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かっぱ堰さんのレビューページ
プロフィール
コメント数 12
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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1.  ウルトラマン [23話] 《ネタバレ》 
「棲星怪獣 ジャミラ登場」のエピソードである。怪獣の名前はアルジェリアの独立運動家で、1960年にフランス当局に弾圧されたジャミラ・ブーパシャ(1938~現在)の名前から取ったとされている。 宇宙飛行士が帰還時の事故で死亡した事例は実際あったようだが、今回のようにそもそも帰れなかったというのは幼少時には結構怖い話だった。これが本当にあったとすればソビエト連邦に違いないと昔は思っていたが、このドラマではなぜかフランスの仕業だという雰囲気を出している。今の感覚だとフランス単独の有人宇宙飛行などありえなさそうな気がするが、原水爆の方は超大国並みに自前で開発したわけであり、またアルジェリアの件に関する怒りの意味からも、現実味を度外視してフランスの話にしたのかも知れない。 ただし最後のジャミラが手を伸ばした先に星条旗があったのは、怒りの対象がフランスだけと思うなというようでもある。また墓碑にわざわざ日章旗を映していたのも、米仏だけでなく日本も他人事でないはずだという意味かも知れない。なお赤旗はなぜか見えなかった。  ところで最後のイデの台詞で「××者はいつもこうだ…」というのははっきり聞こえない。「為政者」とか「偽善者」という説もあるが、現在は「犠牲者」が正しいとされているらしい。 うち「為政者」に関しては、政治指導者だけに権力があるわけではないので解釈として安っぽく、そもそも最初の音節が「い」には聞こえない。どちらかというと「ぎ」なので「犠牲者」ならあるかも知れないが、それでは原因者への言及がないことになる。また犠牲者の立場を強調しすぎると、山間の村でやったような無差別テロを心情的に正当化しかねない気もする。 それより個人的には「偽善者」と解するのがいいのではと思った。そもそも「世界平和会議」などという茶番くさいのは本気にせず、どういう思惑があるのか疑ってかかるのが適切だろうが、そういう偽善にイデも騙されていたことを今回の件で思い知らされた、というなら物語としての意味がある。またイデは序盤でどこかの国が妨害工作をやっていると決めつけていたが、これもとにかく誰かを悪者にして、自分を善の側に置こうとする人類の性癖を表現していたのかも知れない。  その他、今回はフジ隊員とイデの関係が微妙だった。この二人は第14話で一緒に買い物に出かけたこともあり、佐々木守脚本・実相寺昭雄監督だとこういう関係性になるらしい。
[DVD(日本ドラマ)] 6点(2024-10-12 16:18:35)
2.  怪奇大作戦 [12話] 《ネタバレ》 
地方の村に落武者の亡霊が出たという事件である。しかし現地に行ってみると、実は高速道路と自動車工場建設に伴う土地買収問題が背後にあったということで、題名は変にファンタジックだが現世的な話になっている。工場を計画している企業は「デトロイトモータース」だそうで、第2話の「巨大な外国資本」とはこれのことだったかと思わせる。 ほかにかつて実在した「毒ガス部隊」も絡んでいたが、ここで登場人物が戦時中に物心ついていたかどうかでの世代差も見せていた。また高台から村を見渡す場面が「八つ墓村」(1977)を思わせると思ったら、その後のドラマでも戦国時代の落武者を葬った「呪い墓」が出てきたりして本当に八つ墓村の風情になっていた。  場所設定としては絵に描いたような山間の農村で、蒸気機関車の場面では八ヶ岳山麓かと思ったが、公民館の地図は長野県上伊那郡南箕輪村から箕輪町にかけての一帯だった。外部情報によれば主な撮影地は同郡の高遠町(当時)とのことで、役場の場面では「花の高遠」の観光ポスターが見えてロケ地PRもしていた。 物語としては最後に土砂災害が起きたことで、かえって土地買収がスムーズに進むだろうという皮肉な結末になっていた。地上げのために火事を起こすようなものかと思ったが、わざとかどうかは別にして少年が言ったように、山を崩して山が怒った結果のようではある。また八つ墓村的にいえば落武者の呪いだったかも知れない。  テーマ的には、高度成長期に古い日本の姿が失われつつあったことへの哀惜を表現していたようで、それ自体は遠い昔の感覚のように思われる。この話では日本に外資が進出することになっていたが、その後の現実世界では逆に向こうに日本の自動車工場ができる展開だったので、かなり予想を外した話になっている。 しかし今になってみると、かえってこれから日本も外国資本に依存して生きるしかなくなるのではとの不安も感じられる。また土地への執着が「哀れ」だという心ない発言もあったが、これについても何かの理由で、古いものを容赦なく一掃する動きが今後出て来そうな気がしなくはない。子ども向け番組としては何が面白いのかわからないだろうが、今回改めて見たところではつまらないとも言いがたいエピソードになっていた。 なおレギュラー紅一点のさおりちゃんは今回あまり活躍しないが、亡霊事件と聞いての反応はこの人らしさを見せていた。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 6点(2024-10-12 16:18:33)
3.  ウルトラセブン [3話] 《ネタバレ》 
