1. 子連れ狼
かつて一世を風靡し様々なメディアで消費し尽くされた漫画ですが、それらを知らない世代の自分が読んでも面白い。主人公の拝父子と宿敵柳生一族は勿論の事、何気ない行きずりの人々の描写が本当に素晴しい。武士・浪人・農民・町人・渡世人…当時の様々な階級の人々が何を考えどう生きていたかが実に解りやすく表現されている。個人的なお気に入りは、農政を巡り藩主と庄屋が対立する第57話「十三弦」。また本作はおそらく最も早く世界でヒットした日本漫画。同時期に売り出されたゴルゴやカムイ伝がぱっとしないのに係わらず本作だけが異様に売れた事に関して、当時の様々な週刊誌(文春、朝日、プレイボーイ等)に取り上げられていました。日韓W杯時のブラジル代表ロナウドの大五郎カットやロナウジーニョの拝一刀コスプレも記憶に新しい。 10点(2008-11-02 02:25:50) |
2. リングにかけろ
単純にスポ根ではない、SFでもない、幻想モノというのも何か違う・・既存のジャンルに当て嵌める事が出来ない、まさに「車田モノ」としか言いようのない独自の世界の確立が見事。「ワンパターンの美学」とは横山光輝氏によく使われる称号だけど、違う意味でこの作者にも当て嵌まる気がする。 マフィアのイタリア、科学力のドイツ、神話世界のギリシャ…等々、外国といえばアメリカと中国くらいしか知らなかった子供時分の自分にとって、各々の国が持つ文化的なるものが大変斬新に映りました。 「ストーリーが単純すぎる」という評をよく見るけど、ちょっと違う気がする。元々初期は「あしたのジョー」真っ青のドロドロとした複雑な人間ドラマだった。それがどんどん贅肉を削ぎ落として行って、シンプルな(そして凝縮された)完全オリジナルな様式美を生み出すに至ったという感じ。 少し大げさに言えば、絵画の具象画→抽象画だとか、現代音楽やフリージャズの猛者達が集まって生み出したジャーマンプログレ(CAN)のシンプルなビートにも通ずる構図ではないかと思う。 ただ本作以降のジャンプはこの様式の模倣に依存しすぎて、逆にきちんとした人間ドラマが蔑ろにされてしまったという部分が無くもない。 9点(2008-12-28 23:12:40) |
3. アストロ球団
リアルタイムでは知りませんが復興版の太田出版全5巻で読了。 下の方も仰るとおりロッテ戦まではいまひとつ。しかし次のビクトリー球団戦が凄すぎる。シュールで尚且つ熱い。野球という枠組を使い何か全然別な事をやっていて、試合中に選手が次々と死んでいく。特攻隊の生残り氏家、熱血漢大門、冷徹なバロン、それらを束ねる球四郎・・敵役のキャラ造型も素晴しい。創造力の限りを尽くした「マンガ」でしか成し得ない表現という感じで、良くも悪くもここまでパワーのある漫画は滅多に無いと思う。 9点(2008-12-27 23:43:53) |
4. コブラ
ハリウッド映画的要素をちりばめた日本の漫画。今なお斬新なのでは。SF映画や007、西部劇の要素もかなり入ってますね。 短編や、長くても3巻くらいで完結するお話が、毎回毎回上手くまとまっていて安心して楽しめます。 敵キャラも魅力的。クリスタルボーイやアイアンヘッド、サボイラーなどは凄くCG映えのするキャラだと思いますが、映画化の話が皆無なのは、今読む人があまり居ないのかな。 パピヨン編辺りから、絵に凝り出した反面、お話やキャラの描き方(人格)が雑になってきた感じ。クリボーは実は過去のアレと同一人物だった・・というのは止めてほしかったです。 8点(2015-08-26 19:24:49) |
5. 野球狂の詩
野球にしがみつかないと生きていけない人達を丹精込めて描いた、最も水島新司らしい作品かも。美形率が非常に低いのにこれだけ面白いのは、俗に言う「人間が描けている」という事なんでしょうか。個人的にはドカベン山田と小林の原型の話が印象的でした。 8点(2010-10-02 23:11:59) |
6. 白い戦士ヤマト
高橋よしひろの闘犬漫画。こっちでは犬は喋りません。大会ごとに登場する強敵(個性的な犬+飼い主)やそれが駆使する必殺技のアイデアが面白く、少年漫画の王道という感じで読み応えあります。様々な犬キャラが出て来るだけ出て来て結局ほとんど活躍しないまま終わる・・・といった銀牙と比べて、ライバル犬の扱いが非常に丁寧な印象。(月刊誌の利点?)個人的には銀牙よりこっちが好き。 8点(2009-09-21 10:11:37) |
7. ドカベン
何故売れたか…リアルタイムで読んだのは本当に最後の方だけなので、他のマンガと読み比べて想像するしかありませんが、まず一つ目に描写のリアリティの斬新さ。二つ目に、それまでの野球マンガが魔球を操る投手と強打者の対決物語だったのに対し、本作は野球のゲームを見せる漫画であった事。野球のスコア(7回裏に1点入って9回表に2点入るとか)或いはトーナメント表の組合せが、それ自体まるでアート作品のように鑑賞できるという事はおそらくこのマンガの発見ではなかろうか。 …連載モノの宿命か、全盛期と末期ではクオリティの差が激しい。正直な所今読んで一番面白いのが初期の柔道編だったりする。 8点(2008-10-25 15:32:06) |