みんなの連続ドラマレビュー |
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《ネタバレ》 展開のスピーディーさは前シーズン以上となっており、毎回のように見せ場のある作風にはより磨きがかかっています。とにかく娯楽性が高くて楽しめるし、忍従を重ねた末に憎き敵を成敗するという時代劇特有のカタルシスにも溢れており、全8話があっという間に過ぎました。例えば主人公が味方の裏切りによって奴隷の身にまで落とされ、「さて、どうなる」となっても、次の回には救援が始まるという手際の良さ。かといって描写が不足しているわけでもなく、視聴者に伝えるべき感情はきちんと伝えられており、時間の使い方が上手いなと感心させられました。
また、ドラマ面においても本作は充実しています。前シーズンでは一匹狼だった主人公が成長して組織人となるのですが、上司とうまく折り合えずに実力を発揮しきれないという点には、多くのサラリーマンが共感できるのではないでしょうか。他のサクソン人とは異なるアイデンティティを持つという自分自身では変えようのない背景から、前シーズンでの態度の悪さという自分の行為のツケとも言える要因に至るまで、実に多くのしがらみが彼を苦しめ、窮地に追い込みます。また、「あいつは実力があるのだから使い続けましょうよ」と支持を表明してくれる同僚もいれば、批判者側に回って敵以上に厄介な障害となる味方も現れる。この辺りもあらゆる組織に当てはめて見ることが可能であり、ドラマの間口の広さにも感心させられました。 問題点は前シーズンと同じく、英国史に名を残す名君・アルフレッド王に威厳やカリスマ性が感じられないこと。感情的な理由から優秀な主人公を邪険に扱っているようにしか見えないのですが、実際には、七王国を束ねるためにキリスト教というすべてのサクソン人に共通する精神的支柱を強く押し出すという大きな戦略が彼にはあり(だからこそ、バイキングであっても後に改宗した者には寛大に接しているわけです)、そうした文脈の前では、頑なに異教を手放さない主人公を重用するわけにもいかないという事情があったはず。善悪では割り切れないそうした難しいジャッジを視聴者にも突き付け、「あなたがウェセックス王ならどうしますか」と考えさせることでより深みのあるドラマになりえたのに、そこが放棄された点は勿体ないと感じました。 【ザ・チャンバラ】さん [テレビ(吹替)] 7点(2017-08-05 22:48:28)
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