侵略宇宙人の名前は出ないが怪獣は「エレキング」と呼ばれている。宇宙人が地球に来た目的は、怪獣を暴れさせて「地球上の人間を皆殺しに」し、「美しい星」である地球を奪うことだった。また侵略行動に邪魔なウルトラセブンの活動を事前に阻む計画があったようで、地球防衛軍など初めから問題にしていなかったらしい。 宇宙人は2人で来ていたが、別に何か任務があったのではなく組織的な背景もなく、単に地球を「あたしたちのもの」にするという個人的動機だったらしい。この2人が地球人に化けた姿が少女だったのは、もとの宇宙人としてもこのような年齢性別?だったと解すると、要は仲良しの女の子2人が面白がって侵略遊びをしただけのようでもある。きれいなものを自分のものにしたがるのが子どもっぽさの表現のようで、また副題が「秘密」ではなく「ひみつ」なのも女の子風といえる。 侵略とはいえ人里離れた山奥(長野県の木曽谷)に大怪獣が出ただけで人的・物的被害は何もなく、それでも最後に撃滅してしまったのはあまりに無慈悲なようだが、しかし再犯の恐れもあり、侵略される側として放置してはおけないというのも当然ではある。また「地球人の男性は可愛い子に弱い」という弱点を知られてしまったのもまずかった(かなり現実的問題)。 全体として宇宙人の行動が微笑ましいこともあり、なかなか楽しめるエピソードになっている。  登場人物に関して、宇宙人役の演者は当時高校1年生だったそうで、序盤では水着姿も見せていたが、演技でも「あたし、触られたくないの、誰にも!」という感じで頑張っている。第31話に出た松坂慶子のような女優の卵だったのだろうが、本人の意思によりこの撮影限りで演技の仕事はやめたとのことだった。ダンが宇宙人を取り押さえようとした場面では胸に触らないよう気をつけていたが、「やん!やめてよ!」などと言われては触れること自体がはばかられるので、やはり少女の姿などされると地球防衛に支障が出る。 ほか序盤で隊員が出動を志願した場面で、隊長がアンヌだけ名前も言わなかったのはさすがに失礼だろうと思ったが、その後に「わが基地の誇る名医」(看護師でなく?)とフォローが入っていたので気をよくしたかも知れない。ダンからの連絡に一瞬喜んでから怒ってみせたのもこの人関係の見どころだった。その場面での「隊長がプリプリよ」という表現は古風で笑った。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 6点(2024-10-12 16:18:32)
4.  ウルトラセブン [1話] 《ネタバレ》 
TVシリーズの開始に当たり、まずは番組世界を一通り紹介するよう努めている。 基本設定として、地球にはすでに宇宙からの侵略に備えた「地球防衛軍」があり、番組の舞台になるのはその「極東基地」であること、また基地内に特別チームの「ウルトラ警備隊」があることを説明している。その上で隊員、基地内と装備品(航空機、特殊車両)を紹介し、ウルトラホーク1号の「分離飛行」も見せていた。 ウルトラセブンについては人間サイズも巨大化も可能であり、また武器としてエメリウム光線、アイスラッガーとカプセル怪獣があることを見せている。終盤では宇宙空間が戦いの場になりうることを示した場面もあった。  しかしドラマ的には変なところが多々ある。特に、すでに地球防衛軍という大がかりな組織があるにも関わらず、実際に宇宙人が攻めて来たのは今回が初めてだったかのように見える場面は完全に変だった。また番組世界の紹介を優先したためか必然性のない不自然な展開になったところが多く、さらに時間の関係からか台本にあった場面が省略され、ウルトラセブンの出現に対する人々の反応や、命名の由来に関するエピソードがなくなっていたのは初回として明らかに不足が生じている。 特撮では一応、京浜工業地帯の全滅とか着ぐるみ怪獣の出演もあったが全体的に地味な印象に終わっている。今回はまあこの程度として、次回以降の盛り上がりに期待する感じだった。  宇宙人については「クール星人」と名乗っていて、クモを思わせる形状だが第9話のチブル星人と被る雰囲気もある。この昆虫風の生物(クモ似だが脚は6本)が、人類を昆虫扱いしていたのは単なる皮肉とずっと思っていたが、しかし視聴者である児童にとって、標本というのは専ら昆虫を捕えて作るものというイメージがあったからこそ、あえて昆虫型の宇宙人にしたらしいことに今回初めて気づいた。自分らが標本にしていた昆虫に逆に標本にされるのは素朴な恐ろしさがあるとはいえるが、ただし先行シリーズ「ウルトラマン」の三面怪人ダダも人間標本を作っていたので特に目新しくはない。 またウルトラ警備隊の隊員は、年齢と隊歴の間に22年の差があったので四年制の士官学校(防衛大学校のようなもの)を出たのだろうが、紅一点のアンヌ隊員だけが隊歴不明なのは気になる。なお「あなたの地球」という台詞が不自然なのは前の場面が省略されたからである。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 4点(2024-10-12 16:18:30)
5.  ウルトラマン [28話] 《ネタバレ》 
「三面怪人 ダダ登場」のエピソードである。副題は「ごーてんろく」と読むのかと思っていたが台詞では「ごーろく」と言っていた。肩書きのとおり顔が3種類あって時々変わるので、劇中人物は騙されて3人いると思い込んでいたが、視聴者にとってはオープニングで「三面」だとバレていたことになる。 今回はサスペンスホラー的な展開で、建物内で人が怪物に追われる展開は子どもにとってけっこう怖かった気もするが、今回見ると建物内より屋上で追いかけられて落ちそうなところの方がスリリングで怖かった。また今の感覚では、ダダは怖いというよりむしろ上司との関係で人間味を出していたりして、気色悪いが親しみやすいキャラクターではある。人を怖がらせるだけで大した特殊能力もなく、人類サイズだと屈強な男なら対抗できる非力な奴だったようで情けない。 なお疑問点として、話の流れからすると人間標本5は病院から拉致された男、6は研究所を訪ねて来た秋川技官(超優秀、色気あり)なのかと思っていたがそれでいいか。序盤のバスの転落事故も、標本を取るためかと思わせておいて結局ダダとの関係が不明に終わったが、そもそも病院からの拉致方法を見れば事故も必要なかったはずで、ちゃんと考えるとよくわからない話になっている。  ところで今回特徴的だったのは、かつてのお色気女優だった荒砂ゆき(当時:田原久子)という人が出ていることである。この手の番組では「ウルトラQ」(1966)第24話にも出ていたが、これは監督が同じだからという関係か。かなり個性的な容貌で(バスの車掌役の方が普通に可愛いタイプ)、最初はいかにも怪しく見えたが実は…というのも前回出演時と似ている。 お色気に関して具体的には、脚をひっかけられて転んだのを脚の方から撮るとか、外壁を登るのを下から撮ってスカートの中が見えそうだといった場面を入れてある。しかし「ウルトラマン」はウルトラシリーズ中でも子ども向けの性格が比較的強く、大人が見る要素などほとんどなかったはずであり、これは一体誰に見せるために作ったのかわからない。合理的目的がないのであれば監督の趣味だったと思うしかない。
[DVD(日本ドラマ)] 5点(2024-09-28 20:32:37)
