1. おぼっちゃまくん
小学生時代には大好きだった、思い出深い作品です。ド下品で下らなくって、小林よしのり独特の異様なエネルギーが充満したギャグ漫画。今読んだら感想も違うんだろうけど、当時はめちゃくちゃ面白かった。『東大一直線』もちょこっと読んでみたら思ったより面白かったので、今でもある程度は楽しめるのかもしれない。発想がぶっとんでるんだよなあ、この人は。 著者の現在の活動には賛否両論いろいろあって、「小林よしのりはとりあえずクサしておけばOK」といった風潮が強いけれども、それと過去の作品との評価は切り離して捉えておきたいと思う。 7点(2008-06-19 23:18:34) |
2. ラフ
《ネタバレ》 ラストシーンは比類のない素晴らしさ。無駄がなく、鮮烈だ。 あだち充の作品を読むのはこれが初めてだけど、台詞のないコマの運びや無駄な感傷のない演出に独特のセンスがあり、心底感動させられた。よく考えるとベタだったり、主人公が(スポーツ理論なんかすっ飛ばして)天才過ぎたりするのだが、そうと感じさせない巧みさがある。大和父や緒方、スキー場の女の子といった脇役の配置の上手さもずば抜けている。 これを読むと十代の頃にスポーツに打ち込んでおけばよかったなんて思わされてしまう。もっとも、打ち込んだとしても絶対こんないい青春にはならないんだろうけど。 8点(2008-06-12 14:20:36) |
3. めぞん一刻
いい話ではあるんだけど、全体の八割が同じようなストーリー展開(誤解→ケンカ→和解)で構成されているので、少々辟易させられた。ワンパターンのお話で無闇に連載を長期化させるのは高橋さんの悪い癖だ。あまりのまどろっこしさにイライラが臨界点を超えたこともあり、やや減点(しかし四谷さんの妖怪ぶりに加点)。 今読むと当時の感覚とのギャップが大きくて面白い。携帯電話が存在するか否かでラブストーリーの展開ってずいぶん変わってしまったんだなあ。あと、二人きりになるとすぐに「押し倒す」という発想が出てくるのがけっこうな違和感。 7点(2008-06-12 14:04:42) |
4. 風の谷のナウシカ
《ネタバレ》 ジブリアニメというのは良くも悪くも純粋な少年少女が平和と自然を守るお話であって、親が子どもに見せたくなるような優等生的な作りになっている。でも実は宮崎駿の頭の中にはもっと複雑で一筋縄ではいかない、大人も価値観を揺さぶられるような突き詰めた思索がある。それが盛り込まれているのは、アニメ映画ではなくこの長編漫画作品の方だ。 映画版ナウシカは原作漫画の本の一部でしかなく、慈愛心の強い少女でしかない。しかし遥かに長大な原作では、ナウシカはさまざまな試練を越えて、善悪をも超越した場所にたどり着き、登場人物の台詞を借りれば「破壊と慈悲の混沌」となる。こういう言い方をすると怒られるかもしれないけど、アニメ版とは深さがまったく違う。手塚治虫の『火の鳥』に並べても遜色のない、名作中の名作です。 9点(2007-11-20 01:46:26) |
5. 天才柳沢教授の生活
実は一話完結ものの人間ドラマって相当に難しいジャンルだと思うんですが、『柳沢教授』シリーズはかなりの高水準を保っています。しかも主役は個性的ではあるものの一介の大学教授に過ぎず、話としても地に足ついたリアルなもの。この設定で読ませるのは著者の卓越した洞察力があってこそでしょう。天才から凡人、善人や悪人、子どもから子猫まで、山下和美の筆勢には一定した愛情が感じられる。主人公の柳沢教授同様に、山下さんにとっては人間という生きものが面白くて、愛しくて仕方がないのではないかと推察します。あ、あと「学ぶことの素晴らしさ」というテーマを忌憚なく伝えられるのもこの作品の奇特なところです。お父さんが大学教授、というバックグラウンドに支えられてのことでしょうか。いずれにせよ山下和美独自の人間観に乗っ取っているからこそ、こんなに魅力的な人間ドラマを量産できるのだろうと思います。 8点(2007-11-04 17:40:46) |
6. ジョジョの奇妙な冒険
小学生の頃からコミックを集めていた(どんな小学生だ)、長年のファンです。 ゴシックホラー風味の一部・二部も悪くないけど、やっぱり「スタンド」概念の登場する第三部以降が素晴らしい。今では特殊能力を扱ったコミックは珍しくないけれど、これが原点にして頂点だろう。 突然手首が吹っ飛ぶ、などのこのマンガにしかない強烈な演出があり、ホラーやサスペンスを猛勉強した著者ならではの作風が形成されている。世界中を飛び回る第三部、苛烈極まる第五部がお気に入り。究極の悪ディオ・ブランドー、殺人鬼吉良吉影など、悪役が愛情をもって造型されているのも成功の要因だろう。 画風に嫌悪感を持つ方が多いようだけど、大ファンである自分ですら「嫌いでは、ないかな」という感じなので、弁護はできない。着方のわからない服、真似したくない髪形、次元のひずみにいるとしか思えない立ち姿など、非常にあくが強いのは確かだ。ギャグマンガでパロディにされることなんかしょっちゅうだし(『ついでにとんちんかん』の頃からすでにやられていた)。でも常に人と違う表現をしようと努力する著者の姿勢は、評価されていいと思う。 9点(2007-11-01 23:38:32) |
7. BANANA FISH
《ネタバレ》 ラストの感動に関しては、ナンバー1。途中のアクションのくだりはけっこう忘れちゃったけど、結末部分は台詞まではっきりと覚えている。ニューヨークの描き方にちょっと引いてしまうところもあったけど、細かな欠点が気にならないほどのものが込められていた。いつかのダヴィンチで「芥川賞をあげたいマンガ」第一位でしたが、納得の名作です。 9点(2007-10-30 02:06:15) |
8. はじめの一歩
強敵と対峙して、作戦や必殺技でぼろぼろにされて、でも根性で立ち続けて、逆転勝ち――一部例外はあれど、大まかなパターンは連載初期から変わってない。しかしマンネリであってマンネリにならない、これがすごい。全然、飽きない。登場人物が緩やかに成長して、少しずつ関係性が増えたり変化しているのもある(※ただし恋愛については一歩も進展してない)が、試合パートの面白さにまったく色あせる気配がない。まっとうなドラマをまっとうな面白さで展開し続ける、作者の安定した力量が素晴らしい。このままのクオリティで100巻くらいいっちゃうんだろうか? 8点(2007-10-30 01:56:14) |
9. 神の左手悪魔の右手
数ある楳図作品のなかでも最強最悪に悪趣味な一品。ホラー耐性のない人であれば何気なくページを開いただけで本を投げ捨てて手を洗いたくなること請け合いです。「黒い絵本」編なんか地味なだけにリアルで、ものすごく不快。生理的な恐怖をとことん突き詰めて、『死霊のはらわた』がおままごとに思えるくらいの境地に達してしまっている。コアなホラーファン以外にはけっして薦められない、秀作(醜作?)。なんか褒めてんのか貶してんのかよくわかんなくなったけど、自分は好きです。 8点(2007-10-28 17:56:28) |