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1.  アレキサンダー 《ネタバレ》 
アレキサンダーの幼少からその死までを丁寧に描き、知られた挿話をほとんど盛り込み、大王の足跡を辿るだけでなく、心の内面にまで迫ろうという姿勢には好感が持てる。CGによりガウガメラの戦い、バビロンの街並み、インドでの密林戦などが見れただけでも満足で溜飲が下がる。特に鷹の目線を交えて大俯瞰で描いたガウガメラの戦いは見応えがあった。しかしながら人物像に関しては違和感があった。大王の言動があまりにも現代的過ぎるのだ。「自由、人種の融合」など理屈っぽい上に、よくしゃべり、よく悩み、よく泣く。人物像の真に迫ろうとするあまり、表現に力みがあるように思える。新解釈で描きたいという気持ちは分るが、所詮古代の人物である。数少ない資料から人物像を掘り下げるのには限界がある。現代の価値観で解釈を加えたところで説得力に乏しい。両親の愛に餓え、腹心の裏切りに怯えるという英雄の弱みを強調するより、英雄は英雄らしく描いた方が受け入れられやすいのは自明の理だ。蛇信仰に熱中して夫を憎む母の狂気や暴力的な父に対する反抗心や男色趣味を殊更強調しても意味はほとんどなく、混乱をもたらすだけだ。大王の東征が「人種の融合と調和」なのか「征服と支配」なのかを映画の中で解釈する必要もない。東征の遠因を「母から逃れるため」「父を乗り越えるため」と精神分析的に捉えるのはよいが、それは示唆する程度に留めておけばよい。一義的な解釈を押しつけても反発されるだけだ。こういう人物だと決めつけても、畢竟詮無いことだ。曖昧模糊たる「アレキサンダー大王伝説」を多元的に描き、笑いを交えるくらいの余裕が欲しかった。描き方に余裕が無いので観ていて疲れる映画だ。事実を羅列するにとどめ、解釈は観客に委ねるのが好ましい。各地に築いたアレクサンドリアの様子や如何に統治したかが描かれていないのが不満だ。軍事面だけでなく政治面も描いて欲しかった。大王の妃やペルシャ王妃をわざわざ醜女に描く意図が不明だった。
[DVD(字幕)] 8点(2014-09-03 05:09:43)(良:1票)
2.  アナと雪の女王 《ネタバレ》 
CGと曲の緻密さに比べて脚本の粗放さが目立つ。クリストフは子供の頃にトロールに相談をする王・王女・エルサ・アナを目撃しているが、その設定が活かされていない。クリストフがアナに一目惚れするというような展開なら面白くなった。トロールの説明がない。生態や能力、王とトロールの関係、何故クリストフはトロールに気に入られたのか等、疑問が多い。最大の疑問はエルサの魔法だ。どうして彼女だけ魔法が使えるのか、どうして魔法を自分で管理できないか、どうして冬の魔法だけ使えるのか。能力は両親から譲り受けたのだろうが、両親はあっさり遭難死してしまう。説明不足で世界観が確立されない。魔法で山が冬になったとき、クリストフが何故真っ先にトロールに相談しないのかというのも疑問だ。トロールは途中から登場しなくなるのも不満だ。彼等は魔法についてもっと知っているべきで、物語により深く関わってよい存在だ。アナとクリストフが魔女の宮殿に行きつくまでの冒険があっさりすぎる。。障害は狼の襲来程度。二人が相手を深く知り、真の愛に目覚める契機となる場面で、時間をかけてじっくり描いてほしかった。エルサが生物まで創り出せるのは問題だ。まるで神扱いで、生命の軽視につながる。雪だるまのオラフは、アナに真の愛情を示すような形で暖炉の炎に溶けて退場させた方がすっきりしただろう。生命を自由に創出できるのなら、ロボットのように、雪だるまが人間の代わりに働く奇妙な社会を想像してしまう。「魔法はいつかは解ける」という原則内の物語でないと安心できない。王子ハンスのまさかの豹変は意表を突いたが、過剰演出だ。ここで興味が一気に萎えた。観客に「まるで別人」と思わせるようでは脚本に問題がある。もっとうまいやり方はある。またハンスが、エルサを殺せば夏に戻ると短絡したのも理解に苦しむ。アナは自分が助かるのか、エルサを助けるのかの究極の判断を迫られたとき、エルサを助ける方を選び、その事が彼女を真の愛に目覚させ、心臓にかかった氷の魔法を除くことにつながった。しかし実際問題、アナとエルサは十数年も交流が途絶えていて、そのような環境で真の姉妹愛が育まれるかか疑問が残る。エルサが魔法を自由に使えるようになったのは真実の愛を知ったからだろうか?いずれにせよ、この映画だけでエルサを理解することは不可能だ。髪の毛一本一本を描け分けるCGほどの緻密な脚本であったなら。
[映画館(字幕)] 7点(2014-07-17 18:08:18)
3.  アベンジャーズ(2012) 《ネタバレ》 
単純な“ヒーロー勢揃いのお祭り映画”と思って鑑賞したが、予想に反して不明な点が多く楽しめなかった。 『マイティ・ソー』という映画の世界観に準拠しているようで、その予備知識無しでは入り込めない。 テザラクト、またはキューブと呼ばれるものが重要品目で、無限のエネルギーを秘め、異次元宇宙との入口となれる。研究所のキューブが暴走する場面から映画は始まる。中からロキが登場し、キューブを奪い去る。その目的はキューブで異次元との巨大な入口を造り、仲間の宇宙人に地球を強襲させるというもの。ロキとソーは兄弟で半神らしい。人類がキューブを保有した経緯は不明だが、武器として研究されていた。よくわからないが研究所は崩壊する。 国際平和維持組織S.H.I.E.L.Dは対抗手段としてヒーロー達を集める。ところが、最初に召集されたのが女スパイ。戦闘能力不足で、他のヒーロー達と同列できるものではない。 この後も疑問が重なっていく。 ロキの槍は他人の心を支配する能力があるが、途中から効力がなくなった。また支配された人間は殴られただけで正常に戻る。 