1.《ネタバレ》 毎回刺激的な展開を差し込み、視聴者を次話へ繋ぎとめる手法は、連ドラ脚本上必須のテクニック。いつの間にかこれが常識となった気がします。米国製ドラマ(シーズン〇とか付くもの)においては更に顕著で、広げに広げた風呂敷を畳む気などハナからありません。人気が落ちたら廃棄するだけの話。『視聴率の高いドラマ』『話題のドラマ』と『完成度の高いドラマ』・『上質なドラマ』は必ずしも一致しません。そんな昨今の流行とは真逆に位置するのが本ドラマであったと感じます。「人」を丁寧に描くことに注力したため、観客は自ずと登場人物に感情移入できました(ゆっくりと浸透していく感じ)。ダイナミックな展開こそ無いものの、その裏で観客の予想を覆す大ネタを仕込むトリッキーさを持ち、最終話ラスト10分で数々の伏線を回収する鮮やかな手際に感心しました。不可避と思われた『切ない』ラストを『多幸感あふれる』ハッピーエンドへひっくり返せたのは、緻密に張られた『伏線』に因る説得力と、粗探しの暇を与えぬ『早仕舞い』で成立させた神業でありました。至福のハッピーエンドに異論などありませんが、あれは「エーミンが作中漫画で描いた結末」でもあるため、「願望」に基づく「妄想」の可能性も捨てきれません。これは「余韻」や「余白」の類で、優れた物語には必ずある「奥行」のひとつと考えます。キスはおろかハグさえ無い『人と幽霊との純愛物語』は優れたミステリーでもありました。
最後に『高城れに』さんについて。全話観終えて改めて、高城れに=小鳥遊玲のシンクロ率の高さに驚かされます。れにさんのパーソナルイメージに沿って『あてがき』で玲が創作された印象さえあります。こう書くと、『演じるのに苦労しなかったんじゃないの?』と思われるかもしれませんが、むしろ逆です。自身に似た人格を客観的に捉えるのは、一から創る別人格より難しい作業と考えます。れにさんはよくやりました(偉そうな物言いすみません)。これからも女優『高城れに』に大いに期待いたします。