1.《ネタバレ》 好意的な理解がかなり困難なエピソードである。
今回は地球防衛軍が新たに開発した惑星攻撃用の超兵器が問題視されていたが、それは実験で宇宙環境が破壊されるからではなく、大量破壊兵器の開発競争につながるからということである。しかし製作時点での世界の現実をそのままこの番組世界に持ち込んでも、相手が特定されないのでは競争にならないので説得力が全くない。一方では登場人物の発言のように抑止力という考え方もあるはずで、使用せずに済ませる前提なら推進派のいう通り、地球防衛の目的のためにとりあえず強力なものを作っておけば無難というしかない。
また演出面でも個人的には好きになれない。何かと推進派を滑稽に見せていたようだが、特にオヤジ博士(演・向井淳一郎)の顔を大写しにして突拍子もない発言をさせたのはおふざけにしか見えず、その後にわざとらしく野の花を蹂躙するとか、威勢のいい背景音楽にあわせて残虐場面を入れていたのも真面目に見る気が失せる。最後には推進派が突然一斉に反省していたが、いかにも“悲しい”背景音楽から一転して“嬉しい”音楽に変わるのは薄っぺらいとしか思われず、まずは小動物の虐待をやめろと言いたくなった。
以上により、意図はわかるが笑えない風刺漫画のような印象だった。そもそも侵略者に対して非力な地球人だからこそ、実力行使での対抗が是認されるとともにお助け宇宙人も支援しようとしていたわけで、そういう番組の基本前提を覆すようなことを大した考えもなく単なる1エピソードのためにやってよかったとは全く思われない。
ちなみに前野博士役の女優は田村奈巳さんという人で、別の特撮番組では医師役をやっていたが今回は「宇宙生物学の第一人者」だそうである。役どころとしてはそれほど素直に思いを寄せたくなる人物ではないが、見た目は肩書きに似合わない可憐な女性で、ラストで背景音楽が転換する場面ではこの人の美しさが花開いた印象だった。今回はこの人のためにあるエピソードである(アンヌ隊員もかわいい)。