1.《ネタバレ》 映画・ドラマ・アニメを含めたすべてのSF作品の中でも最上位クラスの作品だと思っている作品として『バトルスター・ギャラクティカ』があるのですが、Syfyチャンネルがそのギャラクティカ以来久し振りに手掛けた宇宙ものが本作『エクスパンス』ということで、大変な期待の下での視聴となりました。
で、結果なのですが、物語もビジュアルも確かに作り込みが凄い。巨大なスペースコロニーから小道具ひとつに至るまで何一つ手抜きがなく、宇宙移民が始まって数世代が経過してくたびれてきた世界というものを、ほぼパーフェクトに視覚化できています。また物語も硬派な空気を終始維持できているし、いざ戦闘が始まれば圧倒的なテンションの見せ場が繰り広げられ、本作のメイン視聴者であると見られるギャラクティカのファンが要求するものは、とりあえず提示できています。
問題は、とにかく内容がわかりづらいこと。失踪した富豪令嬢を追うコロニーの刑事、正体不明の敵に攻撃された貨物宇宙船の生き残り、地球の国連大使が主人公となるのですが、シーズン佳境までほとんど接点を持たないこの3名が別々に謎解きをしているので、彼らが何をしているのかをしばしば見失いそうになります。
また、前述の通り個々の見せ場のクォリティは高いものの、最近のアメリカドラマとしては珍しく見せ場の数がとにかく少なく、何事も起こらないまま終了する回もザラにあるため、見続けるためには時に忍耐が必要となります。なお、謎の多くは解明されないままシーズン最終話を迎え、本シーズンが序章に過ぎなかったことが判明するのですが、今後このシリーズがどうなっていくのかには大変興味をそそられる一方で、この構成ではシーズン単独での評価はどうしても低くなってしまいます。複数のシーズンをまたぐ壮大なサーガを描きつつも、個々のエピソードの満足度も高いものだった「バトルスター・ギャラクティカ」や「ゲーム・オブ・スローンズ」などと比較すると、本作では全体構成のために個別エピソードが犠牲にされているという印象を持ちました。