1.真綿で首を絞められるように緩やかに崩壊していくことがこのドラマの味なんですよねぇなんてシーズン1ではレビューしましたが、続くシーズン2は一転して怒涛の展開を迎えます。そこいらの海外ドラマを凌ぐほどの勢いでサスペンスとドラマが疾走し、シーズン1が序章に過ぎなかったと言えるほどの急加速を見せるのです。その圧倒的な勢いと熱量には圧倒されたし、二転三転しつつも破綻を来さない緻密な作りには感心させられました。
前シーズンのクライマックスにてジャックはダニーを殺害したものの、直後にジャックが心臓発作を起こしたことから偽装工作が不完全なものとなっており、そこにはいくつもの綻びが残っていました。他方、地元の名士であるがゆえにレイバーン家には様々な思惑を持つ者が出入りしており、そうした者たちに思わぬことからダニー殺害に係る糸口を掴まれそうになります。そうして問題が起こる度にレイバーン3兄弟は付け焼刃での対応を迫られるのですが、良かれと思ってとった行動が余計に穴を大きくしたり、かと思えば、ある人物による要らん行動が巡り巡って良い結果をもたらしたりと、展開がまるで読めないため見ているこちらまでが冷や冷やさせられます。
そんなギリギリの状況下でレイバーン3兄弟は精神的に疲弊していくのですが、芸達者揃いのキャスティングゆえにそのやつれっぷりも見事に表現されています。「あの時、お前が〇〇したのが悪いんだろ!」という血縁者同士の罵り合いは極めてリアルで、関係の悪い家庭内でしばしば見られる光景がまんま切り取られています。”Bloodline”というタイトルは、本作でも健在なのです。ただし、この3兄弟がいるのは殺人や麻薬取引が発覚するか否かという非常事態の真っただ中。親の介護や遺産で揉めることが関の山と言える普通の家庭とはまったく状況が違うのです。どれだけムカついても、自分は巻き込まれただけだと思っていても、運命共同体である3人は支え合わねば全員で倒れることとなるのですが、極度の疲労と緊張感の中で正常な判断能力を失っていき、最終的にはバラバラに分解して崩壊を待つしかないという状況にまで追い込まれます。この3人には、限定ジャンケン開催中に内輪揉めを起こす仲間に向かってカイジが言った「一頭のライオンが三つに分かれて生きてけるかって言ってんだ!」というセリフを送りたくなりました。
また、前シーズンでは「どうやらマイアミで事業に失敗したらしい」ということしか語られなかったダニーの過去が明らかにされ、それに伴いダニーの元嫁(『オブリビオン』でトム・クルーズの相手役を務めたアンドレア・ライズブローが脱ぎまくってます!)とその彼氏(ジョン・レグイザモが脱ぎまくってます!って、こちらは有難くないか)、そしてダニーの息子・ノーランが新キャラとして登場します。特にスポットを当てられるのがノーランなのですが、彼は父・ダニー同様、家族からまともな愛情を受けられなかったことで道を踏み外す一歩手前にいます。サスペンス面でもドラマ面でも彼が本シーズン最大のキーパーソンであり、彼を救うのか、ダニー同様に放り出してしまうのかという選択がレイバーン家の命運を左右することとなります。彼のドラマは大変に見応えがあったし、回想場面においてそもそもダニーが里帰りをするきっかけを作ったのがノーランだったことも明らかにされ(ダニーが里帰りしなければ、レイバーン家は表面上は幸福なままでいられた)、本作は複雑な因果に包まれたドラマであることがさらに強調されます。