1.《ネタバレ》 地方の村に落武者の亡霊が出たという事件である。しかし現地に行ってみると、実は高速道路と自動車工場建設に伴う土地買収問題が背後にあったということで、題名は変にファンタジックだが現世的な話になっている。工場を計画している企業は「デトロイトモータース」だそうで、第2話の「巨大な外国資本」とはこれのことだったかと思わせる。
ほかにかつて実在した「毒ガス部隊」も絡んでいたが、ここで登場人物が戦時中に物心ついていたかどうかでの世代差も見せていた。また高台から村を見渡す場面が「八つ墓村」(1977)を思わせると思ったら、その後のドラマでも戦国時代の落武者を葬った「呪い墓」が出てきたりして本当に八つ墓村の風情になっていた。
場所設定としては絵に描いたような山間の農村で、蒸気機関車の場面では八ヶ岳山麓かと思ったが、公民館の地図は長野県上伊那郡南箕輪村から箕輪町にかけての一帯だった。外部情報によれば主な撮影地は同郡の高遠町(当時)とのことで、役場の場面では「花の高遠」の観光ポスターが見えてロケ地PRもしていた。
物語としては最後に土砂災害が起きたことで、かえって土地買収がスムーズに進むだろうという皮肉な結末になっていた。地上げのために火事を起こすようなものかと思ったが、わざとかどうかは別にして少年が言ったように、山を崩して山が怒った結果のようではある。また八つ墓村的にいえば落武者の呪いだったかも知れない。
テーマ的には、高度成長期に古い日本の姿が失われつつあったことへの哀惜を表現していたようで、それ自体は遠い昔の感覚のように思われる。この話では日本に外資が進出することになっていたが、その後の現実世界では逆に向こうに日本の自動車工場ができる展開だったので、かなり予想を外した話になっている。
しかし今になってみると、かえってこれから日本も外国資本に依存して生きるしかなくなるのではとの不安も感じられる。また土地への執着が「哀れ」だという心ない発言もあったが、これについても何かの理由で、古いものを容赦なく一掃する動きが今後出て来そうな気がしなくはない。子ども向け番組としては何が面白いのかわからないだろうが、今回改めて見たところではつまらないとも言いがたいエピソードになっていた。
なおレギュラー紅一点のさおりちゃんは今回あまり活躍しないが、亡霊事件と聞いての反応はこの人らしさを見せていた。