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1.  第9地区 《ネタバレ》 
異星人についての考察。宇宙船が動かないのは燃料不足だろう。栄養不良に陥っていたことも考慮すれば、何らかの事故が発生したと考えるのが妥当だ。地球まで1年半の旅程。地球に来たのは偶然で、漂着した可能性がある。蟻などの社会性昆虫に似た生態で、知的で命令を下す管理層と命令通りに動く労働層に分かれている。管理層の生き残りはクリストファー(C)のみ。彼は司令船を土中に隠し、密かに液体燃料を集め、帰還の日を待望している。労働層は知能が低く、暴力的で、社会生活に順応しない。しかし、武器に関する知識は豊富で、様々な武器を作りだす。武器は使用せず、専ら猫缶と交換する。異星人は、戦争や暴力を日常的に行っている交戦的な文明と思われる。命令がないので人間に攻撃しないのだろう。搭乗人員が非常に多いことから移住が目的か、あるいは文明を持つ惑星を支配下におきに来た可能性もある。繁殖力は高く、180万人もいる。難民認定され一応保護されているが、居住地はスラム化し、人間のギャングに搾取されている。 不注意によって液体燃料を浴びたヴィカス(V)は徐々に異星人に変態していく。液体は、遺伝子に作用を及ぼしているので、明らかに生物由来のものだ。異星人の本来の姿は別で、液体燃料で変態しているのかもしれない。CがVを宇宙船に戻れば元の姿に戻せると言うのだから、その可能性はある。 Cは人間に似た感情を持っていて、実験にされた仲間を見て「仲間を実験材料にしない。惑星に帰り助けを呼ぶ」と決断している。3年後には全員を助け出すのだろう。 Vは、温顔で物腰柔らかだが、役人気質に凝り固まっており、利己的な人間だ。異星人の卵を大量に焼却して笑っている。自分が助かるためには人間相手でも武器を乱射する。Cから3年待てと言われると、Cを殴打して、自分だけ司令船に乗り込む。それでもCが拷問を受けて殺されそうになると見捨てることができずに救助の手をさし伸べた。悪い人間ではないのだ。CとVが心を通じあえたことで、Vが再来した時には、両文明間で友好関係が持てることが期待される。造花の薔薇は未来への期待だ。Vという小市民を主人公にすることで、人類の愚かさを浮き彫りにしている。いくら上辺で善人を装っても本音は違うのだ。不満点。異星人の姿と生態が気持ち悪すぎる。Vは人を殺しすぎ。人類が宇宙船を調査しないのは不自然。
[DVD(字幕)] 8点(2015-02-05 23:52:28)(良:1票)
2.  タワーリング・インフェルノ 《ネタバレ》 
超高層ビルで火災が発生し、逃げ場の無い最上階の人達をどう救助するかというパニック映画。パニック映画ということを忘れさせてくれるほど濃厚な人間劇が展開される。特撮よりこちらの方が白眉だ。死を覚悟し、自分は詐欺師であると告白する老詐欺師。それを聞いて「知っていたわ」と許す未亡人。鎮火後、老詐欺師は未亡人を探すが、彼女は転落死しており、助かった猫を渡される。これだけで一本の映画になる。密かな恋愛関係にあった上司と秘書。気付いたときは煙が充満していた。「昔は短距離選手だった」と、助けを呼びに駈け出した上司は火達磨になり、秘書も炎上転落する。二人の恋愛は誰にも知れることなく終わった。バーテンダーは非常時でも平常心で仕事をこなし、子供の面倒もみる。地味だが忘れがたい存在だ。火災の原因は、ビルのオーナーの娘婿が施工した手抜き工事と電線を規格以下に変更した所為だ。だがこれには、オーナーから経費節減を迫られ、実際、オーナーはビル建設で娘婿以上の上前をはねているという背景があり複雑だ。設計者ダグは、設計責任者でありながら数週間も旅行に出ていた。火災が発生してからスプリンクラーが動作しないとか、廃棄セメントで非常扉が開かないことを発見しても遅いのである。それでも彼は八面六臂の活躍で、人々の救助にあたる。その中には彼の恋人もいる。消防隊長は給水塔の爆破を命じられるが、戻る手段のない危険な任務だ。