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ザ・チャンバラさんのレビューページ
プロフィール
コメント数 32
性別 男性
年齢 43歳
自己紹介 嫁・子供・犬と都内に住んでいます。職業は公認会計士です。
ちょっと前までは仕事がヒマで、趣味に多くの時間を使えていたのですが、最近は景気が回復しているのか驚くほど仕事が増えており、映画を見られなくなってきています。
程々に稼いで程々に遊べる生活を愛する私にとっては過酷な日々となっていますが、そんな中でも細々とレビューを続けていきたいと思います。

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1.  センス8
8か国9都市でロケーションを行い、イギリス・アメリカ・アイスランドはウォシャウスキー姉妹が、メキシコシティ・ムンバイはジェームズ・マクティーグが、ベルリンとナイロビはトム・ティクバがそれぞれチームを率いて監督し、それらをアメリカにいるJ・マイケル・ストラジンスキーのチームがひとつにまとめあげるという極めて高コストな作品となった上に(一説によると、ゲーム・オブ・スローンズをも超える製作費がかかっている)、複数の感応者がシンクロする部分では同じ場面を各国でバラバラに撮影して編集で繋げるという異常に複雑なプロセスで作られた作品なのですが、優秀なクリエイター達がそれほどのコストと労力をかけて作り上げたことから、かつて見たことがないと言い切れるほどの斬新な作品に仕上がっています。 やはり、ウォシャウスキー姉妹の物語をまとめる力・伝える力は凄いと感じました。映画『クラウド・アトラス』でも複雑に絡み合うエピソードを混乱なく見せるという驚異的な仕事を披露していましたが、本作では主人公8人の個別のドラマが時に交錯し合いながら同時に走り、その上に闇の組織との対決というシリーズを貫く大きなドラマが乗っかっているという、さらに複雑な構成となっています。これを視聴者の側でさほどの苦労をする必要もなく理解できる形にまで落とし込めているのだから驚かされました。 また、SFでありながらセクシュアリティや信仰といった現実社会のテーマが深く描かれているのですが、これらのテーマを視聴者にも理解させ、問題提起をするということにも成功しています。特に性的マイノリティが抱える苦悩をここまでわかりやすく、かつ、感動的に描いた作品はそうそうないと思います。 さらに、『マトリックス』のクリエイターだけあって、バカバカしくもかっこいい見せ場もきちっと作れており、要所要所でエンタメ要素も効いています。リトがワイヤーアクションで銃撃戦を繰り広げる場面なんて劇中劇であることは分かっていても興奮させられたし、ヴォルフガングが親友に重傷を負わせたマフィアに復讐する場面なんて、ベルリンの街中でロケットランチャーをぶっ放すというありえない見せ場ながら、ここまでエモーションが高ぶった場面であれば少々の無茶をやっても視聴者は受け入れてくれるだろうという計算がきちんと働いています。見事でした。 難を挙げるとすれば、チーム戦としてはやや洗練されていないことでしょうか。八者八様の能力で互いの不足分を補い合いながら困難に挑むチーム戦を期待しながら見ていたのですが、チームに貢献するメンバーと貢献しないメンバーがはっきり分かれていた点はちょっと残念でした。アベレージの高い戦闘スキルに加えて窮地の仲間を救うために出張もこなすという行動力も持ったウィル。高い殺傷スキルを持ち、いざという場面での突破口を作る役割を果たすヴォルフガングとサン。得意のハッキングで作戦の立案と後方支援を担当するノミ。基本的に役立っているのはこの4人であり、カフィアスとライリーはトラブルに巻き込まれては仲間に救われてばかりだし、カーラとリトに至っては個人のエピソードが中心で仲間と絡む場面がそもそも少ないという状況になっています。戦闘能力の高い4人にも弱点はあり、戦闘では役に立たなかった残りの4人はその点を補うという関係性があればより良かったのですが、特にカフィアスとライリーは助けられてばかりなので、今んところ要らない人のように見えています。
[テレビ(吹替)] 8点(2018-06-29 19:03:07)
2.  ウエストワールド 《ネタバレ》 
【注意!豪快にネタバレしています】 映像作品では珍しく叙述トリックを使った作品となっており、同時進行で繰り広げられていると思い込んでいたドラマが、実は別の時系列の話でしたという大オチには心底驚かされました。映画を含めても、ラストでこれだけ驚かされた作品は近年なかったと思います。 ただし、本作について覚えているのは最終話の内容ばかりであり、見終わって数週間経ってからこのレビューを書いているのですが、他の9話はほとんど印象に残っていません。大オチのインパクトの強さはもちろんのこと、もっとコンパクトにできた話を10話という尺に拡大したために、中盤が妙に回りくどかったことも原因だったと思います。タンディ・ニュートンがラボで修理担当を手なづける件なんて、何度やってんだよって感じだったし。 世界観の脆弱性も気になりました。肝心のウエストワールドに「実在していたら、ぜひ行ってみたい」と思わせるような魅力がないし、高価なホストを毎日毎日ぶっ殺されて、それを直すために大勢のスタッフを雇っているような高コストのテーマパークがどうやって利益を出しているのかも見えてきません。客は1日4万ドルもの入場料を払わされているとは言え、どう考えてもそれ以上の運営費がかかってるだろという見栄えになっているのです。 また、これは日本版特有の欠点ではあるのですが、局部にボカシを入れるという処理は作品の価値を大きく棄損していました。テーマパーク内では人間同様に生き生きと活動していたホスト達が、バックヤードでは完全にモノ扱いされているという落差を表現するために局部モロ出しカットは重要だったのですが、日本国内でのリリースを担当しているワーナーはそれを隠しちゃっているのです。暴力描写や性的描写が多く、局部にボカシさえ入れれば視聴制限が大幅に緩和されるという素材でもないのに、なぜこんな無粋な加工をしたのか不思議で仕方ありません。
[テレビ(吹替)] 7点(2018-05-24 18:46:22)
3.  ゴッドレス -神の消えた町- 《ネタバレ》 
