1.《ネタバレ》 『マイノリティ・リポート』や『LOGAN/ローガン』等の名脚本家として知られるスコット・フランクが劇場用映画として企画していたものの、プロデューサーのスティーヴン・ソダーバーグから「人物描写を掘り下げるためにはドラマフォーマットの方が良い」という助言を受けて7話のミニシリーズとして制作したという本作。
合計7時間かけてひとつのドラマが描かれるという点が本作の特色であり、各エピソードに見せ場が仕込まれている他の連続ドラマとは根本的に異なった作りとなっています。この作りが、主に回想で構成された中盤辺りで猛烈に退屈させられる原因にはなっているものの、他方で最終話に向けて一直線に盛り上がっていき、ピークに達したところで大銃撃戦が始まるという娯楽作として理想的な流れを生み出せており、一長一短ある構成だったと思います。
内容は、流れ者がならず者集団と戦うという西部劇としてはオーソドックスなストーリーがあり、流れ者と女主人との交流や、腰抜け扱いされていた保安官の復権といった、これまたオーソドックスなサブプロットがあるという、まさに王道に従った内容ながら、炭鉱事故でほとんどの男が死に、女性だけとなった集落が舞台という点にオリジナリティを入れてきています。王道と同じなのに王道とはちょっと違うというこのサジ加減は絶妙だったと思います。
また、悪役のキャラが非常に立っているという点も本作の強みです。一つの集落を皆殺しにし子供にも容赦をしないという凶暴性と、行動パターンの不可解さとで、次の瞬間にどんな恐ろしいことを仕出かすのかが分からない大悪党・フランク・グリフィンがとにかく素晴らしすぎるのです。その生い立ちは凄惨を極め、実の親を惨殺したカルト教団が育ての親となったことでその精神や価値観を完璧にぶっ壊されて大悪党となったものの、また別の場面にて自身の身の安全も顧みずに天然痘患者の介抱をする様を見るに、本来の彼は善人であったことが伺い知れます。この複雑な悪党を演じるジェフ・ダニエルズのはまり具合も素晴らしく、20年前には『Mr.ダマー』でジム・キャリーと一緒にバカしてた俳優とは思えないほどの重厚感がありました。
他方で流れ者のロイ・グッドは類型的なヒーローにとどまっているため、やや魅力薄。ちょっと前までグリフィンの手下として悪行にも手を染めていたはずなのに、恐ろしい部分を全然覗かせないので平板なキャラクターとなっています。善人になろうと努力するものの、ふとしたきっかけでかつての凶暴性を垣間見せて周囲をドン引きさせるようなエピソードがあっても良かったと思うのですが。また、父親のように慕っていたグリフィンの元を離れた経緯もはっきりと説明されないために、二人の間のドラマがうまく流れていませんでした。