6.  ウルトラQ [24話] 《ネタバレ》 
今回登場のゴーガは第2話のナメクジと被る雰囲気もあるが、殻が底光りするとか胴体のヌメヌメ感はよくできている。造形物は大中小の3つ作ったとのことで、特に最初に小が出てきた姿は愛らしく、人目を避けて隠れた姿にも愛嬌があったが、それでも人を攻撃すれば「顔がありません」という状態になるわけなので侮れない。映像では怪光線で攻撃していたが、台本段階では「溶解液」だったようで恐ろしい。 街で暴れてからは割と簡単に退治されてしまったが、それでも日本橋近辺が破壊され、「神田一帯」のどこかが大火災になる程度の被害は出していた。  話の内容としては密輸集団と秘密機関の戦いによるスパイものの風情があり、「横浜倉庫」の大爆発やスナイパーの場面などがそれらしく見える。そこに怪獣が絡んで来るのは、東宝特撮映画だと「宇宙大怪獣ドゴラ」(1964)のようなものということになる。 その上さらに古代の呪いが現代に蘇って悪の都を滅ぼす趣向も入っている。「六千年の呪い」というのは、単純に1966-6000=-4034でもないだろうが年代スケールを示す数字ではあり、ユダヤ教・キリスト教の創世記に匹敵する古い伝承がアーブという国(Arab→Arb?)にはあったのかと思わせる。今回たまたま放射線のせいでゴーガが活性化されてしまい、攻撃で一応死んだかと思ったが、地下に潜って待機状態に戻っただけのようでもある。現代社会はまだ古代帝国ほどの悪の世界ではない(らしい)が、いつかまた日本でゴーガが蘇ることのないよう自戒が必要だという一応の教訓話にはなっていて、それほど感心はしないが型どおりではあった。 なお脚本上は、情報を小出しにしながら設定の全体像を徐々に明らかにしていく試みがあったようで、古代の伝承は2段階、謎の人物の正体は3段階で全貌が見えるようになっていた。  登場人物について、香港から来た謎の人物は日本語を話していたが結局何人だったのかわからない。演者の荒砂ゆき(当時:田原久子)という人は個性的な容貌が印象的だが、その後はお色気女優として知られることになったらしい。映画「八つ墓村」(1977)で、丹古母鬼馬二氏とともに斬殺される役がこの人だったようである。 また特撮関係で著名な古谷敏氏(ケムール人、ラゴン、ウルトラマン、アマギ隊員)が珍しく顔出しで出ていたが、その顔がなくなったと言われて退場してしまっていた。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 5点(2024-09-28 20:32:34)
7.  ウルトラセブン [42話] 《ネタバレ》 
子ども番組として素直に受け取っておけばいい範囲を逸脱しているので、大人の立場で真面目に応対しなければならなくなっている。 このエピソードで大問題になっているのは、人類がかつて侵略者だったとして敵のノンマルトに非難されていることである。しかし、本当に人類が侵略者だったとしても今さら地球を明け渡して去ることなどできないわけなので、これはノンマルトの攻撃を正当化し人類側の譲歩を狙ったイメージ戦術という程度に思っておくしかない。真に重要なのは侵略者の汚名を認めるかどうかということではなく、現実問題として未来に向けた両者の安定的な関係を作ることである。 その場合の前提として、「人間が人間のことを考えるのは当たり前」という台詞はその通りである。ここでの「人間」が利害共同体としての意味を持つ言葉なら、その共同体の利益を人類が優先するのは当然であり、同じようにノンマルトがノンマルトのことを考えるのも当然ということになる。そのような前提で、相手が弱者だからと一方的に譲歩するのでなく、いわば同じ「地球人」として対等な立場で交渉し、例えば人類はノンマルトの生存権を認めて生活圏を侵害せず、その外では人類の海底開発を認めてもらうといった形の合意を図ることが望まれる。  しかしそこに至る方法として、今回ノンマルトがやったことは得策と思えない。事前に一応警告はあったが、いくら子ども番組でも子どもが使者ではまともに受け取れないのは当然であり、人類側からすれば突然に海底開発基地・船舶・漁港を攻撃された形になっている。例えば人類を交渉の場に引き出すため、最初に何気なく実力を見せて脅しをかけるというなら意味があるが、そのために一般住民の死者(多分)まで出しては人類側が引けなくなる。それなりの文明人に見えながら、まともな交渉もなく勝ち目もない戦争を始めたかに見えるのは、太平洋戦争開戦時の日本の判断にも劣るというしかない。 なお最後にキリヤマ隊長が海底都市を破壊したのは人類が侵略者と認めたくなかったからで、海底開発のためというのは単なる言い訳のように思われる。逆にいえば当時、それを名目にすれば誰も文句がいえない大義としての力が「開発」という言葉にあったのかと思った。現在ならまた別の大義が世界を支配しているだろうが、そのような大義に隠れて富と力を追求するところに人類の悪が生じる。  その他個別の登場人物に関して、 ○少年はいわば広報官役だが、年少者らしく他人の主張をそのまま信じて言うだけの子どもの使いに見える。「魂」であれば浮世離れした立場で中立を気取っていられたかも知れないが、しかし今回少し日がずれていれば、命日に訪れた母親も災難に遭う恐れがあったのであって、それをこの少年は容認できるのかと言いたい。 ○少年の母親は子どものためにと思って毎年海に連れて来ていたとのことだが、もしかして自分のせいで子どもを死なせてしまったと思い込んでいなかったか。もしそうなら思いつめない方がいいと言いたいところだが他人が言っても仕方ない。 ○ダンは自分が侵略者に協力しているのではないかと悩んでいたが、実際やったのは民間に被害を及ぼす怪獣退治だけなので緊急避難的な対応といえる。海底都市の破壊には立ち会わず隊長の勝利宣言も聞いていなかったので、人類の罪を背負わされなくて済んだ形である。 ○アンヌはダンと二人で海に行ったことを周囲にも知られていて、ほとんど仲間内公認の間柄になっている。今回は終始二人で一緒に行動し、体験と思いを共有することで心の関係が一層深まったと思われる。 ○小学校の児童はポインターが来たので、わーいと言って駆け寄って車体にたかっていた。勝手にドアを開けて頭を突っ込んだり上に乗ったりしていたが、リアウインドウの下にはミサイルを積んでいるはずなのでそこに乗っては危ない。靴を脱いで上がっている女子は行儀がいいようでもあるが、脱いだ靴を車の上に置いては意味がない。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 5点(2024-09-28 20:32:31)