『マイノリティ・リポート』や『LOGAN/ローガン』等の名脚本家として知られるスコット・フランクが劇場用映画として企画していたものの、プロデューサーのスティーヴン・ソダーバーグから「人物描写を掘り下げるためにはドラマフォーマットの方が良い」という助言を受けて7話のミニシリーズとして制作したという本作。 合計7時間かけてひとつのドラマが描かれるという点が本作の特色であり、各エピソードに見せ場が仕込まれている他の連続ドラマとは根本的に異なった作りとなっています。この作りが、主に回想で構成された中盤辺りで猛烈に退屈させられる原因にはなっているものの、他方で最終話に向けて一直線に盛り上がっていき、ピークに達したところで大銃撃戦が始まるという娯楽作として理想的な流れを生み出せており、一長一短ある構成だったと思います。 内容は、流れ者がならず者集団と戦うという西部劇としてはオーソドックスなストーリーがあり、流れ者と女主人との交流や、腰抜け扱いされていた保安官の復権といった、これまたオーソドックスなサブプロットがあるという、まさに王道に従った内容ながら、炭鉱事故でほとんどの男が死に、女性だけとなった集落が舞台という点にオリジナリティを入れてきています。王道と同じなのに王道とはちょっと違うというこのサジ加減は絶妙だったと思います。 また、悪役のキャラが非常に立っているという点も本作の強みです。一つの集落を皆殺しにし子供にも容赦をしないという凶暴性と、行動パターンの不可解さとで、次の瞬間にどんな恐ろしいことを仕出かすのかが分からない大悪党・フランク・グリフィンがとにかく素晴らしすぎるのです。その生い立ちは凄惨を極め、実の親を惨殺したカルト教団が育ての親となったことでその精神や価値観を完璧にぶっ壊されて大悪党となったものの、また別の場面にて自身の身の安全も顧みずに天然痘患者の介抱をする様を見るに、本来の彼は善人であったことが伺い知れます。この複雑な悪党を演じるジェフ・ダニエルズのはまり具合も素晴らしく、20年前には『Mr.ダマー』でジム・キャリーと一緒にバカしてた俳優とは思えないほどの重厚感がありました。 他方で流れ者のロイ・グッドは類型的なヒーローにとどまっているため、やや魅力薄。ちょっと前までグリフィンの手下として悪行にも手を染めていたはずなのに、恐ろしい部分を全然覗かせないので平板なキャラクターとなっています。善人になろうと努力するものの、ふとしたきっかけでかつての凶暴性を垣間見せて周囲をドン引きさせるようなエピソードがあっても良かったと思うのですが。また、父親のように慕っていたグリフィンの元を離れた経緯もはっきりと説明されないために、二人の間のドラマがうまく流れていませんでした。
[テレビ(吹替)] 7点(2018-05-24 18:45:32)
4.  TRUE DETECTIVE/二人の刑事 《ネタバレ》 
「刑事」に該当する言葉をご丁寧に二つも重ねた邦題が示す通りの内容でした。 家族を失った悲しみから生への執着を失い、どんな危険な捜査でも厭わなくなったはみだし刑事・ラストと、職場での評価も家庭人としての評価も安定した平均点刑事・マーティン。『リーサル・ウェポン』のリッグスとマータフを彷彿とさせる、この手の刑事ドラマとしては類型的ともいえるコンビなのですが、この二人のドラマを見せるうえでの過去パートと現在パートを行き来する構成がなかなかの効果を上げています。 過去パートはソリの合わなかった刑事が徐々に信頼関係を育みながら猟奇殺人に挑むという、これまた刑事ものとしては類型的な内容ではあるものの、現在パートにてどうやら二人の関係性は断絶しているらしいことが分かり、何か重大なことがあったことが暗示されるために、物語への興味をかなり強く惹かれました。 また、ラストとの関係性の中でマーティンが悪い意味でも変わっていく様も見どころとなっています。家庭と仕事の間に愛人を挟むことで心のバランスをうまくとっていたマーティンが、ラストに引っ張られる形で仕事に没頭するようになり、酒と女に弱く、また理性を失うと暴力的になるという弱みがどんどん露になっていきます。マーティンってしょーもない男だなぁと思いつつも、仕事を頑張りすぎていることを奥さんから責められる様は可哀そうだなぁとも思いました。しかしこのマーティンがやたらモテることは気になりましたが。奥さんがミシェル・モナハン、最初の愛人がアレクサンドラ・ダダリオ、バーで逆ナンしてくる二番目の愛人がリリー・シモンズって、なんで美人ばっかなんだよ! 配役も面白く、はみだし刑事にマシュー・マコノヒー、平均点刑事にウディ・ハレルソンと、普通なら逆でやらせるべきトリッキーな配置がハマっています。突如演技に開眼した当時のマコノヒーの大胆な演技と、その受け手となるハレルソンのベテランらしい安定した演技の組み合わせが、見事に化学反応を起こしているのです。 物語はゆっくりと始まるのですが、第4話の目の覚めるような大銃撃戦からは、ものすごい勢いでドラマ全体が疾走を始めます。あまりに情報量が多いため一度見ただけでは全体を把握できず、たまに固有名詞を見失うこともありましたが、大筋はさほど難しくないので問題はありませんでした。 問題点は、ミステリーとしてはすっきり終わってくれなかったことでしょうか。捜査の過程で、地元の政治や行政機関にまで深く入り込んだ変態カルト集団の存在が浮上してくるものの、ドラマはその下っ端を一人殺しただけで終わり、変態カルトとの闘いは決着しません。圧力と戦いながら巨悪を追い詰める様を期待した私としては、ちょっと残念でした。
[テレビ(吹替)] 8点(2018-04-26 18:50:30)
5.  マンハント 《ネタバレ》 
ディスカバリーチャンネル製作の実録ものということで、エンタメに振り切れ過ぎず良い意味で生真面目な内容に徹している点に好感が持てました。時代の再現度や役者のなりきり具合はかなりのレベルに達しており、一目で「このドラマはレベルが違う」ということが分かります。  主人公はFBIのプロファイラーであるジム。事件から2年後、世捨て人の如く山奥に引きこもり、自給自足の生活を送るヒゲボーボーの男こそがジムであり、どうやら彼は何かに激しく憤っているということが分かります。次に物語は2年前へと遡り、FBIの訓練課程を最優秀で修了し、精鋭揃いのユナボマー対策チームにいきなり配属された前途洋々たるジムの姿がそこにあります。2年間でジムを変貌させたものとは一体何だったのか。かなり引きの強い序盤であり、ここで一気に心をつかまれました。 なお、ジムが修了した訓練過程は最近見た『マインドハンター』で創立された心理捜査課のものであり、舞台もマインドハンターと同じくクァンティコ。個人的にはこの時点でテンション高めになりました。「ホールデン、君の部署は立派に育ってるぞ」と。  捜査の過程では大掛かりな見せ場や息詰まるような展開はないものの、チームに配属された新人捜査官の苦悩が克明に描かれることから、職業ドラマとして非常によくできています。「君の手腕に期待している」と言われてチームに入ったのに、実務を開始すると自分の言うことを全然聞いてもらえない。それどころか地道なリサーチの末の提案に上司全員から一斉に噛みつかれ、自分はチームの邪魔をしているのではないかと思うことすらある。多くの人が経験するような新人の苦悩が描かれるため、ジムへの感情移入が非常に容易でした。 また、上司側の視点でも物語は描かれます。チームを取りまとめるアッカーマン主任捜査官にとってプロファイリングは犯人特定のための手法のひとつに過ぎず、それがすべてではないのです。そうした視点の違いこそが専門職員であるジムとの間に溝を作っているのですが、この摩擦もあらゆる組織で見られるものであり、組織論的な面で興味深く見ることが出来ました。 そんなFBIの組織論として最大の盛り上がりを見せるのが第4話であり、犯人の要求通り新聞に彼の論文を全文掲載し、新聞購入者という膨大な母集団を国中のFBI捜査官を動員して個別にマークするというFBI史上最大規模の作戦を実行するか否かの決断が下されるのですが、もし失敗すればFBIはテロリストの要求に屈したという汚点を残し、アッカーマンのキャリアは終わり。