ロキはわざとS.H.I.E.L.Dに捕まるが、その理由が不明。ハルクを操るためのように思えたが、そうではなかった。 ハルクは爆発衝動で暴走してしまうが、後半は理性で自分を制御できるようになっている。その説明がない。 世界観が違い、個性の強いヒーローを一同に会させ、それぞれのファンを納得させ得る物語を造るのは大変だと思う。本作品はかろうじえ合格点だが、不満もある。当初仲間割れしがちだったヒーロー達が心を一にする契機はS.H.I.E.L.D職員の死だ。それはよい。だが、そこにはS.H.I.E.L.Dチーフのカードの作為があった。これは不要だ。次に、敵を撃退する最終兵器が核だったこと。何と安っぽい!キューブに対して貧弱すぎる。それに政府が都市に核攻撃をするのを阻止する話はもう見飽きた。もっと斬新なものにすべきだろう。最も残念だったのは、敵に魅力がないということ。ロキはハルクに軽くひねられ、宇宙人は核ミサイル一発で木端微塵。ヒーローを引き立たせるためには強い敵でなければならない。ある程度感情移入できる程度に敵側のドラマを描く必要ことが、ラストへの伏線となる。科学の進歩に格段の差があるのだから、核兵器などもろともしない強敵であってほしかった。危機の演出には不満が残る。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-11 21:04:48)
4.  アイアンマン3 《ネタバレ》 
三作の中では最も良かった。常に緊張した場面や戦いがあり、中だるみの部分がほとんどみられないのがすがすがしい。 前作の反省を踏まえてか、トニーが精神病に悩み、克服する挿話と恋愛部分は最小限にとどめ、敵役との戦いを何段階にも描いているのが成功の要因だろう。子供を登場させ、物語を明るくしたのも成功の一因。やはりヒーローものは明るいのがよく似合う。 ところで敵役キリアンは何をしたいのか?彼はウイルスにより遺伝子を書き換え、脳の未使用領域を利用して人の能力を飛躍的に向上させる「エクストリミス」というバイオ・テクノロジーを完成させた。これにより、体温は3000度にまで上昇、肉体は鋼鉄のように改造され、、肉体の欠損箇所も再生可能な超人に生まれ変わる。一種の不死ともいえる。しかし体がウイルスを受け入れない場合は爆発してしまうという不完全なテクノロジー。荒唐無稽と一笑してしまえば物語が成立しないので、受け入れるしかないが、これなら「宇宙人が責めてきた」という設定の方がまだわかりやすかった。キリアンはこの素晴らしいテクノロジーを平和利用する気はなかったのか?テロを起こしたり、大統領を殺したりして、何をやりたい?彼の経歴から推して、社会に対する強烈な復讐心を持つとも思えないなど疑問が残る。前2作品はメカ対メカのシンプルな戦いだったが、今回はメカ対改造人間。改造人間は飛べないし、飛び道具も持たないのに対し、アイアンマンは遠隔操作できる上に、30数体も登場する。敵の目的が不明な上に弱いのでは話にならない。TV電波ジャックができるくらいの頭脳があるのなら、対アイアンマン戦略も万全にして戦ってほしかった。ヘリで家をミサイル攻撃するなど、おおざっぱすぎて感心しない。 トニーの恋人ポッツが、改造人間になり、アイアン・ウーマンになるのには笑うしかなかった。一種のファンサービスと割り切ろう。 SFアメコミヒーローものだが、やっていることは西部劇と変わりない。善が悪を倒すのだ。「かっこよさ」は西部劇に軍配が上がる。人間が描けているからだ。アイアンマンには真の困窮者も貧困者も社会的弱者も登場しない。荒唐無稽なヒーローと巨悪が存在するだけだ。頭を空っぽにして見る映画。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-01 23:15:22)
5.  アイアンマン2 《ネタバレ》 
前作では、巨大軍事企業の社長かつ天才科学技術者トニー・スタークが、テロ組織に拉致され間一髪のところで生還した経験から、自分の進むべき道を問い直し、会社の軍事部門を廃止し、戦闘スーツを身に着け世界を守るヒーローとしての活躍を始めると意思表示をするところで終る。 本編では、アイアンマンのおかげで各地の紛争は鎮静化され、平和が維持されているという場面から始まる。 ヒーローの活躍場面が省略されているわけで、物足りない。 代わりに、その余りの威力を危惧した国から、軍事兵器として接収されそうになるという、ヒーローの活躍に水を差すような展開になっている。 このヒーロー、飄々としているのは良いが、おちゃらけが過ぎるのが難点だ。 前回では拉致された際に受傷し、生命の危機に瀕するという真摯な場面があった。 だから、他の場面で見せるおちゃらけとバランスが取れていた。 今回は徹頭徹尾、おちゃらけ路線。これでは、危機が危機におもえなくなってくる。よって感情移入もない。 酔って踊りながら、群集の面前で火器を使用しての西瓜割りなどの危険行為も目に余る。 第二のアイアンマンも、トニー監視役の友人が、暴れるアイアンマンを止めようとして着用するというさえない登場の仕方をする。いわば仲間割れで、集中心が削がれる。 恋愛パートだが、毎度痴話喧嘩レベルの言い争いの繰り返しで新鮮味がない。秘書を社長にしたのはよいが、軍事会社が軍事をやめてなにをしているのか? 父親が遺したフィルムをヒントに新動力源を発見する挿話はよかった。冷めがちだった父親との絆を深め、人間らしい感情を取り戻した瞬間だ。 さて、ライバルだが、トニーの父親の元同僚の息子イワンが、父の研究を奪ったトニー父子に恨みを抱いているという設定。 独自開発した戦闘スーツでトニーを急襲するものの撃退される。しかしトニーのライバル企業のハマーに救出され、新兵器の開発に協力する。最終的にイワンはハマーを裏切り、新兵器軍団を伴ってアイアンマンを襲うという、どうにも複雑な展開。善対悪の戦いになっていない。この外にシールドやブラック・ウィドウなどが登場し、流れが途切れがち。これでは、いくら戦闘場面が魅力的であっても爽快感は得られない。スーツケースからの流麗な変身場面のみ印象に残っている。