男らしく唯々諾々と従うが、胸底では自分の運命を呪ったことだろう。火災が次々と延焼拡大し、それに従って救出手段が変るところが事新しい。内部エレベーター、展望エレベーター、屋上に救助ヘリ、隣のビルへワイヤーで吊るす救命籠、ヘリでエレベーターを吊り下げる。極めつけは給水塔の爆破による鎮火だ。よく思い付いたものと思う。この奇抜な着想がこの作品に命を吹き込んでいる。数分間に渡る爆発散水場面は圧巻である。火災原因が手抜き工事という人災という点が怖ろしい。対岸の火事ではなく、身近な問題として感じられるのだ。この点が、今日でもこの作品が新鮮さを失わない要因だろう。「今日は二百人の死者で幸運だった。いつか一万人以上の死者が出るだろう」の言葉には現実味がある。色褪せることのない傑作だ。文化の違いを感じたのは、事務所に寝台があり、情事を楽しんでいる点。違和感があるのは、女性が椅子で窓硝子を叩き割るところ。
[映画館(字幕)] 10点(2015-01-13 23:01:21)(良:1票)
3.  宝島(1950) 《ネタバレ》 
誰でも御存じ、冒険小説の代名詞的作品だ。物語は文句なく面白い。 だが遺憾ながら、本作は演出が淡白で古臭く、興奮・忘我・熱中からは程遠い。著しく興趣に欠けるのだ。 冒険をしているのはジム少年なので、彼を中心に、彼の視線を通じて描かれるべきだ。 子役の少年の演技力量不足が原因なのかもしれないが、監督は客観的な視線で「宝島」という物語を過不足なく描こうとしているように見える。 だが、物語などは荒けずりでもよい。ジム少年の興奮や感動が伝わってこそ、観る者が共感するのだ。 観客が自己投影するのはジム少年であって、物語や筋立てではない。 ジムは何度も驚くべき体験をし、危機に直面し、大人顔負けの英雄行為を果たしている。 ビリー・ボーンズの死に遭遇し、宝の地図を発見し、宝探しの航海に参加し、ジョン・シルバーの悪巧みを盗み聴きし、船長のスパイとなり、銃撃戦を経験し、人質となり、脱出し、船を座礁させ、ナイフで刺されながらも敵を射殺したりと、まさに八面六臂の活躍だ。 特に、林檎樽の中に隠れて悪人共の姦計を盗み聴く場面と、ナイフで刺される場面は、観客の感情移入のしやすい場面で、もっと時間をとってじっくりを描くべきだろう。この二つの場面でハラハラ、ドキドキしなければ、映画は失敗だ。 原作は改変され、シルバーはジムとの交流を通じて、いくぶん人間らしい心を取り戻すラストになっている。それはそれでよいが、それなら伏線が欲しい。 シルバーの成長を描きたいのであれば、彼の過去や人間性を描いておく必要がある。彼に子供がいたとか、自分の子供時代をジムに重ねる場面があるとか、そういう細部にこだわってほしかった。ジムにしても、父親不在で育ったので、父親像をシルバーに重ね、彼を慕うようになるとか、そういう要素があれば感動的だし、一層真実味がでるというものだ。映画にリアリティが生まれるのはそういう瞬間だ。それがあれば、忘れがたい作品になる。この作品は、すぐに忘れてしまいそうだ。
[地上波(邦画)] 6点(2013-09-10 01:47:22)
4.  第十七捕虜収容所 《ネタバレ》 
古い映画だが堪能できた。サスペンスとユーモアのほどよく融合した娯楽作品だ。機知に富んだ脚本の勝利だろう。 人物がきちんと描き分けられ、一見群像劇のようだが、主人公は間違いなくセフトンだ。 彼は軍人としてはぱっとしないが、世故にたけた人間で、如才なくその才を発揮し、それなりに捕虜収容所生活を楽しんでいる。 そこへかつての士官学校の仲間ダンパー中尉が入棟してくる。 彼はセフトンとは対照的な人物。お金持ちで、軍人として出世し、英雄扱いされる。貧乏で出世の叶わなかったセフトンは当初反発するが、紆余曲折を経て、最後にはセフトンが命がけでダンパーを脱出させるという憎い筋立て。美しい友情物語に変貌する。 最も感心したのは二つのサスペンスを用意していること。