作戦の効力に対してのネガティブな見解も出ている中で、この大博打を打つかどうかの決断をアッカーマンは迫られます。失敗しても次がある下っ端の提案者と、代表者として組織を背負っているチームリーダーの立場の違いを思い知らされる回であり、絶対に成功すると確信している作戦の決裁がとれず苛立つジムと、失敗のリスクまでを考慮するアッカーマンの両方に激しく感情移入しながら見ることができました。  また、本作は犯人であるカジンスキーのドラマとしても優れています。本心では人を求めているもののうまく振る舞えず、高い自我との間の絶望的な差異を、他者を傷つけ優位に立つという行為で埋めていた孤独な男。そんな彼の心情が描写されたのが第6話であり、爆弾魔としての自分の実績を誇らしく思う一方で、もしその長い時間と膨大な労力を人間関係を改善させるという方向性で行使していれば、どれほど人生が豊かになっただろうかと後悔する様は、見ている者の心をも深く抉ります。  他方、残念だったのがエピローグである第8話でした。前述した通り、本作は1997年を舞台にした現在パートと、1995年を舞台にした過去パートに分かれており、この最終話は現在パートに位置付けられるエピソードなのですが、第7話からの接続が悪いためか過去パートと繋がっているエピソードに見えてしまっており、しばらくは何の話をしているのか分かりませんでした。 また、第1話の掴み部分である、2年間でジムがなぜ世捨て人になったのかの説明が最後までなかったため、シリーズ全体を通した問題提起と結論がうまく整合していないという点も気になりました。何か重要な情報を見落としたのかと思って第7話から見返したものの特に見落としはなく、どうもこのドラマには一部の重要な情報が欠落しているようです。第7話までのクォリティが高かった分、ドラマを締めきれていない最終話の不出来が余計に目立っています。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-12-30 08:44:53)
6.  マインドハンター 《ネタバレ》 
ジャンルとしては猟奇殺人ものであり、かつ刑事ものではあるものの、犯人との息詰まる攻防戦や視聴者の目を楽しませるような大捕り物は皆無。本編のほとんどが会話劇である上に、視聴者をあっと驚かせるような展開があるわけでもなく、どこまでも地味な作風です。他の海外ドラマのようについつい一気見させられることもなく、1か月をかけてようやく全10話を見終わりました。 ではつまらなかったのかというと決してそういうわけではなく、不思議な魅力に満ちた作品だったと言えます。これはおかしな見方なのかもしれませんが、主題である猟奇殺人や犯罪プロファイリングにはほとんど興味を引かれなかった一方で、主人公ホールデンのサラリーマン的な面に物凄く感情移入しながら見ることができました。 ホールデンはFBI捜査官ではあるものの、アクション映画に出てくるようないかにもなエリート捜査官というタイプではなく、むしろ小役人のような雰囲気を漂わせています。そんな彼がプロファイリングを用いた捜査に着目し、ベテランではあるがほぼ窓際状態にあるビル捜査官と組んで心理捜査課を立ち上げるのですが、これがビジネスにおける社内ベンチャー立ち上げのようなのです。出会うほとんどの人に新しい試みを理解されないばかりか、「凶悪犯は人間の屑だ。そんな屑の心理を理解しようとすること自体が良くないことだ」とその趣旨を曲解された上で批判まで受ける始末であり、立ち上げ当初はかなり苦労させられます。この辺りは、新規事業立ち上げに参加した私自身の経験とかなり重なる部分もあって、他人事とは思えないほど感情移入させられました。 中盤以降はそんな彼らの努力が成果を挙げ始め、犯人逮捕への貢献や、他の機関からの注目を集め始めます。人手を増やしたくて募集をかければ誰を落とそうかと迷うほど採用希望者が殺到するのですが、これもまたベンチャーっぽいんですよね。そんな中でホールデンは自身の編み出した手法にかなりの自信を持ち、内面から溢れ出てくる意欲や行動力を抑え切れなくなります。何にでも「俺は俺は」と口を挟み、「現場での臨機応変」という大義名分を盾に上司からの指示や組織の決まり事を無視するようになり、さらには仕事での勢いがプライベートにまで悪い形で波及し、全方位に対してウザい奴になるのですが、恥ずかしながらこの辺りの心境も私はよく理解できました。仕事が乗りに乗っており、客観的な成果も出ている時って24時間アドレナリン出っ放しで、周囲に対する態度もついつい自己中心的なものになっていきます。本人は有能な自分が関与することが全体のためになっていると思って行動しているのですが、「俺の言うことだけ聞いてればいいんだよ」という本音を隠しもしない態度が周囲との軋轢を生んでおり、味方をどんどん失っていく。社会人をやっていると、こういう時期ってありますよね。 ホールデンのそうした逸脱がはっきりと露呈したのが第8話であり、シリアルキラーや犯罪捜査とは直接関わりのない異色回でありながら、私はこれが現時点におけるベストエピソードだと感じました。授業への協力でたまたま訪れた小学校で校長の異常行動を発見。この校長はサイコパスであり、今止めなければ凶悪犯罪を起こす可能性ありとホールデンは判断します。これまで直感に従い行動して成果を挙げてきたホールデンは今回も自分自身の勘に従うのですが、まだ何の事件も起こしておらず、かつ、社会的ステータスが高く世間一般では「信頼できる人」とされている校長の身辺調査をFBIの権威を行使して実施するなど前代未聞の事態であり、ホールデンは多くの批判を受けます。それでも彼は自身の判断を曲げることはなく、事件を起こしていない校長を社会的な破滅にまで追い込むのですが、ホールデンによって悲劇が未然に防がれたのか、それとも落ち度のない民間人の人生が無駄に奪われてしまったのかは誰にも分かりません。 このエピソードではホールデンの逸脱と同時に、予防の難しさも描かれています。例えば児童虐待やストーカー犯罪で悲劇的な被害が出た際に、児童相談所や警察は事前に相談を受けていたのになぜ防げなかったのかという批判がよく聞かれます。ただしそれは後知恵であって、事前の相談レベルで先を見通すことは非常に難しいし、予防に走り過ぎれば本来は変えてはいけない人生を狂わせる可能性だってある。そうした難しさが見事に描かれた普遍性の高いエピソードだったと言えます。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-12-19 17:20:53)(良:1票)
7.  ザ・ミスト 《ネタバレ》 
