2.《ネタバレ》 河口付近の濁った河、そこにかかる大きな橋を歩いていたこと。
夜、何をするでもなく、欄干につかまって街の灯りをぼんやりと眺めていたこと。
海風が吹くと潮の香りがして、暗い海に打ち寄せる波を想ったこと。
土手に揺れるセイタカアワダチソウ。意味のない会話。憎しみ、怒り、陰鬱。
数知れぬ負の感情を夜の空気の中に発散させていたこと。
過去のこと、今のこと、これからのこと。
あれから10年以上経ってしまい、あの頃の自分の中にあった幾つかは失われてしまったけれど、この本を読み返すと、その失った部分が反応して酷く痛む。