[DVD(字幕)] 6点(2013-08-01 13:05:43)
6.  アルゴノーツ 伝説の冒険者たち(TVM) 《ネタバレ》 
ギリシア神話を基底とした旧作「アルゴ探検隊の大冒険」をリメイクしたTVミニシリーズを再編集したもの。ビデオ版は120分、DVD版は180分「完全版」。ビデオ版にて鑑賞。TV版ながらVFXの質は高めで、テンポもよく、有名俳優が目白押しなので観て損はない。 旧作では、人間は神々の恣意によって踊らされる存在であることが強調されていたが、本作では神々の登場は最小限に抑えられていて、人間による冒険譚として落ち着いて観れる。もっとも半神ヘラクレスが同道して大活躍するが、実に人間臭く描かれているので感興を削がれることはない。ただ短縮されているので、神が突如登場するなどの混乱はみられる。 神話では王道である貴種流離譚。高貴な血筋を引く者が、何らかの理由で両親や国から遠く離れた場所で暮らしていたが、やがて冒険や旅を通じて、本来の自分の地位、姿を取り戻すというもの。 本作品では弟の反乱により王が殺され、王の子のジェイソンは親衛隊長によって辛うじて城を脱出し、半獣人の国に住んでいたが、あるとき記憶を取り戻し、冒険の旅に出る。旅の目的は、何でも夢が叶うという黄金の羊毛を獲得すること。旅の仲間は、ヘラクレス、泥棒、驚異的な視力を持つ青年、元親衛隊長、野獣をも宥める音楽を奏でる楽士、ジェイソンを慕う幼馴染の女など多彩。クリーチャーは怪鳥ハービー、火を吐く巨牛、通る船を沈める島、骸骨剣士、羊毛を守るドラゴンなど、一部旧作と違っている。黄金の羊毛を守護する女魔術師がいるのだが、ジェイソンに恋をして味方につき、最後には結婚するところが目新しい。 ところで人間の夢を何でも叶えるという究極の宝であるはずの黄金の羊毛だが、最後になってどんでん返しがあった。ジェイソンが唐突に、「毛皮に魔力はない。みんながあると思い込んでいただけだ。そんなものに頼らず、運命は自分で切り拓け」などと言い出すのだ。肩透かしをくらうこと請け合いである。伏線が全くないのだから。無事王位に着き、結婚して、めでたし、めでたしの大団円で物語は終るが、中途半端な印象はぬぐえない。あえて黄金の羊毛の能力をちゃらにするのなら、何らかの事情で能力が失われたとすべきだろう。
[ビデオ(字幕)] 6点(2013-06-12 02:21:33)
7.  乱暴者(あばれもの) 《ネタバレ》 
戦後の米国は経済的に豊かとなり、50年代にはティーン・エイジャーと呼ばれる社会集団が登場した。彼らはそれ以前のどの世代の若者より多くの余暇と小遣があった。彼らの一部が社会の退屈な枠組みや価値観に反抗を示し、暴れる若者、反逆児となった。ティーン・エイジャーはその後、カウンター・カルチャーとして数々の社会現象を巻き起こしてゆくが、この映画はその黎明期を伝えるもので、社会文化史的価値がある。音楽で言えば、この映画封切1953年の翌年にエルビス・プレスリーがデビューし、その翌年には映画「暴力教室」の主題歌「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が大ヒットし、ロック音楽が確立する。この映画でもリズム・アンド・ブルースでスイングする若者の姿が見られる。主人公はバイク集団だが、映画のヒットでバイク人気に火が付き、その後バイク集団が隆盛を極める。ちなみにヘルズ・エンジェルスの結成は1948年。ファッションではTシャツと革ジャン。それまで下着に過ぎなかったTシャツをブランドが上着として着てみせたことで、新しいカジュアル・ファッションとして流行した。黒の革ジャンは反逆児のイメージとして定着し、シルバー・ビートルズも愛用していた。ジェームズ・ディーンはブランドにあこがれ、彼のように演じようと努め、1955年の「エデンの東」の好演技につながった。スピルバーグ監督は「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」で、主人公にブランドと同じ格好をさせ、オマージュを捧げている。 さて映画だが、当時としては上映禁止措置がとられるほどショッキングな暴力描写と反社会的内容だったものが、今見れば、たいしたことはない。バイオレンスと呼ばれるほどのものはなく、ヒロインがレイプされそうになる場面に煽情的なものを感じる程度。低予算のため、ほとんどがチープなセットで演じられ、特撮も貧相だ。それでも主人公が大人たちのリンチに遭う場面は緊張感がみなぎるし、ヒロインとのひりひりするような恋のやり取りは見所となっている。ほとんど感情を現さない主人公が、ほんの一瞬泣き顔や笑顔を見せるが、そこが大変印象的だ。だが個人の内面の描写は一切無く、どうして彼らが暴れるのかはあかされないまま。そこが弱いところ。それでも一見の価値あり。
[DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2013-04-10 01:09:01)
8.  アラバマ物語 《ネタバレ》 
