みんなの連続ドラマレビュー |
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《ネタバレ》 冒頭がサスペンス調の映像で始まり、単なる子ども番組で済ませずにそれなりのドラマを作ろうとしているなと思わせる。
題名の「甘い蜜」とは、いわゆるローヤルゼリーの何百倍もの効力をもつという「ハニーゼリオン」なる薬品のことである。これを実験段階で悪用したため災難が起きたという展開は、アメリカ映画「蜂女の実験室(蜂女の恐怖)」(1959)の発想を借りたように見える。 一応ちゃんと怪獣も出るエピソードだが、出るのはただの巨大なモグラである(「大モグラ」と呼称されている)。本人には特に悪意もないのだろうが、本来の習性で土をほじくるだけで地表に被害を及ぼしてしまい、建物などのほか農地にも被害が出て農家から苦情が寄せられていたのがモグラ怪獣らしい。普通一般の怪獣特撮では、都市部(要は東京)にばかり目が行っていて農村部には何も存在していないかのような感覚が普通だろうから、このドラマで農村的な土地利用を意識していたのは珍しく見えた。 ほか本筋に関係ないが、序盤で蒸気機関車の引く貨物列車が転覆事故を起こす場面があり、その積荷が主に木材だったのは日本の林業が健在だったことを思わせる。また映像面では、その汽車の場面で同じ映像を何度も繰り返すのはさすがにもたつく感じだったが、モグラが地表に出た場面でカメラに土煙が吹きつけるとか、戦車の攻撃場面で爆煙に力が入っていたのが特徴的だった。 ドラマとしては、人間の「小さな心の歪み」が周辺の農業被害や火山の噴火まで引き起こした話になっている。東宝映画「ガス人間第一号」(1960)と同じ背景音楽が鳴っていることもあり、破滅的な悲恋物語(今回は単純な片思い)との印象も出していた。少し残念だったのは、最初は悪役が本当の動機を隠すつもりだったように見えたのに、最後にもう一度出てきてわざわざ本心を告げたことである。ここは関係者も視聴者もみなわかっていたはずなので言わずもがなではないかと思ったが、人はいくら格好つけようとしても結局みっともないものだ、ということを言いたかったのか。 なお今回のヒロイン役は東宝の沢井桂子さんという人で、劇中人物としては清楚だが、視聴者にとってはあまり好きになれない役だった。悪役の男を最初から毛嫌いしていたのは仕方ないとしても、あからさまにこういう態度を取られてしまうと、自分としても男の立場になってしまってつらいものがある。 【かっぱ堰】さん [ブルーレイ(日本ドラマ)] 5点(2018-11-10 22:16:33)
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