《ネタバレ》 伊藤理佐は天才だと思います。作品的には、本人言うところの「ち○こま○このマンガ」が目立ってたりするワケですが、日常のちょっとしたネタを元に男女の機微を描出させたら、彼女の右に出る存在はいないのではないかと。まるでマンガ界の向田邦子みたいな存在。この作品では食べ物がテーマになっていますが、グルメマンガのように食に人間が支配されてしまっているのでなく、どこにでもありそうな家庭、夫婦、カップルのドラマが日々の食を通して転がってゆきます。いや、天才というのは失礼かもしれません。2004年から2007年あたりをピークとした絵の乱調具合は「大丈夫?」ってレベルで、作品にコンディションがモロに反映される、むしろ苦悩と努力の人、でしょうか。そんな中からも傑作がどんどん生まれてゆくのが凄いのですが。そして、なんと言っても独自のマンガ表現の凄さ。ドラマをネコやカラスやハトや非生物の視点から描いたりするのは、彼女のマンガでは当たり前のテクだったりしますが、実は深いです。寿司屋の店内を、カウンターにあるガラスケースの中のホタテや甘エビの視点から捉えた絵などは、もはやジュネやラーマンやフィンチャー超えてます。女心を形にした怪獣ヤキモチヤキが大々的に街を破壊した後、淋しそうに家に帰ってふさぎ込むまでのたった4コマの流れの見事さは神がかってたりします。擬音の神様、田村信に匹敵する擬音表現も含め、シンプルだけど何気なくスゴい、それが伊藤理佐のマンガだったりします。
【あにやん🌈】さん
9点(2008-10-17 10:48:06)