本作にはツッコミ役はいない。山積みの米俵を炎上させて「この熱で釜飯を作れ!」と言われてはサスガにツッコミようがない(『スーパー食いしん坊』なら突っ込みかねないが…)。この全編ボケまくる、読者の立場に立ったジャッジメントが一切ない展開は、平凡なキッチンを軽々と異世界へ飛ばしてくれる。最後のカレー対決など、まさに「命賭ける必要ないんでないの」という無駄にパワフルな展開でブッちぎってくれた。
…もちろんこのマンガ、常識人には失笑を買うんだけどな。 【エスねこ】さん 7点 [全巻 読破](2007-10-20 23:14:40) |