8.  ウルトラセブン [41話] 《ネタバレ》 
39~40話連続の「セブン暗殺計画」(前篇・後編)が終わって最後の第4クールに入ると、制作の自由度が高まって変わり種的エピソードが出る一方、回数稼ぎのような気の抜けた話もあったりして良否の差が大きくなるが、この41話は残念な方である。  今回の宇宙人と怪獣は名前が出ない。怪獣のデザインは一般公募だったそうだが、頭部がカッパ風という以外は元の絵と似ても似つかなくなっている。 宇宙人は、わざわざ来たからには何か目的があったはずだが結局不明に終わっていた。具体的にやっていたのは①湖の魚を捕り尽くした、②近隣の鶏小屋からニワトリを全部持ち去った、③人間1名を殺害した、④飛来したウルトラホーク3号をいきなり攻撃したといったことで、それほどの脅威でもなかったようでもある。地球侵略を企てていたとの証拠もなかったが、地球側としては③④あたりで危険と断定して撃滅してしまったようで、宇宙からの頻繁な侵略で危機感が高止まりする劇中世界では無理もないことではある。 物語としては「日本カッパクラブ」会員のカッパへの思いが中心になっているが特に面白くはない。漫画家はカッパを超自然的な存在と捉え、またSF作家は宇宙人だと主張して対立していたが、しかしカメラマンは実はどうでもよく、例えば単にSF作家との個人的関係でついて来ていただけかも知れない。ラストのカメラマンのどうでもいい台詞は、もうそういう "男のロマン" になど付き合いきれないというようでもあり、人が死んでいるのにまだそんなことを言っているのか、と呆れていたとも取れる。 死んだ男も店名がカッパというだけで実はそれほど関心がなかったのを、店に出入りしていたマニア連中に引っ張られて来ただけだったかも知れない。この男は災難だった。  その他の注目点として、最後にダンとアンヌが湖にボートを走らせるなど、シリーズ終盤に向けて2人の親密さを強調した場面が入れてある。中盤でアンヌが「本当にカッパがいるっていうの?」と言って「うふふ」と笑う場面は悪くなかった。ダンは宇宙人であるから、カッパが実在するかについて人類(日本人)のような予断はなかったかも知れない。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 4点(2024-09-28 20:32:28)
9.  ウルトラマン [31話] 《ネタバレ》 
「吸血植物 ケロニア登場」のエピソードである。敵は南米ボリビアから来た植物人間という設定で、最初がスパイ物風に始まり、最後は大がかりな侵略系の話にまで発展する。いろいろ話を作り込んだようで面白くなくもないが、半端なままで終わるところも多く30分番組にまとめ切れていないようでもある。 また少し浮いた感じの要素として、途中で謎を提示しておいて最後にまとめて種明かしする趣向があったが(電源、可燃性)、これはミステリー調に見せること自体が目的で、本筋とあまり関係ないアイデアを取ってつけたような印象がある。そのために、植物人間の属性として必然性の感じられない特殊能力(発電、精神感応)まで付与しなければならなくなっていたのはよろしくない。 なお悪くない点として、隊員3人が怪しい男に感覚的な反発を覚えたのに対し、ハヤタだけが理屈で割切って高笑いしてみせたのは人格的な弱点の表現かと思った。また「近所の人」の行動は昭和の庶民を思わせた。庭園自慢の場面は富裕層への皮肉か、または貧富に関わらず襲い来る災厄という程度の意味か。  ところで今回最大の疑問点は、南アメリカというならまだしも何でボリビアという国を特定したのかということである。現在ならウユニ塩湖に憧れでもあるかと思うが昔のこととして考えると、この当時、日本でも知られた中南米の革命家エルネスト・ゲバラが活動していた国だったからではないかと思った。 今回のテーマについては最後に博士が語っていたが、「いくら高度に発達しても、血を吸って身を肥やすのはもはや文明とはいえない」という発言は、革命運動の関係でいえば科学技術の発達した大国が、現に中南米を植民地化していることへの批判ではないか。そうすると、今回の植物人間はいわばアメリカ帝国主義の表象だったことになる。その植物人間が短期間で「高等生物」になったのが強烈な欲望のためだとすれば、これもアメリカまたは人類全体への批判と取れる。 本物の後藤隊員は、すでに植物人間との戦いによってボリビアで生命を落としていたのかも知れない。2017年の映画「エルネスト もう一人のゲバラ」にも通じる話だが、しかし政治の話は個人的に好きでなく、小学生向けにも思えないので特別な評価はしない。
[DVD(日本ドラマ)] 5点(2024-09-21 21:19:49)
10.  ウルトラQ [25話] 《ネタバレ》 
着ぐるみ怪獣は出ない。もともとシリーズの企画段階で想定されていた怪奇サスペンスドラマのイメージと思われる。 この回の脚本家はweb上の人物紹介で、脚本家の肩書だけでなく「性教育研究家」とか「フェミニズム活動家・性教育実践家」と書かれていたので、どういう物語になっていたのかと思って見た。しかしそういう方面というよりも、今でいえば子どもの権利に関わる話と取れる。  今回の基本アイデアについては博士が説明していたが、要はいわゆる幽体離脱に科学っぽい理屈を付けただけのようでもある。しかし線路の場面を見ると単純な幽体離脱というよりも、普段見えている "無邪気な天使" と別人格の "無邪気な悪魔" が離脱していたのであって、いわば二重人格の片方だけの幽体離脱に見える。最後はその悪魔が退治されたのではなく元に戻って、身体の中に天使と悪魔が同居する本来の状態になったと思われる。 そうすると、最後のナレーションで「リリーは悪魔っ子ではなかったのです」と言っていたのは妥当な見解とも思われない。ナレーションの別バージョン(初回放送版)では台本段階と同様に、子どもが罪を犯すのは本人の責任ではなく環境のせいだと説明していて、これが本来のメッセージだったはずである。要は悪い生育環境が子どもの中の悪魔を発現させるということだ。 台本によれば魔術師は実の父親ではないそうで、さらに「ママ」も不明とすれば、魔術団が孤児に衣食住を与えて働かせていた状態と思われる。魔術師は誠心誠意少女を世話していたようだが、やはり子どもを育てるにふさわしい環境ではなかったらしい。