1.《ネタバレ》 かつて傷害事件で回復不能な傷を負った女性が、それを恨んで世間一般の若い女性に復讐しようとする話で、被害者の死に方がかなり衝撃的で恐ろしい(ただし特殊メイクはあまりテカテカしない方がよかったのではと思う)。恐らく1957年に有名歌手がファンに塩酸をかけられた事件が関係者の念頭にあったものと思われる。
またそもそもこの番組自体が本当に子どもに見せようとしたのか怪しいところが多いわけだが、この回はまた目に余るものがある。犯人の父親が経営しているという「新宿スチーム会館」とは一体何なのかと思うが、その上に業態を明瞭に示す「トルコ」という言葉をあからさまに出すのが良識的でない。
犯人は身体に残った傷のために結婚できないと言っていたが、それよりそもそも堅気とはとてもいえない家の出で、また微妙なことだが「大山」という名字は、この頃なら「大山倍達」という人物の名前で知られていたのではと思ったりする。制作側がどこまで何を考えていたかはわからないが、台詞に出ている以上に裏の事情があるのではと勘繰ってしまう話である。
ところで今回は、大まかにいえば女性の美しさが罪を生む、という感じの話に見えるが、最後のまとめ方があまりに観念的で唐突で、劇中の出来事を受けた教訓になっている気がしない。確かに犯人(演・田島和子)は美形で色気があって自分としても正直見惚れてしまったが、美しさ自体が問題というよりも、そもそもトラブルを生じがちな人物ではないのかということもあるはずである。野村がさおりに言った「君が犯人になってたかも知れない」という言葉も説得力に欠けており、どうも犯人固有の事情による事件を無理に一般化して格好つけたようにしか見えない。
また男は女の外見ばかりにとらわれる、という皮肉も含まれていたかのも知れないが、そうだとしても終盤の一言にしか出て来ないため、この話から感じられるのは要は“オンナは怖い”ということでしかない。実際この回の脚本は原案段階からかなりの変更があったとのことだが、できたものを見る限りは孤立的で意味不明な出来事や台詞も多く、構成の緊密さを欠く印象なのは残念だった。
なお今回はレギュラー紅一点のさおりちゃんが大活躍の回で、これは牧と同質の直観力が認められてのことだったようである。今回はテーマのせいか普段よりも美少女寄りに見えていたが、犯人の色っぽさに対して可愛らしさで十分対抗していた。