2007年のフランク・ダラボン版は密室で自制心を失っていく普通の人達の恐ろしさや、映画史上最恐クラスの鬱エンディングなど素晴らしすぎる作品であり、生涯見てきた映画の中でもトップ5に入るほどの重要作なのですが、そのダラボン版から10年を経て制作された本作にも興味津々でした。 世間的には非常に評判が悪く、シーズン2以降の制作がキャンセルされるほどの不評を買った作品なのですが、私は「どうやってもダラボン版を超えることは不可能」という期待値で見たためか、これが物凄く楽しめました。少なくとも、アメリカドラマの標準作のレベルにはちゃんと達していると思います。 ダラボン版との最大の相違点は、病院組・教会組・ショッピングモール組と舞台が3つに分かれ、多少の移動の自由もできたことから街全体の物語になったことであり、それぞれの舞台で狂気が同時多発的に発生していくことから、特に後半の怒涛の勢いには圧倒されました。ラスト4話は平日夜にも関わらず一気見してしまったほどです。おかげで翌日の仕事は上の空でしたが。 こうした舞台の広がりが最大限に活かされたのが最終話であり、3つの舞台の登場人物達が一堂に会したことによる最高潮の盛り上がりや、それまで閉鎖空間でそれぞれがおかしくなっていたところに、別の舞台の人間がやってきたことで「お前ら、そんなバカなことで揉めてんの」とお互い相手に対しては冷静な視点での批評が発生するという面白さがありました。特に、婆さんのインチキ宗教にハマっていたコナー署長が、舞台を変えて第三者と一緒にこの婆さんの説教を聞くとただの戯言であることに気付き、こんなものに自分は熱狂し、何人も殺した上に、息子まで失ったのかと呆然とする様には、「ほら、みたことか」という歪んだカタルシスがありました。この辺りの展開は、同じく一時期の混乱から冷静な判断能力を失って取り返しのつかないミスを犯した父親という点で、ダラボン版へのオマージュとして解釈しました。 問題点は、まず霧の規則性がよく分からないということ。巨大昆虫という分かりやすい脅威が発生していたダラボン版とは違い、本作の霧には潜在意識を具現化する機能があるようなのですが、苦手な知人や故人といった従前の人間関係に起因する脅威に襲われる者もいれば、虫や大蛇といった単純な脅威に襲われる者もいる。霧に入ってほんの数歩で絶命する者もいれば、霧の中でそこそこの距離を移動しても平気な者や、脅威に打ち勝って脱出できる者もいる。このように描写にムラがあるため、霧に入ることがどれほど危険なことなのかがピンときませんでした。 また、悪い人間は大勢いる一方で、感情移入可能な人間がほぼいないために、特に中盤には見続けることが苦しい回もありました。ヤク中の女なんて身勝手な行動が多くてイライラさせられるのですが、通常のドラマでは、前半で足を引っ張っていた人物が後半で大活躍したり、こういう人物のイレギュラーな行動が大きな転換点を作り出したりするものですが、彼女については一貫してただ邪魔をしているだけの味方。物凄くイライラさせられました。その他、「幼い娘を亡くした母親から自分は相当な恨みを買っている」という重大な認識を持たずにフラフラと勝手な行動を繰り返し、案の定危険にさらされる主人公の娘や、意図を説明せずに強硬策をとるために娘やその彼氏の反発を受けて余計に事態を悪化させる主人公の嫁など、バカな人がバカなことをしでかした結果として物事が進んでいくという、この手の作品でやって欲しくない展開が多いので疲れてしまいました。 あと素朴な疑問なのですが、3つの舞台において物資面でもっとも恵まれているはずのショッピングモールでまず食料が底を突いたのはなぜなんでしょうか。それに付随して、食料が底を突き、このままここに留まっても後先はないことが分かりきっている状態で、主人公一家をモールから追放する、しないでひと悶着している様が理解不能でした。 前述の通り、本作はシリーズ継続がキャンセルされたのですが、まだまだ多くの構想はありますよという状況で終わってしまったことは残念でした。アラも多かったものの、致命傷レベルの問題ではないのでシーズン2以降で軌道修正はできただろうし、できれば続きも観たかったです。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-11-04 01:02:02)(良:1票)
8.  ヴァイキング~海の覇者たち~ 《ネタバレ》 
かなりシンプルだったシーズン1とは対照的に、当シーズンでは北欧とイングランドを行ったり来たりで、しかも立ち位置がコロコロと変わる登場人物が何人かいて、シーズン全体を眺めた時のイベントの詰め込み方がアメリカドラマに似てきたなぁという印象を受けました。いかにじっくりと見せるかに重きが置かれていたシーズン1のテンポも好きだったんですけどね。 イングランド内での権力闘争にヴァイキングの軍事力を利用しようとするウェセックス王と接近したり、一方で味方であるはずのホリック王との関係に亀裂が入り始めたりと、本シーズンでは敵味方のボーダーレス化が本格化するのですが、そこに「どうなる!?ラグナル」という緊張感が伴っていないために、製作者の意図とは裏腹に、あまりハラハラさせられませんでした。ピンチになれば駆けつけてくれるラゲルサ、素直なビヨルン、寡黙だが心強いロロと、ラグナル陣営が盤石すぎて負ける気がしないのです。また、これは歴史ものならではのハンデなのですが、ラグナル・ロズブロークとその息子たちがこの時点では死なないことは分かっているため、何が起こっても「ま、どうにかして解決しちゃうんでしょ」という目で見てしまう点もマイナスでした。この先どうなるのかというサスペンス要素で引っ張るよりも、人間ドラマに重きを置くべきだったと思います。 また、そのドラマ部分がとにかく雑という点も気になりました。シーズン前半ではすっかりヴァイキングの一員となりイングランドの同胞を殺しまくっていたが、中盤ではアッサリとキリスト教の聖職に復帰し、後半ではまたヴァイキングに戻っていくというアセルスタンが一体何を考えているのか分からなかったり、前シーズンでラグナルの不貞によって家を去ったラゲルサとビヨルンが、何のわだかまりも見せずラグナル勢に再合流することが不自然だったりと、そこにあるべき感情がすっ飛ばされていることが結構多いのです。新キャラ・ポルンに至っては、最初はビヨルンの好意を迷惑がっていたはずなのに、いつの間にかビヨルンとラブラブになり、彼のお母さんラゲルサを目指して剣術の稽古を始めるほどの健気さを見せていたものの、後半では突然ツンデレキャラになるという、同一人物とは思えないほどの不安定さで、この人物をどう理解すればいいのか悩みました。 IMDBなどではこのシーズン2のスコアはかなり良いのですが、私はシーズン1よりも落ちる出来だと感じました。とはいえポテンシャルの高いシリーズなので、続くシーズン3にも期待していますが。
[テレビ(吹替)] 6点(2017-08-20 10:26:22)
9.  ナイト・マネジャー 《ネタバレ》 
