1.《ネタバレ》 この回は「燐光人間」というのが出ることになっているが、見た目としては液体人間である。個人的感覚としては円谷プロダクションが関わった特撮映画「美女と液体人間」(1958)、特撮TV番組「ウルトラQ」第19話「2020年の挑戦」と並ぶ、いわば“液体3部作”のような感じだが、特撮技術的にはどうも液体の質感が一定せず、「美女」の時代と大して変わっていないようなのは残念である。それでも当時見ていた者(子ども)には一定の心理的衝撃があって、自分としては劇中の緑色の液体が夢に出た記憶がある。
特撮はともかく大人の立場としてはドラマ部分が印象深い。中心人物の山本という男については父親の言葉が全てを物語っているが、この男に対する牧の態度について、最後に顔を逸らした場面からすればどうやら今回は深く感情移入していたらしいと取れる。
また一方の林洋子は性格が掴みにくいが、例えば他の同僚があからさまに山本を馬鹿にして笑っていたのに対し、この女はそういう態度を取っていなかった可能性もある。しかしそれは人柄の良さではなく単に関わりたくなかったとのことで、要は美貌による高慢さなのか心の狭さによる自己本位か、あるいは婚約者がそのように要求していたのかも知れないが、遺書まで無視するようではまともな人間として認知していなかったと思うしかない。
今回特に衝撃的だったのは最後の「特製ビール」による処置である。これは山本にとっては疑似的な結婚であり火葬であって、人間としての姿も心も失ってしまった山本を、せめて最後はいわゆる「冥婚」のように、花嫁人形と一緒に葬ってやる意図だったと思われる。そこまで山本の心情に寄り添ってやれたのは、親以外では牧だけだっただろう。
一方の林洋子にとっては極端にいえば疑似的な火刑だろうが、そこまで厳しく考えなくとも、一生の晴れの場でこのような騒ぎが起きたからにはもう普通のしあわせは得られないだろうことは容易に想像できる。少なくとも遺書の時点で誠実に対応していればこういう事態は避けられたのかも知れず、人としてなすべきことを怠った罪への後悔が、最後の表情になって出ていたようにも思われた。
ちなみに陰気で怖いドラマ展開の中に、変にユーモラスな場面を入れて和ませるのはこの番組のいいところである(シャーレとコーヒー皿の交換)。またレギュラー紅一点のさおりちゃんも可愛らしい顔を見せていた。