最初は、誰がスパイか、どうやってナチスと連絡を取り合っているかというサスペンス。それが判明すると、次はそのスパイをどう糾弾、処理するかというサスペンス。悟られれば逃げられるし、殺せば、こちらも殺されるという難題。それを上手に解決したのが最後の脱出劇。それも二段構えの豪華さ。最初は、煙幕を張って、その騒動に乗じてダンパーを奪取し、絶妙の場所に匿う。煙幕の材料となるピンポン玉の伏線もきちんと張ってある。そして、スパイを囮に利用しての脱柵作戦。実にあざやかだ。 気になったところもある。第一に、ユーモア過多であること。内容的から判断して、シリアス路線で行くべきなのに、途中で完全なコメディ路線に脱線してしまっているところがある。全員でヒトラーの真似をしたり、ピンナップガールを想像して踊るところなどはカットしてもよい。ナチス高官がマヌケ過ぎるのも気になる。敵側をぬるくする必要はない。厳格一点張りでも成立する物語だ。次に気になったのは、冒頭の脱出時、セフロンはどうして脱出が失敗すると思ったのかということ。その伏線がない。そもそも仲間が命がけで脱出を図るのに、それを賭けの対象にするのかという疑問もある。文化の違いを感じる。それにしてもナチスは捕虜にたばこを奮発しすぎでは?
[DVD(字幕)] 8点(2013-09-07 01:31:26)
5.  タイムマイン 《ネタバレ》 
ジャンルは、ライトSF青春アドベンチャー。ふとしたことから、それをつけた人物の分子速度を25倍も早くする“分子加速装置”を手にいれた高校生ザックの冒険物語。“分子加速装置”とは、手っ取り早くいえば、時間を止める時計のこと。悪気は起こさず、恋人と一緒にいたずらに使う程度だったが、悪の組織に狙われてしまう。この悪の組織がよくわからない。武器製造会社らしいが、国家安全保障局から48時間以内に時計を差し出せとの命令を受ける。装置は未完成で、使用した人物が老化してしまうという欠陥があった。組織はリミット内に、何とか装置を完成させたいらしいが、完成したらどうするのかは不明だ。開発者ドップラーは組織に監禁され、装置を完成するように強要されている。ドップラーは、ザックの父である物理博士の教え子で、彼がドップラーが博士に時計を送ったことが事件の発端となる。 時計の争奪戦と組織に連れて行かれた父親の救出を主軸に、ザックの恋愛、ザックの友人との友情、家庭内不和の解消、ザックの警察からの逃走劇が絡む。それなりに複雑な内容だが、無理なく消化されている。どれも深追いしていないところが長所で、SFに名を借りた青春ものと割り切り、明るく、バランスがよい。冒頭のドップラーの変装逃走場面は秀逸。ザックが警察官に変装して時間が止まったように見せるアイデアは傑作。加速を止める氷結装置のアイデアも面白い。こういうアイデアを積み重ねて、シリアス度をより増せば、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に近づけただろう。同じテイストの作品だ。残念なのは、時計と父親の関係があいまいな点。時計の開発とどう関わったのか?送付された時計をどう扱ったのか?使ってみたのか?脚本に空白部分がある。最後にドップラーは若返って元の姿に戻るが、さてどうやったのやら。売れてしまった赤のムスタングを買い戻せているが、あのいたずらで売買契約が御破算になったのだろうか。ザックが時計を持ち帰り、安易に使用するが、これはいただけない。退屈しのぎにはちょうどよい作品。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-02 22:48:17)
6.  タイタンの逆襲(2012) 《ネタバレ》 