同じくジョン・ル・カレ原作を映画化した『裏切りのサーカス』には、あまりの分かりづらさにいささか辟易とさせられたのですが、本作についてはテレビシリーズという媒体が素材にぴたりとハマっており、格式の高さを残しつつも見やすい仕上がりとなっています。 合法企業の違法取引を暴くためにその経営者の懐に潜入したスパイの物語なのですが、ジェームズ・ボンドやイーサン・ハントのような派手な大立ち回りは皆無であり、ひたすらにジリジリとした心理戦が繰り広げられます。映画でやられると少々退屈しそうな内容ではあるのですが、一話45分程度に細分化されたテレビドラマであればこの内容でも視聴者側の生理に合っています。また、アカデミー外国語映画賞受賞経験もあるスサンネ・ビア監督の演出力が非常に高く、視線のわずかな移動のみでとんでもない緊張感を生み出しているという点も評価できます。特に最終話直前の異常な緊張感や、クライマックスのカタルシスには圧倒的なものがあり、かなり満足度の高い視聴となりました。 主人公がターゲットの愛人との色恋に走るという展開についても、普通に考えれば「命がけのミッションの最中に何を色ボケしてるんだ」となるところですが、こちらもテレビシリーズの強みで二人の関係性をじっくりと描けたことで、きちんと悲劇の恋となっています。また、トム・ヒドルストンとエリザベス・デビッキの上品な美しさによっても低俗化が避けられており、映像化が実にうまくいっています。 役者で言えば、敵役のヒュー・ローリーのハマり具合も見事なものです。カリスマ性と洗練性に溢れていると同時に、「こいつに正体がバレるとどんな目に遭わされるか分からない」という威圧感を終始漂わせており、スパイものの悪役としてはほぼ理想形とも言える仕上がりとなっています。シーズン1の好評を受けてシーズン2も製作されるとのことですが、ヒュー・ローリーが演じたリチャード・ローパーに肩を並べるほどの敵役を作ることが製作陣にとって最大の課題ではないか。そう思わされるほど、本作のヒュー・ローリーは完璧でした。
[テレビ(吹替)] 8点(2017-08-10 22:25:09)
10.  エクスパンス-巨獣めざめる- 《ネタバレ》 
映画・ドラマ・アニメを含めたすべてのSF作品の中でも最上位クラスの作品だと思っている作品として『バトルスター・ギャラクティカ』があるのですが、Syfyチャンネルがそのギャラクティカ以来久し振りに手掛けた宇宙ものが本作『エクスパンス』ということで、大変な期待の下での視聴となりました。 で、結果なのですが、物語もビジュアルも確かに作り込みが凄い。巨大なスペースコロニーから小道具ひとつに至るまで何一つ手抜きがなく、宇宙移民が始まって数世代が経過してくたびれてきた世界というものを、ほぼパーフェクトに視覚化できています。また物語も硬派な空気を終始維持できているし、いざ戦闘が始まれば圧倒的なテンションの見せ場が繰り広げられ、本作のメイン視聴者であると見られるギャラクティカのファンが要求するものは、とりあえず提示できています。 問題は、とにかく内容がわかりづらいこと。失踪した富豪令嬢を追うコロニーの刑事、正体不明の敵に攻撃された貨物宇宙船の生き残り、地球の国連大使が主人公となるのですが、シーズン佳境までほとんど接点を持たないこの3名が別々に謎解きをしているので、彼らが何をしているのかをしばしば見失いそうになります。 また、前述の通り個々の見せ場のクォリティは高いものの、最近のアメリカドラマとしては珍しく見せ場の数がとにかく少なく、何事も起こらないまま終了する回もザラにあるため、見続けるためには時に忍耐が必要となります。なお、謎の多くは解明されないままシーズン最終話を迎え、本シーズンが序章に過ぎなかったことが判明するのですが、今後このシリーズがどうなっていくのかには大変興味をそそられる一方で、この構成ではシーズン単独での評価はどうしても低くなってしまいます。複数のシーズンをまたぐ壮大なサーガを描きつつも、個々のエピソードの満足度も高いものだった「バトルスター・ギャラクティカ」や「ゲーム・オブ・スローンズ」などと比較すると、本作では全体構成のために個別エピソードが犠牲にされているという印象を持ちました。
[テレビ(吹替)] 6点(2017-08-05 22:50:38)
11.  ヴァイキング~海の覇者たち~ 《ネタバレ》 
Netflixの『ラスト・キングダム』が面白かったので、同時代をヴァイキングの側から扱った本作も視聴しました。 主人公のラグナル・ロズブロークはスカンジナビアの伝説的な英雄。ただしその実在性はかなり疑わしく、日本で言う卑弥呼みたいな位置づけにある人物なのですが、歴史と伝説の狭間の存在という点が読者・視聴者のロマンを余計にかき立てるのか、過去にも様々な媒体で扱われてきました。本シーズンでは農民出身のラグナルが首長になるまでの物語が描かれます。 「首長、今年はどこを略奪しましょうか」と、えらく物騒なことを村人全員で話し合う第一話からヴァイキング感全開。デカくて不潔で豪快で、「己の命よりも武勲を優先」という真っ正直な戦士達が基本ガハガハ言ってる内容なのですが、武勲を上げる中で村内での注目を集めるようになったラグナルと、そのラグナルに対して警戒心を抱くようになった現首長との対立が鮮明になった辺りから、ドラマは一筋縄ではいかなくなります。 この首長からラグナルへの嫌がらせがとにかく卑劣で、豪快な戦士に対してどんな汚いことをやってくるんだとイライラさせられました。対するラグナルは純粋一直線。この時点では権力欲や名誉欲はほとんどなく、だからこそ自分が首長から狙われている理由もよくわかっておらず、二度目の略奪では「これだけの財宝を持ち帰るのだから、首長からも褒めてもらえるはず」などと呑気に考えているわけです。それ逆だから。ラグナルが成功すればするほど、首長は焦ってラグナルへの攻撃を強める。もし二度目の略奪が失敗に終わっていれば、首長は彼へのマークを緩めたはずです。 ドラマの進行とともに、首長の背景も明らかになってきます。元はラグナルのように勇猛果敢な戦士であり、おそらくは実力でのし上がってきた人物だったが、息子二人を失ったことから守りの姿勢が強くなり、そのうち己の弱体化を周囲に悟られることへの恐怖心から謀略を張り巡らす人物になってしまった。盛りの過ぎたベテランと伸び盛りの若手という、多くの組織に見られる対立構造を持ち込んだことで、本作は歴史ドラマでありながらも時代性に縛られない普遍性を獲得しました。決して褒められたものではないものの、首長の立場にも一定の理解ができるのです。 また、本作はヴァイキングという世界史上でも特異な存在の理解にも役立ちます。彼らの信仰・文化・風俗が克明に描かれているし、セットや小道具はかなりよく作り込まれています。スカンジナビアの自然や冬の厳しさもきちんと捉えられており、これまで教科書などでしか読んでこなかった存在を、目で見ることができます。これは見ごたえがありました。 問題は、上記の通りヴァイキングの生活の描写に予算が費やされたためか、戦闘シーンが恐ろしく安っぽかったこと。前述した『ラスト・キングダム』ではウェセックス軍vsヴァイキング軍の大合戦が見られたのに対して、本作では数十人のヴァイキングが英国の海岸線を脅かすのみ。これだけこじんまりとした相手なら英国側も簡単に撃退できただろうと思う程度のスケールであり、侵略者としてのヴァイキングの描写には不満が残りました。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-08-05 22:49:35)
12.  ラスト・キングダム 《ネタバレ》 