原作者が少女時代を振り返るという設定。郷愁とは不思議なもので、米国の田舎町の物語なのに、子供たちが遊んでいる姿を見ると郷愁を覚える。このことがこの映画を親しみやすいものにしている。誰でも子供時代の思い出は宝物だ。 主人公スカウトは直情径行型。何でも思ったことを口にするし、納得できないことに対しては抵抗し、喧嘩も辞さない。父親似です。見ていて清々しい。子供の世界は世情の動きに関係なく、周囲の大人から守られています。ですから天真爛漫に振舞えるのであり、それを見る我々も癒される。それでも大恐慌の影響は忍び寄ってきていて、お金のない人や子供が登場する。少女は少しずつ厳しい現実を知って成長していく。前半のブーの居る隣家への冒険は重要な伏線。あれがあるのでブーは子供達のことを知り、好きになり、宝物を密かに贈る。ここで絆ができる。厳しい現実の最大のものは、無実の黒人が「白人娘強姦」で有罪にされること。公民権もなく、黒人差別が当たり前の時代ではよくあること。真相は娘が黒人を誘惑したのを知った父親ユーエルが娘を殴った。子供の世界から、法廷劇へと移るので少々とまどった。子供は裁判所に入れないはずだが、目をつぶる。少女は、白人から嫌がらせを受けながらも正義を貫く父親の姿に感動する。退出時黒人達が敬意を表して立ち上がるのは誇らしい。その後、被告は逃走して射殺されるというショッキングな出来事が起こる。そして最も長い夜が訪れた。裁判で嘘を暴かれたユーエルは逆恨みして、卑劣にもスカウトと兄を襲った。原作ではナイフを所持している。それを助けたのは、それまで姿を現さなかったブーだった。ユーエルはブーに刺殺される。保安官と父親は協議して、ユーエルを事故死として扱うことにする。正当防衛だし、内気すぎて世間の目に晒すのは不憫だし、責任能力もなさそうだ。少女もこれに同意する。「妥協とは話し合いで分かり合うこと」という父の言葉を理解したのだ。そして「相手の立場になるとは、相手の靴を履いて歩き回ること」と教えられたが、ポーチに立っただけで理解できるまでに成長した。「良い音色を奏でるMockingbirdは決して殺してはならない」のMockingbirdはブーのこと。ちなみにスカウト達は一度黒人の命を救っている。白人達が留置所の黒人を襲おうとしたときに、割り込んで入って、一席ぶったあの場面だ。
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-21 00:41:24)
9.  赤い河 《ネタバレ》 
カウボーイの生活はよく知らないので興味深く見れた。9000頭の牛を青森から山口にあたる1400キロを100日かけてゆっくり移動させる。アフリカの200万頭のヌーの半年かけた大移動に比較すればおとなしいものだが、苦労は耐えない様子だ。牛の暴走シーンは白眉だった。南北戦争の影響で牛の価格が下落したので、隣の州に売りに行くのだが、そんなに価格の差に違いがあるのかという疑問がある。5セントと2ドルで40倍もの差がある。テキサスでは牛は五万といるのに、隣のカンザスやミズーリーにはいないのか?そのあたりの背景がわからなかった。主人公のダンソンは問題を銃で解決するタイプ。人の土地を奪っておいて、奪いにきた人は殺す。契約に反して隊から逃れようとした仲間も射殺する。現代の感覚からは理解しかねるところだ。14年の間牧場作りに明け暮れたわけだが、どうして結婚しなかったのか。亡くなった恋人に操を立てるタイプとも思えないが。養子のマシュウは演技力不足で、カウボーイに見えない。ライバルの若者と銃対決をしたときに、ダンソンの相棒グレートが「きっと二人は対決する」と言うが、伏線のまま終わる。あれだけ伏線を張っているのだから必ずインディアンに襲撃されると予想していたが、予想ははずれた。最大のサプライズは、ダイソンとマシュウが敵同士になること。ダイソンの逆襲をあれだけ恐るのなら、彼の馬と金を奪っておけばよいと思ったのは私だけだろうか。ヒロインの女は、インディアンに襲撃されている最中にマシュウに怒ったり、ひっぱたいたり、理解不能である。最後の仲直りの仕方を見ても、所詮絵空事のようにしか見えなかった。いちいち歴史書を朗読するのは不要。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-11 08:35:35)
10.  アスファルト・ジャングル 《ネタバレ》 
荒涼とした都会の犯罪多発地域が舞台。不況のせいで庶民の生活は苦しく、心は荒んでいる。そこへ出所した知能犯ドックが、周到に練られた宝石商強奪計画を持って現れたところから物語が動き出す。宝石略奪という大博打にかける六人男たちの行動と心理が鮮やかに描かれる。表情を常に正確に捉えるライティングや端正に構図を決めるカメラワークは好印象。緻密な計画だが、弁護士があらかじめ裏切りを決め込んでいるなど、不確定要素を含んでいてサスペンスが持続する。うまい脚本だ。舌を巻くのは各人の掘り下げがきちんとできていること。個性豊かなのが嬉しい。全員根っからの悪党ではなく、善人の部分と精神の弱みを併せ持つところが味噌。実に人間らしいのだ。ドックは頭脳明晰で大胆かつ紳士だが、若い女性に弱く、失敗は偶然のせいにして反省しない傾向が強い。そのため自滅する。用心棒のディックスは競馬狂いで強盗常習犯だが、子供時代に育った農場を買い戻す夢を捨てていない。そっけないが、約束は守り、女性にも親切だ。資金提供者のエマリックは悪徳弁護士で高利貸しだが、若い娘を囲うなどの散財で破産の憂き目にある。それでも病気の妻への愛情は持ち続けていて、最後は自責の念から自殺する。金庫破りのルイは風邪をひいた自分の赤子を気遣う、良き父でもある。運転手のガスは食堂経営者だが、せむしで小男のため世間からは冷たい目で見られている。金に困っているディックスに金を融通するなど、友情に篤い面がある。賭博業者コビーは大金を見るだけで汗をかくという気弱な性格。これに賭博業者と結託する悪徳刑事とディックスに思いを寄せる女が絡むのだから、面白くないわけがない。犯罪撲滅に苦慮する警察側の様子も描かれるという丁寧さ。まだ無名のマリリン・モンローが花を添えるという贅沢さもある。監督が描きたかったのは、犯罪そのものではなく、犯罪を生む風土だ。死人の出る犯罪映画だが、過激で扇情的な演出や痛快なアクション、美男美女の織り成す恋愛などの現代映画的な要素はなく、むしろあっさりしている。これは時代の制限であり、監督の良心でもあるのだろう。古い映画だが、今でも映画作りの手本になる映画だ。
