1.《ネタバレ》 実相寺監督のエピソードだが、突拍子もない奇抜な演出などはなく(眼鏡に映る炎がわざとらしい程度)、わりと堅実に映像化されている。終盤に出た「戦争のたびに科学が進歩する」という台詞はいかにも当時の意識の高い人々が食いつきそうなネタだが、話の中身とは特に関係がなく、そのように適当に格好つけて締めるのが当時の習慣だったのか、あるいは第21話と同じく脚本家のハッタリか。
今回は京都が舞台で、レギュラーの面々は京都府警に招かれて出張したような感じである。劇中人物の名刺に出ていた古美術店の住所は実在の地名で、実際に美術工芸品店が多いことで知られた通りらしい(知恩院の門前町とのこと)。
物語としては、京都の古美術商に代々贋作を強いられてきた家の男が復讐する話になっている。翌年には大阪で万国博覧会(ポスターが見えた)が開催されるような時期でもまだ旧時代の悪弊が残っているという告発のようでもあり、古い日本の因習に抑圧された若い世代の境遇がやるせないともいえる。ただし似たような設定は最近の映画(「嘘八百」2017年)でも使われているので、もしかすると素人が知らないだけで、本当にこういうことが今も連綿と続いていたりするのではないか??と勘繰ってしまうところもないではない。
ほか今回は所員に危機が迫った一瞬の緊迫感が印象的で、その後遺症で所長が鼻をかんでいたのが気の毒だった。また特撮面ではとにかく寺院の炎上場面に度肝を抜かれたが、正確にいうと本物の寺に火をつけるはずはないので合成かと思っていたら全焼してしまったので全部がミニチュアだったとわかった、ということである。犯人の台詞で「この寺は本物か偽物か」と言っていたのは残念ながらよくできた偽物だったことになるが、その偽物を作ったスタッフの力量がどれほどだったかはDVDによって後世に残されている。
なおレギュラー紅一点のさおりちゃんは、今回は東京にいて一人で留守番していたらしく出て来ないが、代わりに古美術商の跡取り娘の「信子はん」には心惹かれるものがあった。女には権利がある、男には義務があるなどと無理に現代風にふるまってはいたが、実際は男に依存するばかりの古風な女だったのが不憫で愛おしい。また変に顔が大写しになるせいで殊更に色っぽく見えたりもする。この松川純子という女優さん(当時25歳?)は、どうやら昨年(2017年)亡くなられたようで少しショックである。