1.《ネタバレ》 野望の階段を登りつめて国の頂点に立ったフランクのその後。最高権力を握った途端にフランクは勢いを失い、それまでは「大統領になるんだ」という目的の下結束してきたアンダーウッド夫妻が、実は目指していたゴールが違っていたことが露呈して分裂を始めます。攻めに攻めていた1・2シーズンから一転してフランクが防戦一方となった本シーズンでは作品全体の雰囲気が大きく変わっており、また完全な公人となり24時間の監視に晒されたことでフランクが裏工作に動くような展開もなくなったために、かなり真っ当な政治ドラマに落ち着いています。前シーズンまでのトーンが好きだった私としては最初の数話にはあまり乗れなかったし、中弛みしているエピソードもあったため序盤はイマイチだったのですが、それでも終盤できっちり盛り返す辺りは、さすが名物ドラマです。
終盤にて、フランクは多くの取り巻きを失います。これを裸の王様状態になったフランクの自業自得として見ることもできますが、私はフランクに大きく感情移入できました。どいつもこいつも大統領に一方的な期待ばかりを募らせ、望んだ見返りを得られないと見るや「私のことはどうでもいいのか」などと言って離れていく。権力者になって受けられたものは敬意ではなく文句ばかりで、これではフランクもイヤになるでしょう。
まずシャープ。シーズン2にてフランクの抜擢人事によって党内の要職に就いた彼女は、フランクからすれば当然に駒となるべき存在です。しかし、彼女は大統領選で窮地に立たされるフランクとダンバーを品定めし、副大統領職という餌を提示されたことでようやくフランク側に立つ決断をするという恩知らずな態度をとります。その割に、駒として使われたことにブーブー文句を言い、自分の心情に配慮しろなどとお門違いなことをぬかすものだから、フランクも堪らないわけです。まず情を失ったのはシャープの方であり、そこから先は取引というシビアな形で二人の関係が進み始めた。駒となることへの対価は副大統領職の提示で済んでおり、餌を見せることで渋々付いてきているような部下の心情にまでなぜ配慮しなければならないのか。フランクのイライラには、とても共感できました。
次にレミー。元はフランクのスタッフとして働きながらも、敵対者側のロビイストに転職。シーズン2では完全な敵に回っていたにも関わらず、クライアントであったレイモンド・タスクが倒れるやまたフランクの元に戻ってくるという究極の風見鶏でありながら、フランクは大統領補佐官に就けるという実に温情ある対応をします。しかし、彼はフランクに対する恩義などビタ一文感じていない様子で、同じく恩知らずのシャープの逆切れに同調して再びフランクの元を去っていきます。こいつも最悪、出て行かれて正解でした。
最後にクレア。フランクを応援する様は糟糠の妻のそれではなく、自己実現の手段であったことはシーズン1の頃より分かっており、今シーズンではいよいよ彼女も自分の目的のために動き出すのですが、そのタイミングがことごとく最悪。まず彼女は国連大使を目指しますが、大統領の妻が国連大使になるという権力の集中など世論の理解の範囲を超えており、当然議会では否決をされます。ここで諦めればいいものを、旦那にねだりその権力を使って無理やり大使就任するものだから、ただでさえ低い旦那の支持率に悪影響を与えます。しかも、大使でいる間は私情を捨てて公務に徹するべきなのに、肝心の場面では妻に戻って大統領の指示に従わないため、彼女の存在がフランクのアキレス腱となります。彼女もシャープと同じく情と利の両方を求めてくるため、実にめんどくさいのです。クレアの要求に耐えかねたフランクが、「ある時は君を平等なパートナーとして見られる理解ある男で、ある時は君をリードできる頼もしい男。それを君の気分に応じて都合よく使い分けろって言うのか!」とブチ切れる場面では拍手喝さいでした。よく言った、フランク。
ただし、大統領という立場では実質的に離婚という選択肢が残っていないのがフランクの辛いところ。そして、クレアは旦那の弱みをよく理解していて、容赦なくそこを攻撃してきます。シーズンクライマックスでは旦那の選挙戦における重要局面においてスキャンダルを起こそうとするという、最悪の行動に出ます。あなたは共倒れって言葉を知らないのか。女性って、男が一番困るであろうタイミングで騒動を起こすと脅迫し、自分の言うことを聞かせようとしますね。絶対にうんとは言えない状況で「じゃ、離婚よ!」とか言ってくるうちの嫁を見ているようで、実に複雑な気持ちになりました。がんばれ、フランク。