[DVD(字幕)] 9点(2012-12-10 15:48:17)(良:1票)
11.  アンストッパブル(2010) 《ネタバレ》 
ちょっとした手違いから、39両編成もの貨車列車が暴走を始めてしまった。止めなければならないが、会社が手を尽くしても止めることができない。このままでは大きな被害がでるという危急存亡のときに、機関士と車掌の英雄的行為により止めることに成功する。表面的にはそういう内容だ。だがこの映画は、暴走列車をただ止めるだけの単純な痛快アクションではないと思う。それだけで精神の高揚や感動は得られないからだ。どうして感動するのか?それはどうして主人公二人は、敢えて自らの生命の危険を冒してまで、暴走列車を止めようとしたのか、という問いに集約される。その答えは「人の命を救いたい」という本能に基因するものだろう。特別な人間でない、ただの鉄道職員が、ある日英雄になるのはそのためだ。特に救う命が自分の家族であったり、大勢であれば自らの死も厭わないと考える。これが人間の本質だと思うし、思いたい。この素朴な生命尊重の倫理が、観客の根底に備わっているので感動するのではないか。勿論、ベテラン機関士の会社への意地や若手車掌の家族を守りたいというドラマ部分での感動の底上げもある。加えて、危機感を煽るために、暴走貨物には可燃燃料と有毒化学物質が大量に積載されており、脱線必至な町郊外の急カーブ地点付近には石油コンビナートがあり、もし脱線すれば大変な被害が予想されるという過剰設定もある。しかしそれらを省いたとしても、感動の本質は変わらないと思う。観客は無意識に、暴走列車の圧倒的な重量感、疾走感に、命の危うさ、大切さを感じ取っているのではないだろうか。轟音が心臓の音、疾走する姿が生命の躍動に見えてくる。そしてもし事故が起ったら死ぬであろう大勢の人のことを想像してしまう。だから、つい手に汗を握って観入ってしまうのだ。こう考えると、この映画は、やはり単なる暴走列車映画ではなく、人間の本能、本質に訴えかける人間賛歌の映画だと思えてくる。◆余談だが、列車の脱線は簡単にできる。アラビアのロレンスよろしく、ダイナマイトで線路を爆破すればよいし、そんな大げさでなくても、松川事件のように犬釘を抜いて、ボルトを緩めるだけで脱線転覆する。脱線装置という効果あいまいなものに頼る必要なないと思った。監督の冥福を祈ります。 
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-09 20:01:08)(良:3票)
12.  ATOM 《ネタバレ》 
脚本が非常にちぐはぐで興行的に失敗したのも納得。物語は4つの要素で成立。①天満博士とアトムの親子愛。博士は息子を亡くした喪失感からアトムを産みだす。だが息子の代用にならないことを悟りアトムを拒絶する。戻ってきたアトムの優しい心に触れ(トビーになれなくて御免)、最終的にアトムを認め、和解する。特に問題はないが感動もない。②新エネルギー、ブルーコアをめぐる大統領の陰謀。ブルーコアは地上軍と戦うロボットの為に必要らしいが、地上軍は登場しないので詳細不明。天満博士が戻って来たアトムからブルーコアを取り出すが、大統領に渡すのを拒否し又戻す。その動機が不明。③ハムエッグのロボットに対する酷い仕打ち。ロボットは人間の奴隷と考える。天満博士を憎むあまり、アトムをデスマッチに参加させる。一方でロボットを修理したり、子供たちの親がわりになる優しい面がある。優しい人と見せて実は悪人という意外性を狙ったのだろうが失敗。キャラが確立していない。④アトムが成長して自己同一性を確立。人間でないことを知り、悩むが、最終的に人間、ロボットともに仲間ができる。天満博士にも受容される。自分の居場所を確立。極普通。◆世界観が描けていないのが最大の欠点。空中都市と地上との関係は?地上が汚れて空中都市を作ったにしても交流が全くないのは不自然。それに地上は緑豊かに見える。お金持ちしか空中都市にいけないという発言があったが、お金があれば住めるのか?廃棄ロボットはリサイクルすれば良いのに何故地上に捨てる?地上軍の存在の有無が不明。又何のために戦争するのか?結局両者の対比がうまくできていない。地上は自然と共生する素朴社会、空中都市は高度な文明などにすればよかった。デスマッチなどは空中都市の住民がすること。◆アトムは自己犠牲精神で、大統領ロボットとの相撃ち自爆を図るが、あれではロボットに握られた車中の子供や町が爆発に巻き込まれてしまう。思慮に欠ける行為である。それに町を破壊しすぎ。◆アトムは落下する空中都市を支えるが、あの小さな体ではどう考えても無理だし、都市の反対面(地上側)は全滅している。◆地上の少女が空中都市の両親と再会するが、どういう経緯ではぐれたのか不明。◆ロボット革命団は登場シーンが多いのに物語の本筋に絡まない。◆ロボットものは造詣が全て。かっこ悪いロボットばかりでげんなり。
[DVD(吹替)] 5点(2011-12-01 13:40:21)
13.  アンナ・カレニナ(1935) 《ネタバレ》 