ギリシア神話の登場人物を総動員させて、神や半神やクリーチャーの迫力ある戦闘場面を魅せるファンタジー映画。神々の戦いが主軸となる。タイタン(巨神)族のクロノスは父により冥界に閉じ込められるが、反抗して王位を奪う。姉と結ばれ、ハデス、ポセイドン、ゼウスらの子種を得るが、「子供に王位を奪われる」という予言を恐れ、子供を飲み込む。ゼウスは母の計らいで生き延び、ハデス、ポセイドンらはクロノスの兄弟ガイアの策略で腹から吐き出される。兄弟は連合して父とに戦い、勝利して父を冥界に幽閉する。戦後ゼウスとハデスは仲違いし、ハデスは冥界に下る。以上が前段階。時は移る。人間の神への祈りが減り、神の力は衰え、冥界の壁が崩れ始める。壁が崩壊すれば、クロノスが地上を跋扈し。この世は闇に閉ざされる。危機感を募らせたゼウスは神々と半神の力を結集して、冥界の壁を建て直そうとする。だが、ゼウスを憎むハデスとゼウスの子アレスが裏切り、ゼウスは冥府に監禁され、その力をクロノスに吸われる。かろうじて難を逃れたポセイドンだったが、ゼウスの子ペルセウスに事実を告げるとやがて命が尽きた。ペルセウスとポセイドンの子アゲノール、それと何故か女王戦士になっているアンドロメダがゼウス救出に向かう。色々と展開があり、ハデスは改心し、アレスはペルセウスに刺殺され、クロノスは地上に放たれる。神々と人間の連合軍対クロノスの戦いが最終決戦。いわば神々の骨肉の争いに人間が巻き込まれる形だ。親子の情愛を絡ませることで物語に深みを与えようとしているが、成功しているとはいえない。ときに物語の進行を妨げている。アレスがどうして、あれほど父を憎むのが伝わらない。ペルセウスも当初は父に対して冷淡すぎる。ペルセウスの子はただ突っ立っているだけの存在。クロノスの心情は計りしれない。ただ「親、子、愛」という言葉が空回りしている。見所である戦闘場面だが、神々が弱すぎるのが問題。矮小化されて人間と区別がつかない。キメラ、サイクロプスの方が数段迫力があった。神々の戦いなのだがら、巨大化し、空を舞い、雷雲を呼び、雷鳴を響かせ、海を逆巻かせ、山を動かしての一大スペクタクルにすべきではなかったか。巨大なだけで溶岩を投げるだけのクロノスと、美女でないアンドロメダにも失望した。CG,VFXは一流だけに甚だ残念である。B級怪獣映画と割り切れば楽しめる。
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-22 15:41:05)(良:1票)
7.  大陸横断超特急 《ネタバレ》 
今までに観たことのないタイプの誠に稀有な映画。ミックス・ジャンルの傑作として特筆すべき作品。脚本の狙いは明らか。鉄道旅行、恋愛、ミステリー、コメディ、アクション、暴走パニックと、多種のジャンルを融合して、今までにない映画を作ろうという野心が見てとれる。音楽に巨匠ヘンリー・マンシーニを起用し、クライマックスの列車がシカゴ駅に激突する場面で、実物大のセットを使用していることからも映画作りに対するスタッフの熱意と意気込みは十分伝わる。 長距離列車の乗客が偶然死体を目撃したことで、国際的絵画偽造団の陰謀に巻き込まれるという筋書き。 列車紀行情緒から始まり、恋愛、殺人、ミステリー、コメディ、アクション、パニックと様々な要素が加わってくるのは見物である。 基本的に列車内ではシリアス、線路外ではコメディ路線となる。 旅行中の電車の窓に突如死体がぶら下がり、死んだと思われた教授が現れるミステリーな展開はヒッチコックを連想させる。 三度も列車から落っこちては舞い戻るという反復のおかしさは、キートンを連想させる。 美女?との恋愛を絡めたミステリーとアクションは007シリーズを連想させる。かといってパロディではなく、自家薬籠中の物にしているところが手柄だ。 惜しむらくは主人公二人が美男美女でないところ。全体を貫く大きなテーマである恋愛要素が弱くなってしまっているからだ。例えば、アラン・ドロンとイザベル・アジャーニーが主演していたとしたらどうだろうか。映画史に残る怪作になっていたに違いない。 脇役は文句なく素晴らしい。自家飛行機で羊の群れを追い回す中年農婦のぶっ飛びぶり、西部劇マニアの田舎保安官のまぬけぶり、相棒となる車泥棒の黒人の良き人ぶり、コメディ・パートが頑張っている。黒人乗客係やヒッピーたちもいい味を出している。ヒロインは最初こそ積極的だが、その後はずっと受け身で大した活躍もしないのが気になった。 一方、ミステリー・パートはアラが目立つ。陰謀の謎が明らかになり、悪党共の正体が割れるのが早すぎる。もっとサスペンスを持たせるべきだ。偽教授を用意する必要性は感じられない。仮に偽教授が講演をしてもすぐにばれてしまうだろう。列車内で連邦捜査官が殺されているのに捜査されないのが不審だし、肝腎の教授の死体の行方も不明のままだ。