最後は少女も笑顔でハッピーエンド風には見えたが、基本は何も変わっていなかったということではないか。  なお台本を読むと、映像化の際の変更や省略により不都合が生じたところがあるのがわかる。例えば博士が「カタプレシー」と言ったのは「カタレプシー」(強硬症)の単純間違いだろうが、これは直前の公演内容を台本通りに映像化しなければ意味が通じない。 また中国人のチン(珍)とは少女の髪を褒めた人物のことだが、省略された台詞によればその後の練習中に事故で死亡したとのことで、その結果として翡翠の装身具が少女のものになったとされていた。なおこの珍が簡単には死なないと言った場面や、カメラマンの新妻が未亡人になるという笑えない冗談は、その後の展開を予告する不吉な台詞になっていた。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 5点(2024-09-21 21:19:47)
11.  ウルトラQ [22話] 《ネタバレ》 
特殊な蝶の毒で人間が巨大化してしまった話である。ただの人がそのまま巨大化するのは「戦慄!プルトニウム人間」(1957米)と「巨人獣 プルトニウム人間の逆襲(1958米)からの流れと思われる。場所は長野県の蓼科高原から八ヶ岳に入って行った山中とされているが、何で日本に変な蝶がいるかの説明は特になかった。 モルフォという蝶は、見た目が美麗なわりに動物の死骸などにたかるという話もあって不気味とはいえる。話としては似ていないが、後年の特撮TV番組「怪奇大作戦」第2話「人喰い蛾」と並んで、鱗翅目の昆虫は気色悪いと思わせる話になっている。毒を持つものもあるそうだが、食った場合に毒になるという意味であって人間は食わないので関係ない。 今回は映像面がなかなか好印象で、女性が山中で男を発見した場面では、単に野生化しただけでなく巨大化していたことを引きで見せたのがよかった。またその後に山間の農村に来て、わざわざ石垣を崩しながら歩いたり、半鐘台と並んで見せたりする場面は印象深い。巨人がなぎ倒した木も、ちゃんと高木に見えるものを植えてあるのは感心させられた。  物語に関して、最後のナレーションを素直に受け取れば、人は愛をどこまで貫けるのかというのが重要テーマのようではある。しかし相手の男が、一度騒ぎを起こして顔が売れてしまったからには今後いつまでも世間で怪物扱いされそうで、以前のような関係に戻れるのか怪しい気もする。本人の言った「もうこれ以上私を苦しめないで」(山へ帰れ)という状態に再度陥ることもあるのではないか。 この時代なら、報道機関が写真を撮りさえしなければ映像記録も残らなかったわけだが、カメラマンが友人の切なる思いにつけ込んで特ダネ写真を撮り、それで友人を苦しめる側に回ってしまったというなら皮肉な話ともいえる。制作側がそういうことを考えていたのか不明だが、本人も罪悪感がなくはなかったと取れる場面はあった。  登場人物としてはゲスト出演の中真千子さんが、普通に可愛かったり戦慄の表情だったり厳しい顔できりっとして見えたりで、特撮映像と並んで今回の見どころになっている。また巨人役の野村浩三氏は、主役を務めた「大怪獣バラン」(1958)よりこっちの方で顔が売れているかも知れない。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 6点(2024-09-21 21:19:44)
12.  怪奇大作戦 [2話] 《ネタバレ》 
幼少時にはかなりビビらされるエピソードだった。序盤で裏切者が殺される場面などは人の怖さもあって洒落にならない。「人喰い」といいながら食ってないではないかという程度のことは小学生でも思っていたが突っ込む気もしなかった。 恐ろしい細菌を人為的に植え付けたガということなので、本来は無害だったわけだが何という種類なのか設定が明らかでない。大型で青いのでオオミズアオかと思っていたが翅の形が違うようでもある(尾など)。  今回は「巨大な外国資本」が、邪魔な国内自動車メーカーの社員を次々殺す(巻き添え複数)というのが恐ろしい話でオトナ感覚だが、さすがに日本企業はここまでしないだろうという前提だったらしいのは常識的で穏当といえる。犯行グループの車がVWだったので、そっちの方かと一瞬思わされるのは「偽装」かも知れないわけで、やはりここまでするのはあっちの方だろうと思ったりする。 またいま見ると意外に笑わされるところもある。設計主任の自宅で、幼子の眠るベッドの傍らにガがいたのは非常に嫌なシチュエーションであって、時計が9時で鳴るとか父親が呆然としてつぶやくとかミルクの滴が落ちるとか扇風機が首を振るとかで緊迫感が演出されていたが、玩具が鳴り出したのはやりすぎのようでかえって笑ってしまった。  ところで本来この回は第1話として制作されていたが、怖さを増すため特撮場面を追加撮影したことから、放映が遅れて第2話になったとのことだった。その追加前の版(初号試写版/パイロット版/ファーストプレビュー版)が現在はDVDなどで公開されているが、見ると追加の代わりに削除された場面が結構面白い。 特にもとはレギュラー紅一点のさおりちゃんの出る場面が多く、本来は序盤でコーヒー出し、中盤でチョウの採集場面があり、それが終幕場面のコーヒー出し+チョウ散乱につながる形になっていた。削除された場面では、さおりちゃんの人柄や他の人物との関係性も描写されていて、これがなくなったのは非常に残念だ。特にさおりちゃんに対する警部の態度には共感した。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 6点(2024-09-21 21:18:54)
13.  ウルトラマン [39話] 《ネタバレ》 