アンナ(A)は夫カレーニン(K)、息子セルゲイ(S)と平穏に暮らしていた。軍人ヴロンスキー(V)がAに一目惚れ、人妻と知っても恋の炎は消えない。当惑していたAもいつしかVの愛情にほだされ、Aを愛していることを告白する。二人の関係は噂になり、最初は気にもかけなかったKだが、落馬したVを気遣うAを見て不貞を確信する。Kは妻を責めるが、妻の気持ちは変わらない。かえって仕事と世間体ばかり気にする夫を責める始末。二人の間にもともと愛情はなかったのだ。怒った夫は離婚は許さず、家を追い出し、息子に合わせないという。一方Vは将軍からこれ以上醜聞が続くと退役させるとの警告を受ける。Vは軍隊より愛を選び自主退役する。AとVは欧州へ旅行に出かける。自由と心の解放を感じていたAだったが、Sのことを考えると憐れでならない。二人は帰国する。AはSに会うが、Kに見つかり、出入り禁止となる。二人は社交界から締め出されていたが、Aが勝気なところをみせ、堂々と二人でオペラに出かける。Vは無為の暮らしに不満を覚え、義勇軍に参加し軍隊復帰する。それを聞いたAはVの心が自分から離れてしまったとのを嘆き自殺する。今は天国で安らいでいるだろうと慰める共に、「誰が知るだろうか」と自問する。 ◆Aの兄嫁の妹キチィはVとの結婚を夢みていた。しかしVがAに恋してしまったので、地方地主リョーヴィンの求愛を受ける。 ◆Aの兄スティーヴァは妻を愛しているが、女遊びがやめられない。妻を愛することと、愛人を愛することは別の事だと信じている。スティーヴァの妻は半ばあきらめ、泣き寝入りの日々を送っている。 【感想】原作では恋のため不貞を犯し悲劇的な死を迎えたAと望まぬ結婚をしたが子供に恵まれ幸福に暮らすキティを対比して描く。そして不倫は罪だが、享楽にふける世間(貴族)にAを責めることができるのかを問う。表情や感情表現に乏しい女優のせいで物語は盛り上がりもなく、淡々と進む。AがVの子供を産み、Vが苦しんで自殺を図るなどの挿話を省略しているのも響いている。Vは真実の恋を見つけたと信じ、Aもそう信じた。二人は世間体を気にせず、自分達の気持ちに正直に生きようと誓った。恋の炎を燃え上がらせる二人。だがそれは様々な苦悩を生み出す源泉ともなった。やがて二人の心は離れ、Aは自殺、Vも戦場へ赴く。そういった壮大なドラマの一端しか窺えない。 
[DVD(字幕)] 5点(2011-09-23 16:11:22)
14.  熱いトタン屋根の猫 《ネタバレ》 
【制作メモ】リズ26歳。妻役に惚れ込み自ら売り込む。制作中に夫が不慮の事故で逝去。1月程撮影中断、心痛で5キロ痩せる。前半の肉感的なセクシーさが後半には無いのはそのため。原作では次男と親友はゲイの関係だが、当時のプロダクション・コードの規定でそれは表現できなかった。自信ゲイであった原作者はこれに激怒。【次男】裕福な家庭に育ち、両親から愛され、美貌の妻を娶り、アメフトの花形選手。だが幼馴染で相互依存関係だった親友の自殺で人生が暗転。妻と親友の不倫を疑い、死に関係していると怪しみ、同居離婚状態。父親から愛されたことがないと感じ、愚昧な兄夫婦を蔑視。世界は虚偽に満ち溢れていると思い込み、失職、アル中に。【父】傲慢、専制タイプ。浮浪者の父を恥と思う。がむしゃらに働いて成功を収めた。妻を愛したことは無い。長男とは馬が合わず、次男を溺愛する。余命幾許も無いことを知らされる。【長男】従順、小心者。父に愛されず。美男美女の弟夫婦と対照するように正反対に描かれる。【感想】密室劇のような重苦しさ。回想シーンを挟まず、すべて会話により進行。鑑賞後爽快感が少ないのはそのため。◆表向きは仲良しだが、心の底では愛しあっていない家族。父の余命が宣告される。常に自信満々の父も死に直面し、さすがに落ち込む。そこに感情の隙間が生まれ、人生を絶望している次男と心を通わせることができた。そもそも余命を知るきっかけは、次男のことを心配し、真相を解明しようと懸命になったことだった。◆父は父を恥と感じていたが、本当は愛し、愛されて幸福であったことを思い出す。妻から愛されていないと感じていたが、そうではないと気づく。子供を愛していたと思っていたが、上辺だけだったと思い当たる。◆次男は親友の死を妻のせいにしてきた。だがそれは自分に責任があることを認めないための逃避だった。◆長男は父の愛を得られなかった腹いせに父の財産を狙っていたが、父のことを本当に愛していたことを知る。◆意表をつくのが次男妻から父への妊娠しているという嘘のプレゼント。虚偽だが相手を思いやっての嘘は美しい。父は嘘と知りつつ喜ぶ。長男も受け入れる。虚偽もまんざらではないと気づいた次男は妻を許す。この閃きが原作を名作たらしめている一因だろう。人生や家族関係は難しいが、このような奇跡も起こり得るのもまた人生である。
[DVD(字幕)] 7点(2010-12-03 14:48:28)
15.  アリス・イン・ワンダーランド 《ネタバレ》 
原作はナンセンスが持ち味。ナンセンス詩やギャグが満載。登場人物がみなおかしい。女王が頭でっかち、兵隊がトランプ、猫が笑って消える。読む人を煙に巻く内容。映画では「その後のアリス(A)」を描く意欲作。結婚という親の引いたレールに乗るかどうか迷うAが、ワンダーランドを再訪。Aはワンダーランドは夢だと思っていたが、実在することを知り子供時代の冒険心を取り戻す。現実に戻り進むべき道を発見する。作品の意図はわかります。 ナンセンスはそこそこあり笑えます「机と鴉が似ているのは何故」「首をはねてくれ、(さもないと)殺される」「朝飯前に6つのMで始まる問題を考える」など。ただ弾けるほどではない。イカレ帽子屋、ヤマネ、青虫、双子などサブキャラは十分な働きをしている。正義感の強いヤマネ、青虫の教訓、帽子屋の「自由の舞」など。赤女王が仰向けになったブタで足を休めるところがツボだった。素晴らしいセンスだ。欲を言えば、もっと「場」やストーリーをかき乱すキャラ(トリックスター)がいれば楽しくなっただろう。混乱してあらぬ方へ行けば行くほど「沸騰」するはず。 キャラを善悪に分けて戦わせるのは問題あり。本来の持ち味である「おかしみ」が消えてしまう。兵隊なのに薄っぺらなトランプであるところが笑えるところ。本当に強そうに見えてはだめ。「首をはねろ」がギャグでなくなってしまう。訳のわからない連中が好き勝手なことをやっていて、理屈は通らず、それが楽しいのだ。 少年なら剣をもって龍と戦うこともあるだろうが、大人になったとはいえ少女Aのすることじゃない。理不尽や無理難題を言う相手に対して知性やウィットでやりこめるのが本来の姿。 預言書なる絵巻物は不要。Aが龍を倒すのが決まっているのならAの存在意義は薄れてしまう。Aがアイデンティティを確立するためには何らかの通過儀礼が必要で、予定調和では感情移入すべくもない。 独断専行の赤女王を懲らしめるのはいいが、白女王を君臨させることに意義が見つからない。白女王は何者も殺さないと誓っている点が美徳だが、どこか怪しい雰囲気がある。そういう意味ですっきりしないのだ。もうひとつヒロインに魅力が無いことも指摘しておこう。年増に見える。 蛇足だが、貴族の求婚を大勢の前で行う慣習があるのだろうか?それも花嫁だけは内緒にして。大恥をかきたいのか?それとも断られることは考えられないのか。
