1.《ネタバレ》 TVドラマの脚本家として著名な小山内美江子氏の脚本によるエピソードである。怖い話だった記憶があり、閉じ込められて開けてくれと叫ぶとか、異世界へ連れ去られるのは子どもの心に響く恐ろしさがあった。壁に宇宙が描かれた部屋に、被害者が幽閉されていたかに見えたのは視聴者としても頭が変になりそうだった。 物語としては、この世に居場所のない人々が空飛ぶ電車(小田急のロマンスカー)で異世界へ逃れる話である。SF作家が出るとはいえ、電車を飛ばすなどありえないのでSFでもなくファンタジー設定だが、警視庁も事件を把握していたことを示す場面があったので、ありえないことが現実に起きていたという設定だったらしい。
テーマ的には現代社会の生きづらさを問題にしていたように見える。ただし最後のナレーションで「理解ある異性や、暖かいご家庭」に言及していたのは、社会が過酷というより安らぎの場が大事という方を言いたいのかと思った。 主人公が戦時中に出征した場面では、家族を守るためには行かねばならないが、家族がいるからこそ生きて帰らねば、という思いが表現されていたように思われる。戦後は企業社会がいわば戦場になり、20年近くも家族のために戦ってきたにも関わらず、今はもう家が安らぎの場ではなくなったようで、会社に行けば企業社会のいわば戦友がいるかと思えばそうでもなく、上司に怒られて終わりになっていた。 そのような人々を救うのが電車だったのだろうが、しかし行先の世界が今よりいいという保証もなく、一方で今の世界がマイナス面ばかりというわけでもない。上司の叱責は遠慮がなかったがパワハラというほどではなく、栄養ドリンクのようなもの(台本では「アンプル」)を渡されたのも慰安と励ましの意味と思われる。また家族の枠組の中で夫・父親の役割を強いられるのもつらかったようだが、娘が父親だけを悪者にせず、夫婦それぞれに問題があると指摘していたのは救われる。 個人的には現実逃避を勧める物語というよりも、妙な誘いに乗ってはならないと感じさせる話かと思った。
ほか登場人物の関係では、今回はレギュラー男女が変に深い仲のように見せているが、解説によるとこのエピソードは実際の制作順が早いため、当初の企画時に想定されていた関係性がそのまま出ているとのことだった。しかし現在はこれが最終回として扱われているので、今までずっと番組をやってきて、2人の仲もやっとここまで来たかという印象を出している。 【かっぱ堰】さん [ブルーレイ(日本ドラマ)] 7点(2025-05-10 16:03:18) 《新規》 |