展開のスピーディーさは前シーズン以上となっており、毎回のように見せ場のある作風にはより磨きがかかっています。とにかく娯楽性が高くて楽しめるし、忍従を重ねた末に憎き敵を成敗するという時代劇特有のカタルシスにも溢れており、全8話があっという間に過ぎました。例えば主人公が味方の裏切りによって奴隷の身にまで落とされ、「さて、どうなる」となっても、次の回には救援が始まるという手際の良さ。かといって描写が不足しているわけでもなく、視聴者に伝えるべき感情はきちんと伝えられており、時間の使い方が上手いなと感心させられました。 また、ドラマ面においても本作は充実しています。前シーズンでは一匹狼だった主人公が成長して組織人となるのですが、上司とうまく折り合えずに実力を発揮しきれないという点には、多くのサラリーマンが共感できるのではないでしょうか。他のサクソン人とは異なるアイデンティティを持つという自分自身では変えようのない背景から、前シーズンでの態度の悪さという自分の行為のツケとも言える要因に至るまで、実に多くのしがらみが彼を苦しめ、窮地に追い込みます。また、「あいつは実力があるのだから使い続けましょうよ」と支持を表明してくれる同僚もいれば、批判者側に回って敵以上に厄介な障害となる味方も現れる。この辺りもあらゆる組織に当てはめて見ることが可能であり、ドラマの間口の広さにも感心させられました。 問題点は前シーズンと同じく、英国史に名を残す名君・アルフレッド王に威厳やカリスマ性が感じられないこと。感情的な理由から優秀な主人公を邪険に扱っているようにしか見えないのですが、実際には、七王国を束ねるためにキリスト教というすべてのサクソン人に共通する精神的支柱を強く押し出すという大きな戦略が彼にはあり(だからこそ、バイキングであっても後に改宗した者には寛大に接しているわけです)、そうした文脈の前では、頑なに異教を手放さない主人公を重用するわけにもいかないという事情があったはず。善悪では割り切れないそうした難しいジャッジを視聴者にも突き付け、「あなたがウェセックス王ならどうしますか」と考えさせることでより深みのあるドラマになりえたのに、そこが放棄された点は勿体ないと感じました。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-08-05 22:48:28)
13.  ストレンジャー・シングス 未知の世界
スピルバーグプロデュース作品を連想させる少年の冒険物語と、高校生の男女が超常現象に挑むというSFホラーにありがちな構図を組み合わせ、それらをジョン・カーペンター風の音楽でデコレートした「ザ・80年代」なSFドラマ。しかも大人陣営にはウィノナ・ライダーとマシュー・モディーンという80年代青春映画の大スター達を起用する念の入れようであり、大きなお友達を喜ばせる作風に徹しています。 数本分の映画を一つにまとめて違和感なく再構成したような内容であり、ダファー兄弟の構成力の高さには感心したものの、反面、定石通りに進んでいくためミステリーものの割には展開に意外性がなく、あらすじを聞いただけでおおよその人が連想する予定調和なオチとなってしまった点はマイナスでした。 今年のハロウィーンにシーズン2がリリースされる予定となっていますが、こちらについては21世紀のストーリーテリングで80年代の作品を再構築するような大胆な作風を期待します。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-07-01 09:40:42)
14.  FARGO/ファーゴ
シーズン1を奇跡的な傑作だとすると、このシーズン2は普通に面白いドラマ。充分に面白いものの、奇跡が二度は続かなかったようです。 内容はシーズン1とほぼ同じ。ヤクザ同士の抗争と、思いがけずその抗争に巻き込まれる一般人、そして地域の治安を守る保安官という3つの物語で構成されています。さらに、キツめのバイオレンスと、笑っていいのか悪いのか分からないタイミングで繰り出されるユーモアという味付けもシーズン1と共通しており、シーズン1を気に入った人に提供されるおかわりとしては適正な内容となっています。ちゃんと楽しめました。 ただし、一般人の物語を主・ヤクザの物語を副としたシーズン1とは対照的に、ヤクザの物語を主としている点が本シーズンの大きな特徴であり、この変更のために、やんごとなき事態に巻き込まれて抑え込まれていた本性が爆発する小市民というシーズン1における重要な要素が丸ごとなくなっています。 また、感情も人間として積み重ねてきた歴史もなく、単なる暴力のかたまりでしかない殺し屋・マルヴォという絶対悪がシーズン1の異様な空気に大きく貢献していたのですが、本シーズンのヤクザもの達には全員それなりの事情や背景があり、ちゃんと人間として描かれている点も、本作を平凡にする要因となっています。マルヴォに相当すると思われるハンジーにおいても、彼を強力な殺し屋に変貌させた背景がちゃんと説明されるために、その存在からは超越性や神秘性が失われています。さらには、UFOやロナルド・レーガンといった突飛なアイコンもうまく本筋と絡んでおらず、企画倒れに終わっている要素がいくつか見られました。 良かった点としては、シーズン1と繋がった世界観であり、何人かの登場人物はシーズン1と共通しているものの、本作単独でもまったく問題なく成立する内容であり、1年前に見たシーズン1の復習が必要なかったという点が挙げられます。最近は前シーズンの内容を細部まで覚えておかないと新しい情報を理解できないドラマが多く、好きなんだけど途中リタイアを余儀なくされる作品も出始めているため(「ゲーム・オブ・スローンズ」「ブラッドライン」)、1シーズンを一まとまりとした本作の作りには大変好感を持てました。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-07-01 09:39:32)
15.  ラスト・キングダム 《ネタバレ》 
NETFLIXとBBCの共同制作ということで堅苦しい時代劇を予想していたのですが、これがスピーディーな展開で見せるライトな作風であり、全8話をサクっと見ることができました。とはいえ、ブリトン人・アングロサクソン・バイキングの関係性や、アルフレッド王の史実上の功績が頭の片隅にないと何の話をしてるんだか分からない部分もあり、中世以前の英国史の勉強をさせられてこなかった日本人にとっては厄介な題材であることに変わりはありませんが。私は第一話を見終わった時点でwikipediaを見に行きました。 主人公はサクソン人の出自だがバイキングとの生活で人格形成されており、どちらの社会においてもよそ者扱いを受けてアイデンティティに苦しむ・・・のかと思いきや、何事にも動じない大胆な性格と、どこに行っても仲間がおり、行く先々で恋に落ちるというリア充ぶりから、悲壮感は物凄く少ないです。わずか8話中でヒロイン格の女性が3人も次々に登場し、それぞれとマジ恋愛するという中世のジェームズ・ボンドぶりは只事ではなく、かつ、どの恋愛も悲しい結末を迎えるものの、すぐに次の恋が起こるから重くなり過ぎないというロマンスパートの味付けはかなり独特でした。 戦闘パートは素晴らしい迫力だし、アングロサクソンとバイキングの戦い方の違いも視覚化されていることから、情報量が多くて楽しめました。毎回のように山場が設けられているというサービス精神も嬉しく、NETFLIXの安定した仕事が光っています。 問題点は、英国史上に燦然と名を残すアルフレッド王のカリスマ性がやや不足していたことと、宗教の扱いに不整合が見られた点です。キリスト教に対してはやたら批判的な姿勢をとる一方で、ケルト人の土着宗教は普通に奇跡を起こしたりと、宗教を否定したいのか肯定したいのかよく分からない点がマイナスでした。あと、アルフレッドの奥さんウザすぎ。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-06-29 13:17:51)