最終回なので「地球最後の日」の雰囲気を出している。パリの総合本部では、敵が日本に向かって来たのをいいことに「健闘を祈る」とだけ言って日本の科特隊とウルトラマンに押し付けたかのようで、誰も助けに来ないのかと恨み言を言いたくなったが、日本の科特隊としてはこれで本気度が倍加したらしい。 結果としては、国際組織が逃げてウルトラマンも負けた相手を日本の科特隊があっさり撃滅してしまい、今後は人類自ら地球を守る決意を見せるエピソードにはなっている。しかしそれにしてもちょっとウルトラマン自体が弱いという印象だった(国際社会も非情だ)。 なおハヤタが第1話からの記憶を失っていたのは残念なことだった。外見的にはハヤタ1人でも、実は心の中でウルトラマンといろいろ交流があったのではと思うわけで、それが全部忘れられたとすれば寂しいことだが、まあウルトラマンの方が覚えていてくれればそれでいいか。  ところでゾフィがハヤタに命をやると言っていたことからすると、地球人もウルトラマンも命は共通のものだということがわかる。またウルトラマンが倒れてから過去の戦いが映されるのがいわゆるパノラマ視現象(走馬灯)ということなら、ウルトラマンの種族も臨死体験は地球人と同様ということになるか。命の持ち運びとか寿命が万年単位とかいうのは別として、意外にウルトラマンの種族も死生に関わることでは地球人と話が通じるのかも知れない。 最後のナレーションによれば、ウルトラマンが地球に来た目的は「人類の平和と正義を守るため」だったそうだが、その後の言葉とあわせて聞けば、凶暴な怪獣たちを倒す=平和を守る、宇宙からの侵略者と戦う=正義を守る、という整理の仕方だったと思われる。ウルトラマンが「正義の味方」ということ自体は間違いないにしても、それだけでなく怪獣退治も含めて「人類の味方」だったというのがより実態に近いのではないか。「そんなに地球人が好きになったのか」とも言われていたが、人類側としてもまことにありがたいことだったと思わなければならない。 あとは人類が自分で何とかするとしても、現実社会のことを考えれば本当の敵は内にいるのではないかというような皮肉もいいたくなる。しかしそれは大人になってからの話ということで、これを見ていた子どもらは、まずは自分も誰かのための役に立ちたいという気持ちを持ちつづけてもらいたいと言われていたということだ。
[DVD(日本ドラマ)] 5点(2022-12-31 10:24:33)
14.  ウルトラマン [37話] 《ネタバレ》 
最初にピグモンが出現した玩具売場は「(東京都中央区の)銀座の真ん中にあるデパート」だそうだが、松屋デパートとすればその後にチブル星人も現れた場所ということになる。東京の視聴者には馴染みの場所だったかも知れないが地方民には縁がない。  今回はイデが「科学特捜隊もウルトラマンさえいれば必要ない」と嘆くのが有名なエピソードだが、突然そのように思いつめたきっかけが見えないのは不自然だ。また今回もピグモンは最初から人間側に助力していたわけで、それを完全無視してウルトラマンだけいればいいというのは失礼だろうと思ったが、しかし終盤まさにそのことに気づかされたイデが一念発起した、というのがドラマチックなところと思われる。 今回は新登場の怪獣のほか、再登場の怪獣も複数いて豪華キャストだが、そのような「怪獣総攻撃」のエピソードにこういうドラマを組み合わせる必然性があったかに関しては、まずはドラコとかテレスドンといったそれぞれ名のある連中をザコ扱いして、人の力だけで倒してみせる展開を用意するためだったとはいえる。また再度ピグモンに活躍してもらうのも題名につながる重要ポイントである。 ラストの大酋長にはさすがのウルトラマンも手こずったようで、羽根攻撃の対処にスペシウム光線を相当使ってしまって赤ランプがついたところをイデが倒した形だったので、ハヤタの言う「持ちつ持たれつ」という感じには一応なっている。ただやはりどうしてもウルトラマンが少し無理してイデに花を持たせた感じもあり、この件はこの少し後の最終話に持ち越しになった形だった。 なお今回は人事を尽くしてこそウルトラマンも助けてくれるという考え方が出ていたが、ここから「帰ってきたウルトラマン」にもつながっていったということかも知れない。  ほか雑談として、劇中の科学特捜隊の活動のうちウルトラマンの力を借りないで済んだため、番組で取り上げられなかった事件が相当数あったとすればイデもこういう気持ちにならなくて済んだはずである。しかしそうでなかったということは、実際に起きた事件のほとんどがウルトラマンの活躍で解決されたことになり、番組ではその1事件を1話に編集して1週ごとに放映していたらしい。ウルトラマンが出たものの、大したことはなかったのでTVでは割愛された事件もあったかどうか。
[DVD(日本ドラマ)] 5点(2022-12-31 10:23:11)
15.  ウルトラマン [33話] 《ネタバレ》 
今回登場の宇宙人は、「暴力は嫌い」と言いながらも序盤から平気で破壊工作をやっている。侵略先の住民を利益供与や脅しで従わせ、またいきなり実力行使ではなく武力で威嚇するのは人類社会でも普通にあることだが、その上で全面侵攻にまでは至らなかったのは確かに力の信奉者ではないらしい。ウルトラマンとは互角の勝負であって、敵わないと思って逃げたのではないという点は重要かも知れない。 ただこの宇宙人が地球を奪う正当性が、議会とかならともかく少年一人の承諾だけで得られるという考え方は全く筋が通らない。何でこの少年でなければならないのかも不明であり、「サトル君は素晴らしい地球人だ」などという言い訳のウソ臭さには子どもでも騙されないと思われる。しかし思うにこれはこのエピソードの都合上あえてこういう無理を通したのであって、要は劇中少年の果たした人としての責務を、視聴者の一人ひとりがそれぞれ負うことを明瞭にするためだったと思われる。これこそが民主主義社会の本来あるべき姿を示したともいえる。 そういう前提で見れば、自分の食い物を他人に分ける気もないわがままで小癪なガキが「ぼく一人が…嬉しくなんかない」と啖呵を切るのには泣かされてしまう。それなりに幸せに暮らす人々と一緒に、自分もそれなりに幸せに生きたいというのが普通一般の人の願いであって、周囲の人々を見捨てて(踏みつけにして、従わせて)自分だけの利を得ようとしないでもらいたいという思いがここに感じられる。当時の大人に鼻で笑われていた子ども番組に、こういう真直ぐなメッセージを込めた真摯な姿勢には頭が下がる。 ラストでは「メフィラス星人は、今度はあなたの心に挑戦して来るかも知れないのだ」という脅し文句が出ていたが、これを見ていたガキ連中が今頃どうしているかと思うと悲観的になる。メフィラス星人のようなのにやられっ放しではないかと思わなくもないが、まあ世の中全部がそうでもないはずだと思っておく。  なお今回は、宇宙人よりむしろ「巨大フジ隊員」が見どころになっている。「ウルトラQ」第17話の時と立場が逆なようだが、実際はどちらも男連中は普通のサイズのままで、この人の方がその場の都合で縮小されたり巨大化させられたりするのは気の毒だ。オヤジ警官に拳銃で撃たれていたが、科特隊の制服だったので穴は開かなかっただろうと思われる。