[DVD(字幕)] 8点(2013-06-13 01:13:23)
8.  タイタンの戦い(1981) 《ネタバレ》 
「タイタン」とは何か?タイタンはオリンポスの神以前に世界を支配していた巨人族。クラーケン(北欧神話)はギリシア神話には登場せず、アンドロメダを襲うのはケートス(鯨系の怪物)だが、ゼウスはクラーケンを使ってタイタンを倒し、後にクラーケンを地下に封印したという異説もあるらしい。本作品では、ゼウスが「最後のタイタン、クラーケンを解き放て」と言っているので、クラーケンはタイタン族という設定のようだ。◆アルゴス国王アクリシウスは、罪を犯し国を辱めたとして、娘ダナエとその赤子ペルセウスを箱に閉じ込め、海に流した。ペルセウスはゼウス神の神子だったため、怒ったゼウス神は、大海獣クラーケンを放ち、アルゴス王国を民もろとも滅亡させた。これが物語の発端だが、「罪を犯し国を辱め」だけでは何のことか不明だ。ギリシア神話では「王は彼の孫によって殺される」という神託を得たため、娘と孫を川に流した。◆女神テティスの子、カリボスはヨッパ国の王女アンドロメダの婚約者だったが、「月の泉」を動物狩りに利用して、ペガサスを絶滅寸前に追いやったことでゼウスの怒りを買い、世にも醜い姿に変えられた。悲嘆にくれたテティスはゼウスへの意趣返しとして、アンドロメダに結婚できない呪いをかけ、ペルセウスをヨッパに瞬間移動させ、この世の辛酸をなめさせるよう謀り事を巡らす。テティスは、アンドロメダの母が娘と女神の美を較べる発言を聞きとがめ、アンドロメダを30日後にクラーケンの貢物にさせると宣告。これが冒険の前段階で、非情に凝ったものだが、複雑すぎて把握しにくい。◆要衝は、ペルセウスとカリボス、双頭の犬ディオスキロス、蛇女メデューサ、スコーピオン、クラーケンとの一連の戦闘場面だが、今となっては古い撮影技術で、まどろっこしい。クリーチャーの美的センスは素晴らしいものがある。ペルセウスは剣、兜、楯を労せず得るが、何らかの献身、奮闘によって獲得する展開の方が望ましい。困難が大きい程、見所があるし、感情移入も容易になるからだ。主人公の俳優の容姿が凡庸で、神の子には見えないのも減点だ。途中から金属フクロウが一行に加わり、思いのほか大活躍するのが嬉しい。フクロウはペットのような存在で、物語に彩りを添え、癒しを与え、格好のアクセントになっている。映画を退屈せさずに観せるためには、こういったものが必要だと認識させられた。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-11 18:28:23)
9.  探偵物語(1951) 《ネタバレ》 
出だしの雰囲気は大変よい。大都会ニューヨークの警察署を舞台に、多種多様な犯罪者とそれを取り締まる刑事たちの折衝、談判、駆け引きを実録風に描く。社会派的内容、手堅い演技、的確なカメラワーク、リズミカルな展開で佳作を印象づける出だしだ。 主人公マクラウド刑事は、非情なほど正義感が強く、犯罪に対して一切の妥協を許さない。それは悪党であった父親に対する近親憎悪に由来する。犯罪者を見ると父を思い出し、父を思い出すと憎悪が湧くという構図だ。その性癖が犯罪者に向けられているうちは問題がないが、妻に向けられたとき、心の仮面に裂け目が生じ、暗黒面が顔を覗かせる。純粋と信じ切っていた妻に過去の男がおり、子供を堕胎させていたという衝撃。しかも堕ろしたのはマクラウドがいま最も熱情を注いで追及しているシュナイダー医師だった。