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ザ・チャンバラさんのレビューページ
プロフィール
コメント数 32
性別 男性
年齢 44歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  ザ・ミスト 《ネタバレ》 
2007年のフランク・ダラボン版は密室で自制心を失っていく普通の人達の恐ろしさや、映画史上最恐クラスの鬱エンディングなど素晴らしすぎる作品であり、生涯見てきた映画の中でもトップ5に入るほどの重要作なのですが、そのダラボン版から10年を経て制作された本作にも興味津々でした。 世間的には非常に評判が悪く、シーズン2以降の制作がキャンセルされるほどの不評を買った作品なのですが、私は「どうやってもダラボン版を超えることは不可能」という期待値で見たためか、これが物凄く楽しめました。少なくとも、アメリカドラマの標準作のレベルにはちゃんと達していると思います。 ダラボン版との最大の相違点は、病院組・教会組・ショッピングモール組と舞台が3つに分かれ、多少の移動の自由もできたことから街全体の物語になったことであり、それぞれの舞台で狂気が同時多発的に発生していくことから、特に後半の怒涛の勢いには圧倒されました。ラスト4話は平日夜にも関わらず一気見してしまったほどです。おかげで翌日の仕事は上の空でしたが。 こうした舞台の広がりが最大限に活かされたのが最終話であり、3つの舞台の登場人物達が一堂に会したことによる最高潮の盛り上がりや、それまで閉鎖空間でそれぞれがおかしくなっていたところに、別の舞台の人間がやってきたことで「お前ら、そんなバカなことで揉めてんの」とお互い相手に対しては冷静な視点での批評が発生するという面白さがありました。特に、婆さんのインチキ宗教にハマっていたコナー署長が、舞台を変えて第三者と一緒にこの婆さんの説教を聞くとただの戯言であることに気付き、こんなものに自分は熱狂し、何人も殺した上に、息子まで失ったのかと呆然とする様には、「ほら、みたことか」という歪んだカタルシスがありました。この辺りの展開は、同じく一時期の混乱から冷静な判断能力を失って取り返しのつかないミスを犯した父親という点で、ダラボン版へのオマージュとして解釈しました。 問題点は、まず霧の規則性がよく分からないということ。巨大昆虫という分かりやすい脅威が発生していたダラボン版とは違い、本作の霧には潜在意識を具現化する機能があるようなのですが、苦手な知人や故人といった従前の人間関係に起因する脅威に襲われる者もいれば、虫や大蛇といった単純な脅威に襲われる者もいる。霧に入ってほんの数歩で絶命する者もいれば、霧の中でそこそこの距離を移動しても平気な者や、脅威に打ち勝って脱出できる者もいる。このように描写にムラがあるため、霧に入ることがどれほど危険なことなのかがピンときませんでした。 また、悪い人間は大勢いる一方で、感情移入可能な人間がほぼいないために、特に中盤には見続けることが苦しい回もありました。ヤク中の女なんて身勝手な行動が多くてイライラさせられるのですが、通常のドラマでは、前半で足を引っ張っていた人物が後半で大活躍したり、こういう人物のイレギュラーな行動が大きな転換点を作り出したりするものですが、彼女については一貫してただ邪魔をしているだけの味方。物凄くイライラさせられました。その他、「幼い娘を亡くした母親から自分は相当な恨みを買っている」という重大な認識を持たずにフラフラと勝手な行動を繰り返し、案の定危険にさらされる主人公の娘や、意図を説明せずに強硬策をとるために娘やその彼氏の反発を受けて余計に事態を悪化させる主人公の嫁など、バカな人がバカなことをしでかした結果として物事が進んでいくという、この手の作品でやって欲しくない展開が多いので疲れてしまいました。 あと素朴な疑問なのですが、3つの舞台において物資面でもっとも恵まれているはずのショッピングモールでまず食料が底を突いたのはなぜなんでしょうか。それに付随して、食料が底を突き、このままここに留まっても後先はないことが分かりきっている状態で、主人公一家をモールから追放する、しないでひと悶着している様が理解不能でした。 前述の通り、本作はシリーズ継続がキャンセルされたのですが、まだまだ多くの構想はありますよという状況で終わってしまったことは残念でした。アラも多かったものの、致命傷レベルの問題ではないのでシーズン2以降で軌道修正はできただろうし、できれば続きも観たかったです。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-11-04 01:02:02)(良:1票)