[映画館(字幕)] 6点(2010-06-17 17:07:55)
16.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 
【男】本来の自分を見失い、強い脱力感。中年の性に目覚め、昔の青春を取り戻したいと願う。筋トレとジョギングで鍛え、いやな仕事を辞めバイト生活。妄想と麻薬でハイ。あこがれていた車と無線カーを購入。家族に本音を話す。心の解放に成功したがその報酬は高くついた。娘と妻から憎まれ、挙句に死。 【妻】娘時代貧乏だったので、人一倍物質的豊かさにあこがれる。心の潤いをなくしセックスレス。常に成功のイメージを持つ。浮気を経験。家庭を壊す夫を殺そうとする。 【娘】会話のない家庭に嫌気。両親を憎む。自分を変えたいと思っている。思春期の情緒不安定、混乱。豊胸手術のお金を貯めている。自分を変えてくれる誰かを欲している。 【娘の恋人】ジャンキーでヤクの売人。ビデオマニア。死に美を感じる。死は神に近づく瞬間だから。父には従順。家を出る決意をする。娘の孤独さに魅かれる。 【大佐】DV親爺。ナチ崇拝者。ゲイを嫌うが、それは自分の中にゲイの素質があるのを抑圧しているため。息子をしごき育てようとする。 【大佐の妻】夫に従順なだけの生活で、生きる屍。 【娘の友】平凡が大嫌い。特別な自分でありたい。モデルを目指す。遊び人を気取っていた少女が実は処女だった。あるいは処女のふりをした。 【感想】死者が語る物語。死後は美のあふれた世界などと死の礼讃ともとれる。ゲイ、不倫、銃、麻薬、酒、暴力、セックスなどの混沌とした世の中、死だけが荘厳で美しく見えるのかもしれない。高度に発達した文明社会への批判。誰が主人公の男を殺すかというサスペンス仕立てにもなっている。冒頭の「父を殺して」と語る娘のビデオがミスリード。DV親爺による勘違い殺人のオチは納得いかない。播いた種は刈らねばならない方式でないと深みがない。アメリカン・ビューティは虚飾の象徴で、妻が庭に植え、食卓に飾ってあるもの。風に舞うビニール袋は自由な魂の象徴。人は失って初めて自分の持っていたものの価値に気づく。男は自分を「既に生きてない」「人生の敗残者」と思っていたが、自分の家庭、自分の人生は幸福なものであったと悟る。妻は夫を失って号泣。娘の友は処女を失いそうになり、初めて等身大の自分に戻る。娘はヤク中の男と家を去るだろうが、一緒になっても幸福にはなれない。大佐は刑務所行き。計算された映像や脚本はよく出来ていると思いますが、病的な部分が多いので好きになれません。
[DVD(字幕)] 8点(2010-06-09 23:31:28)(良:1票)
17.  アバター(2009) 《ネタバレ》 
キャメロン監督は前作「タイタニック」のあと、ドラマ「ダークエンジェル」を製作して一線を退き、3D技術の開発に意欲を燃やした。苦節10年で技術が完成、ようやく製作された本映画。予告ではダメ映画の予感がしたが、実際観てみると驚嘆するほどの出来栄えに溜飲が下がる思いがした。脱帽である。娯楽性と芸術性、人間ドラマが融合した完璧に近い脚本に拍手。バランスの取り具合が絶妙なのだ。ハリウッド娯楽SF作品によくあるジョークやおしゃらけなど微塵もない真摯な作品で、どちらが善悪ともいいがたく、自然と共生するとはどういうことかを深く考えさせる哲学的な要素が作品に深みを加えている。脊髄損傷で歩行できない主人公が、アバタープログラムにより、自由に動けるようになり、新し人生に踏み込むという設定がよい。それだけでカタルシスを得られるのだ。トルークマクト(大龍)や父から貰う弓矢などの伏線もうまい。そしてキャメロン監督が得意な、しつこいほど続く戦闘シーンも健在で嬉しくなる。これが成功の第一の要因。次は美術。異星の多種多様な生物群、自然景観が美しい。どれも独創性が高く、大変洗練されている。龍に乗った飛翔シーンだけも一大スペクタクルである。これを見るだけでも価値があろうというもの。そして3D技術の見事さ。映画史上に残る金字塔を打ち立てたと思う。3D元年と言われるが、これを超える作品がいつ出てくるのやら。2Dを含めても、何年も待たされそうだ。■不満もある。「もののけ姫」「ナウシカ」「ダンスウィズウルブス」のいいとこどりのように見える。大佐やおばか上司など悪者キャラが典型的すぎる。もっと人間味を出せばずっと良くなった。彼らの言い分に斟酌すべき要素を持たせ、時に良心の呵責を起こさせるなど人間臭さを出すべきだったろう。これでは「もののけ姫」「ナウシカ」の表面しかなぞっていないと言われても仕方がない。力と力の戦いになりすぎているのは残念。自然と人間との戦いという要素がもっとあれば、壮大な抒情詩になっただろう。樹同士のネットワークや女博士が死んでエイワと一緒になったなどの伏線は張られていたのだから。動物たちが援軍に来るだけでは物足らない。最後は大団円というわけではなく、あれではまた地球から攻めてくるなと不安が残る。続編への伏線なのだろうか。■文句なしの10点。この映画を映画館で見たことを誇りに思います。
[映画館(字幕)] 10点(2010-03-03 11:53:31)
18.  アビス/完全版 《ネタバレ》 