[DVD(日本ドラマ)] 6点(2022-12-31 10:21:33)
16.  ウルトラマン [18話] 《ネタバレ》 
今回登場は「ザラブ星人」と表示されるが肩書はついていない。「凶悪宇宙人」というのは後付けの称号だったらしいが、凶悪というよりいかにも胡散臭い雰囲気を出している。侵略の前工作で「放射能」を含む霧を東京に出していたが、それで「東京は数時間以内に死の街になる」というのではやりすぎで洒落にならない(歴史的な大惨事だ)。この頃の日本ではまだ放射線の脅威に対する認識が甘かったのか。 科特隊の面々はさすがに疑念を解いていなかったようだが、対して政府や御用学者のようなのが頼りにならない連中で、胡散臭げな宇宙人にまんまと手なずけられてしまっていた。国際組織から国家機関への移管を求めて役人が押しかけて来た場面は国家エゴを形にして見せていて生々しい。こんなのをよく子ども番組(小学校低~中学年向けくらい?)で見せるものだと思うが、これを見て国家権力を批判していればいいというよりも、劇中少年の見せた無垢で純粋な心の方に目を向けるべきとはいえる。これを見た子どもらが年を取ってからも、世間の醜さはどうでも自分は自分として正しいことをする、と思う真直ぐな心を持っていられるかの問題なのだと真面目に理解しておく。 しかしそれにしても泣けばいいというものではないのであって、乙女の涙ならまだしも生意気なガキでは効果が怪しいが、ここは人事を尽くしてこその奇跡という含みがあると思っておく。締めの「やっぱりウルトラマンは正義の味方だったんだ」という言葉には文句をつけようがない。誰が茶化そうが貶めようがウルトラマンは正義の味方である。  登場人物に関して、ホシノ君は第一線での活動を志向していたにもかかわらず、結果的にフジ隊員の助手を命じられてお茶くみまでやらされていたが(女子供という括り)、結果的に大手柄を挙げていたのは年少の視聴者向けの趣向である。一方でハヤタが大事なものを単純に忘れて行ったという展開には呆れるが、そもそも今回のハヤタは宇宙人に先手を取られて狼狽したりして人間的な顔を見せていて、常日頃からウルトラマンなのではなく普通に人として生きているらしいと思わされた。 ほかザラブ星人の化けたフジ隊員はいつもより怪しげな美貌を見せている。ニセ・フジ隊員も、ニセ・ウルトラマンと並ぶ悪のキャラクターだった(今回は巨大化しない)。本物のフジ隊員は年少者をさりげなくかばう気遣いを見せていた。
[DVD(日本ドラマ)] 5点(2022-12-31 10:19:51)
17.  ウルトラマン [1話] 《ネタバレ》 
現在もまだ続いているシリーズの記念すべき第1回である。 史上初の巨大ヒーローであり、怪獣ばかりが出ていた従来の特撮怪獣物からすれば常識外の存在だったはずだが、それにしては人間側の驚きが表現されていない。ウルトラマンを見た科特隊員が、何も疑問を持たずにいきなり応援していたのは直前のナレーションでも聞いていたからか。視聴者にしても事前のアナウンスで、ウルトラマンとはこういうものと知っていて何とも思わなかったかも知れないがちょっと物足りない。  背景設定に関するナレーションの説明によれば、「科学特捜隊」とは「国際科学警察機構」という国際組織の日本支部に置かれた特別チームであって、ウルトラセブンでいう地球防衛軍の極東基地にいるウルトラ警備隊と同じような位置付けになっている。本部がパリなのはなぜかと昔から思っていたが、実在の「国際刑事警察機構」(ICPO)の本部が当時はパリにあったことからの連想かも知れない。 科特隊本部内の透明地図を見ると、本部の位置を示しているらしい赤丸が練馬区と杉並区(と中野区?)の境界あたりに付いている。円谷プロなので世田谷区かと思えばそうでもなかったようだが、ちなみにその後に怪事件があったと埼玉県警から通報があった場面では、なぜか群馬県館林市の付近に赤丸を付けていた(その日の全国最高気温の場所?)。あまりこの透明地図は当てにしない方がいい。  ドラマ的には、初回なので仕方ないかも知れないが半端な感じになっている。テープレコーダー(オープンリール式)を使った意図が不明で、命令を素直に聞いてよかったという意味になるわけではなく、あるいはフジ隊員の精神状態が正常であることの証拠にもなっていない。 初回なので主要人物が一通り出ている中で、特にフジ隊員とホシノ君のやりとりの部分が大きかったが、しかしこれも何がいいたいのかよくわからない。科特隊は規律が厳しいのか緩いのかが最終的に不明瞭だったが、大人の社会はそんなものだということか、あるいは建前よりも実態に即した臨機応変な動きが優先するということなのか。要は硬軟あわせ持った組織ということだと思っておく。 なおフジ隊員はイデに「所詮は女の子ですからね」と言われていたが、ジェット機(それもVTOL機)の操縦を普通にしているなどそもそも常人にできることではなく、これはイデの偏見というしかない。
[DVD(日本ドラマ)] 4点(2022-12-31 10:17:54)
18.  ウルトラセブン [45話] 《ネタバレ》 
実相寺監督作なので少し奇を衒った風に見える。 野球中継の聞こえる仕舞屋のような家に宇宙人がいて、変になれなれしいのはメトロン星人(第8話)と同類かと思わせる。終盤の戦いでは着ぐるみの格闘はほとんどなく、主に特殊効果で光の交錯による激闘の印象を出していた。音楽面ではM52(ディヴェルティメント)、M50(Sieste)、M51(フルートとピアノの為の協奏曲)といったクラシック風の曲を多用している。  今回の主人公は世田谷区在住で町工場に勤める青年である。ウルトラセブンの実在する世界を市井の庶民の目から見たエピソードらしい。 彼が趣味の天体観測に没頭し、仕事が疎かになっていたのは世間的には駄目な奴である。しかし彗星の発見者になったりすればその辺の連中を見返してやることもできるわけで、そうでなくても今回の思いがけない手柄により、近隣住民にも賞賛されていたのは名誉なことだったはずである。 それでも素直に喜べなかった理由はよくわからないが、もともと彼は人間嫌いでこの世界からの逃避が究極の夢だったらしく、その夢が実現するかと思ったとたんに失われた落差で、もう世間的な名誉などどうでもよくなってしまったのか。あるいは、清らかだと思った「星の世界」も地球からそう見えていただけの幻影のようなもので、実は覇権拡大の野望が渦巻く汚れた世界だったことに失望したのかとも思われる。