16.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
シリーズのショーランナーを務めてきたボー・ウィリモンが本シーズンより降板したとのことですが、その抜けた穴の大きさを実感させられるシーズン5でした。面白いことには面白いのですが、普通に見られる平均作レベルに落ちてしまったという印象であり、非常にポテンシャルの高い本シリーズに要求される水準には達していません。 本シーズンは大統領選が描かれる前半パートと、フランクが過去に犯してきた不正や犯罪行為がついに周知のこととなり追及に晒される後半パートに大分されますが、どちらのパートにおいても「フランクが追い込まれる→ありえない対応策で危機を乗り切る」という展開に単調さがあり、危機また危機で煽れば煽るほど緊張感が失われるという負のスパイラルに陥っています。致命的だったのはフランク側の対応策に知性や意外性が欠けていたことであり、臭い物にはフタをする、都合の悪い奴は殺すという対応は本シリーズに求められているものからはかけ離れています。勢いと緻密さが奇跡的な配合となっていた前シーズンから緻密さが抜け落ちてしまったという印象であり、ボー・ウィリモンの偉大さをつくづく感じさせられました。 また、シリーズの名物であった視聴者に対する語り掛けも随分と様変わりしています。節目節目で一言二言毒のある発言をすることが本シリーズにおける語り掛けの良さだったのですが、本作では視聴者相手にダラダラと状況説明をするようになり、もはや「世にも奇妙な物語」のタモリみたいになっています。こちらでもかなり興を削がれました。 キャラクター劇としてもイマイチで、何人かのキャラクターが別人のようになっています。 まずフランク。確かに彼は腹に一物持った悪人ですが、それでもその最終目標は「自分の手でレガシーを作ること」であり、実際にシーズン3では福祉政策の大転換に挑んでいました。達成のための手段を選ばないという姿勢にこそ問題はあれど、そもそもの目標は公益性を伴ったものであり、だからこそ視聴者はこの人物を愛していたはず。しかし本シーズンではそうした目標すら失い、ただ権力にしがみつくだけの私利私欲の塊と化しています。挙句に、自分は表舞台から消え去り、国民人気のあるクレア政権に対する院政を敷いて権力を維持すると言い出す始末であり、これではシリーズを通して彼が批判してきた金の亡者達と大差ありません。最低限の美学すら失ったフランクを、私は支持できませんでした。 次にクレア。彼女とトム・イェイツの関係性は欲求不満を紛らわせるための愛人という上から目線のものであり、その冷徹さの中にこそ彼女の超越性が宿っていたというのに、本作ではトムにハートまで持っていかれた様子を見せるために、彼女の魅力が随分と失われています。トムはトムで、自分の立ち位置を瞬時に理解する知性を持ちながらも、退廃性に身をゆだねてフランクの犬・クレアの愛人に成り下がっているという実に味のあるキャラクターだったはずなのに、本作では単なるエロキャラに見えてしまっています。挙句に、あのみっともない最期ですから、魅力あるキャラに随分と勿体ない扱いをしたものだと残念な気分になりました。 そして、一番変化が激しかったのが選挙参謀・リアン・ハーヴェイであり、融通の利かないキレ者だったはずの彼女が、本作では「私を切らないでください」と懇願するだけの被害者キャラに成り下がっています。強者同士の蹴落とし合いが見どころの本作に、弱者キャラは不要です。
[テレビ(吹替)] 6点(2017-06-15 22:41:06)
17.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
多少の中弛みが気になったシーズン3の反省からか、本作は怒涛の展開の連続で度肝を抜かれました。しかも話の風呂敷の広げ方がうまいために「そんなアホな」と思わせないギリギリのところで踏み留まっており、そのバランス感覚は見事なものでした。「フランク大統領・クレア副大統領のアンダーウッド夫妻政権を目指します!」など現実的にはまったくありえない話なのですが、視聴者が理解可能なイベントの積み重ねの末にこのトンデモ展開を受け入れさせてみせた力技に、本作のショーランナーであるボー・ウィリモンの非凡さが表れています。 シーズン3では鳴りを潜めていたパワーゲームも本作では復活。まず、シーズン3の敵であったヘザー・ダンバーを、フランクの身に起きた不幸を逆手にとって葬り去り、続いて共和党大統領候補ウィル・コンウェイとの一騎打ち。またこいつがフランク並みの腹黒さであり、キツネとタヌキの化かし合いがとにかく熱くて面白くて最高でした。 細かい点では、数シーズンお休みしていた懐かしのキャラクターの再登場等、本シリーズが持つ資産が実に効果的な形で再利用されているという点にも感心させられました。豪快な展開の中にも細かい技が光っており、今のところの最高傑作はこのシーズン4だと思います。
[テレビ(吹替)] 9点(2017-06-15 22:39:44)
18.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
野望の階段を登りつめて国の頂点に立ったフランクのその後。最高権力を握った途端にフランクは勢いを失い、それまでは「大統領になるんだ」という目的の下結束してきたアンダーウッド夫妻が、実は目指していたゴールが違っていたことが露呈して分裂を始めます。攻めに攻めていた1・2シーズンから一転してフランクが防戦一方となった本シーズンでは作品全体の雰囲気が大きく変わっており、また完全な公人となり24時間の監視に晒されたことでフランクが裏工作に動くような展開もなくなったために、かなり真っ当な政治ドラマに落ち着いています。前シーズンまでのトーンが好きだった私としては最初の数話にはあまり乗れなかったし、中弛みしているエピソードもあったため序盤はイマイチだったのですが、それでも終盤できっちり盛り返す辺りは、さすが名物ドラマです。 終盤にて、フランクは多くの取り巻きを失います。これを裸の王様状態になったフランクの自業自得として見ることもできますが、私はフランクに大きく感情移入できました。どいつもこいつも大統領に一方的な期待ばかりを募らせ、望んだ見返りを得られないと見るや「私のことはどうでもいいのか」などと言って離れていく。権力者になって受けられたものは敬意ではなく文句ばかりで、これではフランクもイヤになるでしょう。 まずシャープ。