マクラウドは妻を心の奥底では愛しながらも責め立てずにはいられない。容赦ない言葉での面罵と問責。妻は懸命に哀願し、許しを請うが、遂に「あなたは自分が正義と思っているが、一片の思いやりもない。残酷で嫉妬深いだけ。父親と同じよ」と決定的な言葉を残し去ってゆく。暗い家庭で育った人間は、明るい家庭を築くのを夢みる。その夢が潰えたとき、自殺願望が頭をよぎる。拳銃を持った強盗犯に素手で向かったマクラウドの行動には明らかに自殺願望がみえる。血まみれで倒れ、死の間際に神の許しを乞う姿が痛々しい。 ちょっと待て。タフな刑事による硬質な犯罪捜査劇を期待していたのに、クライマックスが男女の愁嘆場とはこれいかに。前半が終わって、鑑賞者の最大の関心事はシュナイダー医師の連続殺人事件のはず。これが放りっぱなしである。事件の詳細も不明のまま終了でえは、鑑賞後感はよくない。期待外れである。途中から、万引き女の行動が鼻に付くようになり、見る気が失せるのを覚えた。初犯で引っ張って来られたのなら、打ちひしがれているはずなのに、周囲を子細に観察し、刑事の気を引こうとしたり、窃盗男に付き添う女に慰めの言葉をかけたり、場違いな別れの挨拶をしたりと、ありえない行動ばかり。シリアル劇に夾雑物が迷い込んだようで、違和感を覚えた。強盗犯の最後の行動も唐突で、現実味に欠けるきらいがある。どこか白々しい幕引きにみえた。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-05 16:09:12)
10.  タイム・アフター・タイム 《ネタバレ》 
低調な映画。凡作といわれても仕方がない出来。つじつまが合わないことが多い。歴史上の切り裂きジャックは1888年に犯行を行ったが、本作のスティーブンソンは1893年に娼婦殺しをする。彼が犯人と判明する経緯が何ともあっけない。警察が偶然彼の荷物を調べて、証拠品を発見するだけである。何の推理やサスペンスもない。探偵役のウェルズは相当なおバカである。タイム・マシンに同時気化装置なるものをとりつけているのだが、それをつけた意図が不明である。鍵をはずすと中にいる人間が永遠の彼方へ飛んでいってしまうという物騒な機能は必要だろうか?自分が乗っている間に、誰かがいたずらするという可能性を考えないのか。あるいは運転中に衝撃ではずれるとか。鍵を車外に付けていれば、当然その可能性はあるだろうに。また逆転ロックをかけておけば、マシンは常に元にいた場所に戻るという。だがそれはトラベラーが外にいた場合、永遠に戻れなくなることを意味している。うっかりミスを想定しないのか。極めつけは、犯人を追って1979年に飛んだことである。犯人を捕まえたいのなら、マシンで数時間前に戻ればよいだけじゃないか。それから博物館のタイム・マシンだが、鍵がなくても動くはずだ。「連続して旅行をを続けたい場合は鍵を使う」とウェルスも説明している。事実犯人は鍵なしでタイム・トラベルしている。犯人も犯人で、ウェルズを殺すとか、他の都市にさっさと移ればよいものを。ウェルズの恋人が殺されたと観客に思わせるトリックがあったが、あれは反則だ。どう見ても実際に死んだ恋人の友人は部屋にはいなかった。犯人は、「鍵を渡さなければ恋人を殺す」と手紙で脅すが、そんなことをすれば避難・潜伏されてしまうのはわかりきったことである。誘拐して脅かさなければ意味がない。恋人を避難・潜伏をさせられないウェルズは犯人より低能である。そもそも犯人は何をしたいのか、そこが見えてこない。人間が描けていない。タイム・トラベルや切り裂きジャック事件に対する情熱も、H・G・ウェルズに対するリスペクトも見られない。
[DVD(字幕)] 5点(2012-11-21 08:12:17)
11.  タイタンの戦い(2010) 《ネタバレ》 
