みんなの連続ドラマレビュー |
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8か国9都市でロケーションを行い、イギリス・アメリカ・アイスランドはウォシャウスキー姉妹が、メキシコシティ・ムンバイはジェームズ・マクティーグが、ベルリンとナイロビはトム・ティクバがそれぞれチームを率いて監督し、それらをアメリカにいるJ・マイケル・ストラジンスキーのチームがひとつにまとめあげるという極めて高コストな作品となった上に(一説によると、ゲーム・オブ・スローンズをも超える製作費がかかっている)、複数の感応者がシンクロする部分では同じ場面を各国でバラバラに撮影して編集で繋げるという異常に複雑なプロセスで作られた作品なのですが、優秀なクリエイター達がそれほどのコストと労力をかけて作り上げたことから、かつて見たことがないと言い切れるほどの斬新な作品に仕上がっています。
やはり、ウォシャウスキー姉妹の物語をまとめる力・伝える力は凄いと感じました。映画『クラウド・アトラス』でも複雑に絡み合うエピソードを混乱なく見せるという驚異的な仕事を披露していましたが、本作では主人公8人の個別のドラマが時に交錯し合いながら同時に走り、その上に闇の組織との対決というシリーズを貫く大きなドラマが乗っかっているという、さらに複雑な構成となっています。これを視聴者の側でさほどの苦労をする必要もなく理解できる形にまで落とし込めているのだから驚かされました。 また、SFでありながらセクシュアリティや信仰といった現実社会のテーマが深く描かれているのですが、これらのテーマを視聴者にも理解させ、問題提起をするということにも成功しています。特に性的マイノリティが抱える苦悩をここまでわかりやすく、かつ、感動的に描いた作品はそうそうないと思います。 さらに、『マトリックス』のクリエイターだけあって、バカバカしくもかっこいい見せ場もきちっと作れており、要所要所でエンタメ要素も効いています。リトがワイヤーアクションで銃撃戦を繰り広げる場面なんて劇中劇であることは分かっていても興奮させられたし、ヴォルフガングが親友に重傷を負わせたマフィアに復讐する場面なんて、ベルリンの街中でロケットランチャーをぶっ放すというありえない見せ場ながら、ここまでエモーションが高ぶった場面であれば少々の無茶をやっても視聴者は受け入れてくれるだろうという計算がきちんと働いています。見事でした。 難を挙げるとすれば、チーム戦としてはやや洗練されていないことでしょうか。八者八様の能力で互いの不足分を補い合いながら困難に挑むチーム戦を期待しながら見ていたのですが、チームに貢献するメンバーと貢献しないメンバーがはっきり分かれていた点はちょっと残念でした。アベレージの高い戦闘スキルに加えて窮地の仲間を救うために出張もこなすという行動力も持ったウィル。高い殺傷スキルを持ち、いざという場面での突破口を作る役割を果たすヴォルフガングとサン。得意のハッキングで作戦の立案と後方支援を担当するノミ。基本的に役立っているのはこの4人であり、カフィアスとライリーはトラブルに巻き込まれては仲間に救われてばかりだし、カーラとリトに至っては個人のエピソードが中心で仲間と絡む場面がそもそも少ないという状況になっています。戦闘能力の高い4人にも弱点はあり、戦闘では役に立たなかった残りの4人はその点を補うという関係性があればより良かったのですが、特にカフィアスとライリーは助けられてばかりなので、今んところ要らない人のように見えています。 【ザ・チャンバラ】さん [テレビ(吹替)] 8点(2018-06-29 19:03:07)
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