1.《ネタバレ》 麻雀部の女子高校生が全国の頂点を目指して競う「咲-Saki-」のスピンオフで、本編の清澄高校と全国大会で対戦することになる奈良県の阿知賀女子学院麻雀部の物語である。本編と同じくTVドラマ+劇場版のセットで、ドラマ本体の4回(計93分)と特別編1回(22分)で全国大会の直前までを扱っており、続く劇場版(113分)では全国大会で、阿知賀女子学院が準決勝を勝ち抜く様子を描いている。
ドラマの全体構成としては、1話と2話で主人公の小6時点(子役)と中3時点、3話は高校入学後の麻雀部の始動、4話で早くも県予選で優勝して全国大会に臨むまでを扱っている。特別編では少し戻って、本編に出た長野県の龍門渕高校(2人だけ)との練習試合を見せてから、全国大会で対戦する千里山女子高校、新道寺女子高校と白糸台高校のメンバー紹介のようなことをしている。ちなみに西東京代表の白糸台が最も可愛げがない。
主人公が全国を目指す動機は離れてしまった旧友との再会とのことで、これは本編での姉妹の再会に相当するものらしい。ほかにこの阿知賀編では、監督の挫折体験の克服など登場人物それぞれの思いや麻雀クラブの子どもらの声援もあり、本編よりも広がりと深みのある世界に見える。
ただし、本編での時間経過がほとんど1か月程度だったのに対してこの阿知賀編は4年前から始まっており、その上に本編が劇場版で扱った県予選までをTVドラマに詰めてしまっているため、かなり駆け足で都合良すぎな展開になっている。不備不足の点は見る側が適当に納得していれば済むわけだが、県予選で当たった県下随一の強豪校が、速成チームに簡単に敗れてしまうのはかわいそうなところもあった。
登場人物としては、それぞれ個性はあるにせよ本編ほど強烈な人物はおらず、一人だけガキっぽく見える主人公と、一人だけ地味でむすっとしている部長が逆に目立つ結果になっている。主演の桜田ひよりという人は当時恐らくまだ中学生で、主人公のガキっぽい言動をユーモラスに演じていて楽しい。また晩成高校の演者のうち3人(工藤美桜・其原有沙・北村優衣)は別のところで見たことがあったので若干期待していたが、あまり活躍しないで終わったのは残念だった。
ちなみにエンディングテーマの「春~spring~」はまともに聴くとけっこう染みる曲で、終盤の「ああ春が来る」の高揚感と、最後にピアノの音がチロリンというところの落差がいい。またオープニングテーマの「笑顔ノ花」は最後に「ランランラン」というのが笑ってしまう。