シーズン2にてフランクの抜擢人事によって党内の要職に就いた彼女は、フランクからすれば当然に駒となるべき存在です。しかし、彼女は大統領選で窮地に立たされるフランクとダンバーを品定めし、副大統領職という餌を提示されたことでようやくフランク側に立つ決断をするという恩知らずな態度をとります。その割に、駒として使われたことにブーブー文句を言い、自分の心情に配慮しろなどとお門違いなことをぬかすものだから、フランクも堪らないわけです。まず情を失ったのはシャープの方であり、そこから先は取引というシビアな形で二人の関係が進み始めた。駒となることへの対価は副大統領職の提示で済んでおり、餌を見せることで渋々付いてきているような部下の心情にまでなぜ配慮しなければならないのか。フランクのイライラには、とても共感できました。 次にレミー。元はフランクのスタッフとして働きながらも、敵対者側のロビイストに転職。シーズン2では完全な敵に回っていたにも関わらず、クライアントであったレイモンド・タスクが倒れるやまたフランクの元に戻ってくるという究極の風見鶏でありながら、フランクは大統領補佐官に就けるという実に温情ある対応をします。しかし、彼はフランクに対する恩義などビタ一文感じていない様子で、同じく恩知らずのシャープの逆切れに同調して再びフランクの元を去っていきます。こいつも最悪、出て行かれて正解でした。 最後にクレア。フランクを応援する様は糟糠の妻のそれではなく、自己実現の手段であったことはシーズン1の頃より分かっており、今シーズンではいよいよ彼女も自分の目的のために動き出すのですが、そのタイミングがことごとく最悪。まず彼女は国連大使を目指しますが、大統領の妻が国連大使になるという権力の集中など世論の理解の範囲を超えており、当然議会では否決をされます。ここで諦めればいいものを、旦那にねだりその権力を使って無理やり大使就任するものだから、ただでさえ低い旦那の支持率に悪影響を与えます。しかも、大使でいる間は私情を捨てて公務に徹するべきなのに、肝心の場面では妻に戻って大統領の指示に従わないため、彼女の存在がフランクのアキレス腱となります。彼女もシャープと同じく情と利の両方を求めてくるため、実にめんどくさいのです。クレアの要求に耐えかねたフランクが、「ある時は君を平等なパートナーとして見られる理解ある男で、ある時は君をリードできる頼もしい男。それを君の気分に応じて都合よく使い分けろって言うのか!」とブチ切れる場面では拍手喝さいでした。よく言った、フランク。 ただし、大統領という立場では実質的に離婚という選択肢が残っていないのがフランクの辛いところ。そして、クレアは旦那の弱みをよく理解していて、容赦なくそこを攻撃してきます。シーズンクライマックスでは旦那の選挙戦における重要局面においてスキャンダルを起こそうとするという、最悪の行動に出ます。あなたは共倒れって言葉を知らないのか。女性って、男が一番困るであろうタイミングで騒動を起こすと脅迫し、自分の言うことを聞かせようとしますね。絶対にうんとは言えない状況で「じゃ、離婚よ!」とか言ってくるうちの嫁を見ているようで、実に複雑な気持ちになりました。がんばれ、フランク。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-06-01 23:55:53)
19.  ハウス・オブ・カード 野望の階段 《ネタバレ》 
前シーズンにて野望の階段をひとつ上がったフランクの次なる戦いが描かれるシーズン2ですが、作品の趣はかなり変わったように感じました。前シーズンでは自分より格下の者を掌で弄びながら野望を実現させていたフランクですが、戦いのスタージがワンランク上がったことで自分と互角もしくはうわ手の敵が相手となり、フランクが状況を意のままに操るという前シーズンにあった爽快感はかなり失われました。この点で、シーズン1がお気に入りだった私としては多少の失望がありました。 ただし、米中の財界の大物を敵に回しての戦いには緊張感があったし、そんな陰での死闘を表にはまるで出さず、上司たる大統領に忠臣として取り入ろうとするフランクのイヤラしさは相変わらず見ていて楽しく、世界中の中間管理職がフランク・アンダーウッドの振る舞いに拍手喝采したのではないでしょうか。 ついに大統領に野望が発覚した後、大統領とフランクが主導権争いを繰り広げるラスト2話の盛り上げ方は非常に素晴らしく、それまで着々と準備してきたカードを一斉に切っていくという総力戦感や、すべてのカードを切りつくし運を天に委ねるしかなくなった瞬間の焦燥感などが見事に演出されています。
[テレビ(吹替)] 7点(2017-06-01 23:54:53)
20.  闇金ウシジマくん 《ネタバレ》 
開始当初よりかなり攻めていたこのシリーズも、season3ではヤバさがMAXに到達しています。働き盛りの年齢なのに、仕事をしたくないからと言って安易に生活保護を受給しようとする小瀬ちん。案の定断られると、今度は某左翼政党の運動家らしき人物を引き連れて市役所に乗り込み、「揉めると面倒くさいから支給しとくか」という理由で生活保護を勝ち取ります。さらには、一般社会で生きていけない無職を上から目線でこき使うNPO法人の代表者までを登場させ、世間一般では正義とされている人々の化けの皮を剥がしていきます。また、顔は綺麗なのだが明らかに知的障害のある希々空や、バッチリ入れ墨の入っているヤクザ・柏木など、今のテレビでは映すことをためらうようなサブキャラもどんどん投入。よくぞここまで踏み込んだものだと感心しました。 そして本シーズンの核となっている上原まゆみの洗脳エピソードですが、こちらも地上波で放送されたものとは思えないほどのエグさでした。占い師に頼りがちな心の弱さを突かれて生活をどんどん浸食されていき、結婚詐欺師に家族もろとも家を乗ってられてしまうまゆみ。ヤクザ者同士の暴力や殺人は頻繁に登場してきたこのシリーズですが、一般人がここまで明確な犯罪行為に巻き込まれるエピソードは珍しく、その衝撃度はかなりのものでした。また、結婚詐欺師役を演じる中村倫也のねちっこい演技や、アイドル出身とは思えないほど気合の入った熱演(ラスト2話はほぼ下着姿)を見せた光宗薫の努力もあって、一秒たりとも緊張感が途切れることがなかった点も高評価です。前シーズンまではAV女優を多く使っていたために演技力には目を瞑る必要があったこのシリーズですが、本シーズンに関してはそうした見る側の匙加減が不要だったことは有難かったです。 問題は、どのエピソードにもウシジマがほとんど絡んでいなかったという点であり、私は山田孝之の演じるウシジマが大好きなので、彼の活躍をもっと見たいところでした。さらには、season1では硬派だった柄崎のキャラがどんどん壊れていったことや、高田が空気同然の存在感だったこともマイナスであり、カウカウファイナンスの面々は総じてうまく動かせていません。綾野剛に至っては本編にまるで関与しておらず、彼の登場シーンはファンのための顔見せ程度だった点も残念でした。
[テレビ(日本ドラマ)] 7点(2017-01-31 01:03:09)
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