2.  マインドハンター 《ネタバレ》 
ジャンルとしては猟奇殺人ものであり、かつ刑事ものではあるものの、犯人との息詰まる攻防戦や視聴者の目を楽しませるような大捕り物は皆無。本編のほとんどが会話劇である上に、視聴者をあっと驚かせるような展開があるわけでもなく、どこまでも地味な作風です。他の海外ドラマのようについつい一気見させられることもなく、1か月をかけてようやく全10話を見終わりました。 ではつまらなかったのかというと決してそういうわけではなく、不思議な魅力に満ちた作品だったと言えます。これはおかしな見方なのかもしれませんが、主題である猟奇殺人や犯罪プロファイリングにはほとんど興味を引かれなかった一方で、主人公ホールデンのサラリーマン的な面に物凄く感情移入しながら見ることができました。 ホールデンはFBI捜査官ではあるものの、アクション映画に出てくるようないかにもなエリート捜査官というタイプではなく、むしろ小役人のような雰囲気を漂わせています。そんな彼がプロファイリングを用いた捜査に着目し、ベテランではあるがほぼ窓際状態にあるビル捜査官と組んで心理捜査課を立ち上げるのですが、これがビジネスにおける社内ベンチャー立ち上げのようなのです。出会うほとんどの人に新しい試みを理解されないばかりか、「凶悪犯は人間の屑だ。そんな屑の心理を理解しようとすること自体が良くないことだ」とその趣旨を曲解された上で批判まで受ける始末であり、立ち上げ当初はかなり苦労させられます。この辺りは、新規事業立ち上げに参加した私自身の経験とかなり重なる部分もあって、他人事とは思えないほど感情移入させられました。 中盤以降はそんな彼らの努力が成果を挙げ始め、犯人逮捕への貢献や、他の機関からの注目を集め始めます。人手を増やしたくて募集をかければ誰を落とそうかと迷うほど採用希望者が殺到するのですが、これもまたベンチャーっぽいんですよね。そんな中でホールデンは自身の編み出した手法にかなりの自信を持ち、内面から溢れ出てくる意欲や行動力を抑え切れなくなります。何にでも「俺は俺は」と口を挟み、「現場での臨機応変」という大義名分を盾に上司からの指示や組織の決まり事を無視するようになり、さらには仕事での勢いがプライベートにまで悪い形で波及し、全方位に対してウザい奴になるのですが、恥ずかしながらこの辺りの心境も私はよく理解できました。仕事が乗りに乗っており、客観的な成果も出ている時って24時間アドレナリン出っ放しで、周囲に対する態度もついつい自己中心的なものになっていきます。本人は有能な自分が関与することが全体のためになっていると思って行動しているのですが、「俺の言うことだけ聞いてればいいんだよ」という本音を隠しもしない態度が周囲との軋轢を生んでおり、味方をどんどん失っていく。社会人をやっていると、こういう時期ってありますよね。 ホールデンのそうした逸脱がはっきりと露呈したのが第8話であり、シリアルキラーや犯罪捜査とは直接関わりのない異色回でありながら、私はこれが現時点におけるベストエピソードだと感じました。授業への協力でたまたま訪れた小学校で校長の異常行動を発見。この校長はサイコパスであり、今止めなければ凶悪犯罪を起こす可能性ありとホールデンは判断します。これまで直感に従い行動して成果を挙げてきたホールデンは今回も自分自身の勘に従うのですが、まだ何の事件も起こしておらず、かつ、社会的ステータスが高く世間一般では「信頼できる人」とされている校長の身辺調査をFBIの権威を行使して実施するなど前代未聞の事態であり、ホールデンは多くの批判を受けます。それでも彼は自身の判断を曲げることはなく、事件を起こしていない校長を社会的な破滅にまで追い込むのですが、ホールデンによって悲劇が未然に防がれたのか、それとも落ち度のない民間人の人生が無駄に奪われてしまったのかは誰にも分かりません。 このエピソードではホールデンの逸脱と同時に、予防の難しさも描かれています。例えば児童虐待やストーカー犯罪で悲劇的な被害が出た際に、児童相談所や警察は事前に相談を受けていたのになぜ防げなかったのかという批判がよく聞かれます。ただしそれは後知恵であって、事前の相談レベルで先を見通すことは非常に難しいし、予防に走り過ぎれば本来は変えてはいけない人生を狂わせる可能性だってある。そうした難しさが見事に描かれた普遍性の高いエピソードだったと言えます。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-12-19 17:20:53)(良:1票)

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