海底エイリアンとの遭遇は取ってつけたようなもので、メインは、おバカ軍人の核弾頭に対する異常な行動とロシア人がいると勘違いしている海底への核攻撃の後始末。全くありえない話で、物語にのめり込めない。後半から海上の人間の様子が全く映らなくなり、ドラマに深みがない。サイド・ストーリーの離婚危機にある中年夫婦が愛を取り戻す話は、人間が描けてなく薄っぺら。「脚本入門」に書かれてあるような典型的な話で、退屈だ。クライマックスはいくつかある。最初は嵐でクレーンが落下する場面。次にリンジーが仮死状態から蘇生するところ。そしてバッドが深海に潜り、核弾頭処理をするところ。四つ目は海底エイリアンの都市に入るところ。五つ目は津波の場面。最後に海底都市が浮上する場面。いろいろありすぎて散漫になっている。エイリアンとのコンタクトに焦点を絞るならば愚かな軍人などいらないのだ。エイリアンの立場で考えてみる。彼らは人間が核実験するのに対して怒り、戦争を繰り返す人間性に失望した。そして原子力潜水艦を襲い、沈没させた。さらに嵐を起こし、核回収作業を邪魔した。最後に大津波を発生させたが、これは人類への警告の意味で、途中で止めた。止めたのはバッドとリンジーの愛のやり取りに感動し、人類を見直したから。彼らの本質は愛のようだ。だはなぜ潜水艦を襲ったのか?核弾頭を始末しないのか?謎が残る。影像はそこそこ見せるのだが、主題が古くて、陳腐で、どうしようもない。感動させるものがないのだ。リンジーが蘇生するところは心動かされるが、それは人間の命が戻ることへの感動であり、映画の感動ではない。バッドの自己犠牲も、深海3000メートルの核弾頭を解除する意味がよくわからないので、感動できない。放っておいてさして問題ではないだろう。危機に瀕しているとは思えないのだ。リンジーのキャラが魅力的ではないのも欠点。彼女がもっと超人的な活躍をしたり、夫を奇跡的に助けるのであればよくなっただろう。彼女は、わざわざ嵐の中をやって来た意味のだから、それなりに活躍の場がほしかった。観客は、主人公が悪党を懲らしめたり、危機から脱出するのに感動するわけで、愚かな行為の知り拭いや意味不明の核処理などには感動はしない。それにエド・ハリスの恋愛を誰が見たいか?冒険ものとしても、アクションものとしても失格。アビス(深淵)からは浮き上がれない映画だ。
[DVD(字幕)] 6点(2009-11-08 02:55:37)
19.  アリバイなき男 《ネタバレ》 
古いミステリー作品としては拾い物。観て損はない。元警察官のボスが立てた完全犯罪が興味深い。お互いに顔を知らないチンピラ三人を集め、現金輸送車強奪を決行する。銀行の隣の店に止まる花屋の車とそっくり同じ車を用意し、カムフラージュする。警察は花屋の車を追うので時間稼ぎができる。四人はマスクをしているためお互いの顔を知らない。金はほとぼりが冷めるまで隠匿しておく。実は紙幣の番号は知られており、そのことを知っているボスは警察に三人を逮捕させ、保険会社から出る高額報酬を目的としていたのだ。ボスはかつて担当した事件で誤解され、強制解雇された過去があり、警察をうらんでいた。だがボスの計画は少しずつ。それは嫌疑をかけられた花屋のジョーが、自らの潔癖を晴らすために事件の真相を調べ始めたからだ。わずかな手がかりだけを頼りにメキシコに飛び、犯人の一人にたどり着く。このあたりまで無理がなく、脚本は冴えている。その人物は運悪く警察に射殺されてしまうが、その人物になり代わってボスの指定した場所に出向く。お互い疑心暗鬼の三人。ボスはジョーの正体が分からない。最高に盛り上がるサスペンス。それにジョーとボスの娘との恋愛がからむ。ラストは”ぬるい”が、最後まで持続する緊張感は見事。尺は短かめ。ボスとその娘、ジョーの過去を紹介し、その人間像を深く掘り下げれば名作になり得ただろう。ボスにもジョーにも”古傷”があるのだが、未消化のまま終る。ジョーと娘との恋も唐突すぎる。だから感動しきれない。リメイクしてほしい作品。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-25 02:08:42)(良:1票)
20.  アニー(1982) 《ネタバレ》 
孤児のアニーと大金持ちのおじさんの友情物語。アニーは好奇心旺盛で、何度か脱走を試みるほど。明るく、気が強く、ケンカじゃ男の子にも負けない。そこを秘書に気に入られておじさんの屋敷へ。おじさんがアニーを気に入るようになる過程はすごくよかったと思います。子供が無邪気に自由に遊んで、自分の意見をずけずけ言うのを見ると癒されますからね。まして寝かしつけたりしてやったりすると親しみ倍増。おじさんの生育暦を考えると、養子にしたくなる気持ちはよくわかります。敵役はオバカキャラなのに、最後シリアスな展になってしまったのは残念。こういう子供向けミュージカルでは、困難に対しては子供達が知恵と勇気を振り絞って切り抜けるか、見事大人を出し抜くのが王道。アニーが「助けて、助けて!」と連呼するだけというのは芸が無いでしょう。アニーがおじさんを危機から救うぐらいの展開にしてほしかった。事実おじさんは過激派に殺されそうになる場面がありました。歌ですが「トゥモロー」は名曲ですが、あとはパッとしません。アニーを含めて、ほぼ全員歌はうまくないですね。ダンスもパンツが見えたりして品がありません。それにしても孤児院の生活ぶりがショックなほど悲惨で、当時の孤児院の子は惨めな生活を余儀なくされていたんだなあと悲しい気分になりました。もっと明るく描いて欲しかったです。アニーだけ幸福になっていいの?原作に忠実なだけなのでしょうが、現代に合うように脚色して欲しかったです。
[DVD(字幕)] 5点(2009-10-11 21:03:11)
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