終幕場面は、夢から覚めたあとの本当に何もない日常を、彼がただ生きなければならなくなったことの表現かも知れない。 なお劇中では専門家がアマチュアを小馬鹿にする様子が見えていたが、少なくとも天体観測の分野では、彗星発見のようにアマチュアの働きが評価される機会もなくはなかったはずである。しかしあえて皮肉をいえば、アマチュアの立場で評価されるほどのことはめったに起こらないので、プロの仕事で評価されるようしっかり務めろ、という教訓も込められていたかも知れない(不明)。 ちなみに少年の発言にあったように、恋人ができさえすればそれだけで今の現実が全く別の輝かしい世界に変わる可能性もある。しかしそれこそがこの青年には最高に難しいのだとは思われる。  ほかレギュラー紅一点のアンヌ隊員は甘ったれた様子もなく冷静な表情で職務に専念していたが、それはそれで可愛く見える。今回は謎解き役を当てられていて、少しいいところを見せていた(言っていたこと自体は意味不明だが)。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 7点(2021-07-31 08:54:05)
19.  ウルトラQ [11話] 《ネタバレ》 
今回登場のバルンガは土星出身と言われていた気がするが、改めて見ると土星産ということでもなく、たまたま地球へ帰る土星ロケットに付いて来ただけらしい。「宇宙空間をさまよい、恒星のエネルギーを食う生命体」というのは、単純に異星の生物というよりはサイエンスフィクション的な発想である。 造形物としては、最初に机の上に浮いていた姿はユーモラスだった。この時点では「風船虫」と言われていたが、その後の車内の場面でも、まるきりつぶれたゴム風船のようなのを引っ張り出した感じだったのが可笑しい。しかし最終的に、巨大化した姿で東京タワーの近くに浮いていたのは絵として悪くない。その辺の空にただいるだけで、人類文明に破滅をもたらす存在ということに独特の風情が感じられる。 背景音楽としては不穏なピアノ音が印象的だった。またドラマ的には、一平という男が後半で危機に陥ることとの対比なのか、前半で江戸川記者と同級生的な仲のよさを見せていたのは和んだ。  社会的なテーマがあるかはよくわからなかったが、単純な現代文明への批判かと思ったらそうでもなく、むしろ批判だけしてどうすべきかを考えない態度への批判が込められていたように見える。 今回登場の訳知り顔の博士は、個人的事情もあって当初は世間を蔑むように神の警告とか反省しろとか皮肉を言うばかりだった。しかし現実の問題として電気が来なくなれば、救える命も失われるという人として見過ごせない事態が生じてしまう。また自然現象に逆らうのは無意味だなどと突き放したことを言っていたが、人間の立場としては自然現象だろうが天罰だろうがやられ放題でいいことにはならない。これに対する江戸川記者の直言で、ひねくれた老人の心も結果的に揺らいだのかも知れない。 またその江戸川記者の関係では報道の使命といったことに触れていたようでもある。当然ながら報道自体に価値があるのでなく、報道がどうやって人の役に立つかが大事ということか。「いいじゃありませんか」のところは人の情に寄り添ったいい発言だった。  ほか雑談として、この当時はあったが今はあまりないだろうと思うものとして、博士がいた和室がこの家の空き部屋を借りていたものだとすれば、これが本来の意味での「下宿」ということになる。また最後の電車の場面は地下鉄が神田川を斜めに横切る場所だろうが、この付近も現在はかなり雰囲気が違っているようである。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 5点(2021-07-24 08:18:36)
20.  ウルトラセブン [8話] 《ネタバレ》 
監督のせいで見た目が非常に特徴的なエピソードになっている。 冒頭、かよわい女性を痛めつける場面は子ども番組とも思われず、いかにも戦後社会に好まれた暴力性と狂気の表現になっている。その後の展開は迅速で、寺院の参道ですれ違う人々の断片的な会話から事情が知らされていくのは手際がいい。映像的には、メディカルセンターで白丸4個それぞれに人の頭4個が入っていたのが印象的だったが、そもそも室内照明を落としているのでいつもと同じ場所とは思えない。 終盤のアパートでは、ネコがニャンと言って逃げていった場面が好きだ。またちゃぶ台の上に茶碗があったが中には何も入っていなかったようで、これはわざわざ出したのでなく前の客が来た時のものを洗わずに放置していたということか。敵の宇宙人は偉そうな物言いだったが案外話好きな奴だったのかも知れない。  ところで、この番組の初期エピソードは子ども向け学習教材のように見えることがあるが、今回の物語で学ぶべきは人間社会を成り立たせている基本原理のようなものである。つまり人間が安定的な社会を形成するためには最低限必要な共通認識(人を害してはならないなど)があり、これを自分が守るとともに、他者も同様に守っていると信じられることで安全かつ安心な社会ができるのだということである。 これは日本ではとっくの昔に実現しているはずだが、しかし劇中のように誰が自分を害するかわからない状況になれば、自分を守るために皆が疑心暗鬼に陥ってしまい、人々の安全を担保するはずの社会自体が弱体化または崩壊してしまうかも知れない。例えばアメリカでは銃規制が緩いことで多数の人々が一度に殺されたりするのが不安要因であり、またいわゆる失敗国家などで治安が悪化するのも安全・安心が脅かされた事例といえる。この「安全」「安心」を確保する手段を、このエピソードでは「ルール」「信頼」という言葉で説明していたわけである。 そういう生真面目な話だったにも関わらず、「交通ルールを守る家」の札で茶化して矮小化してしまい、また最後のナレーションで「信頼」の意味をわざわざ歪曲していたのも大衆受けを狙って皮肉めかして格好つけただけのようで大人気ない。台本通りでは面白くないのはわかるとしても、この件で自分としては今回の監督が許せない。というか嫌いだ。レギュラー紅一点のアンヌ隊員をキレイに見せないのも気に入らない(なぜか胸を目立たせていたが)。
[ブルーレイ(日本ドラマ)] 7点(2018-12-31 23:22:06)
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