見所は兵士達と大暴れする怪物達との戦闘シーンであり、十分堪能できる。ただ動きが早すぎて目がついていけない場面が多いのは残念。緩急をつけるのがこつ。クリーチャーをじっくり観察できる静の部分は必要。メドゥーサとの戦いは合格点。蝙蝠怪物は飛び回りすぎ。◆ギリシア神話のペルセウス英雄譚が下敷き。神話にはないキャラが登場するが魅力に欠ける。怪物狩人の兄弟には期待したが、さほど活躍せず、途中リタイアして、最後で少し顔出し。もったいない。カリボスは説明不足。ペルセウスとその母を入れた棺桶を海に投げ入れたアクリシス王の落魄した成れの果で、ハデスにより力を得て復活するが、敵として弱すぎた。精霊ジンは、木炭の身体を持つ砂漠の魔術師らしいが、メドゥーサとの戦いで自爆して死ぬ?最終怪物クローケーンは中世の海の怪物。タコの形で描かれる。さほど大暴れしなかった。◆鑑賞後さほど痛快さが残らない原因。まず役者が役に合っていない。ペルセウスは半人半神で17歳くらいなのに、ごつい顔の五分狩り中年男が演じる違和感。半神としての品格がなく、兵士達と区別できないほど没個性。アンドロメダは絶世の美少女が演じるべき。神話では、母により神に勝る美貌と讃えられたのが奇禍の原因となるのだから。ペルセウスとの恋愛もないのは期待外れ。守護者イオも容姿凡庸で品格不足。◆次に兵士達の仲が良くないのが難点。儀仗兵と老兵ばかりとなじり、イオは邪魔者扱い、ペルセウスをも冷笑する。ペルセウスも独りよがりな行動が多い。「人間として戦うのが信念」と主張し、神の力を否定。観客は彼の人間性よりも英雄としての神性を期待しているのに。最終的には神の力を借りるので、信念が問われそうだ。異種混合、一致団結して神との闘いに向かう姿勢がないと、観客はついてこない。神相手なのに緊張感が足りない。三つ目にゼウスの優柔不断と自家撞着ぶり。人間への最後通牒の使者としてハデスを派遣し、最終怪物クローケーンを放ったのに、陰でペルセウスの味方をしている。そもそも人間の愛と尊敬が天上の神々の糧となり、人間の恐怖と苦痛がハデスの糧となる。つまり利害が一致しないのだから意見が一致するわけがない。それに人間の怒りを買ったのはゼウスの無慈悲さによるもの。煮え切らない神々に観客も混迷。あとペガサスは神話どおり、メドゥーサの首が飛んだときの血から生まれる白馬でよかったのでは?
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-13 03:05:23)
12.  誰が為に鐘は鳴る 《ネタバレ》 
165分版で鑑賞。内容は不出来。先ず主人公のロバートという人物が不自然。スペイン内戦なのにアメリカ人。外国人のこのこやってきて、命をかけて共和国派に肩入れする理由が希薄。そしてこの人が英雄的行為をしないんですね。線路爆破では倒れた仲間を助けずに射殺。橋爆破作戦で山岳ゲリラを仲間にするが、リーダーシップが取れない。味方が敵と交戦しているのに見殺し。変態のパブロに言われ放題。パブロに裏切られ、起爆装置を失くす。「女と一緒にいる時間はない」などと言う舌の根も乾かぬうちからいちゃつき放題。戦場であんなことされたら憎まれますよ。士気が保てない。ロバートが英雄的人物として描かれてないので、クライマックスも盛り上がらない。最後は自己犠牲というより自業自得。◆作戦がよくわからない。そもそも山岳のあの橋を爆破するのは敵の補給を絶つため。飛行機の奇襲攻撃と同時に爆破せよとの命令だが、その必要はなく、確実に夜に爆破すればよい筈。ロバートは敵の動きを味方に知らせ、橋を爆破しても意味が無いと言うが、どうして?手紙を見た将軍は、この奇襲は失敗するというが、どうして?すでに敵の多くが橋を渡ってしまったということだろうか?まだ戦車は残っていたけど。味方に連絡するのに7時間!無線はないのか。もやもやしますね。山峡に小さな橋があって、それが戦術的に大きな意味があるとは思えないんですよ。そのあたりの説明がない。そんなに重要なら大人数で実行すればよいのに。橋一つ爆破するのに駄目男達がぐずぐずしているだけの映画に思える。やれ雪が降ったらどうだとか、パブロを殺せとか、殺したら逃走出来ないとか、ピラーは醜いとか、手相が悪いとか、パブロが味方を殺すとかぐだぐだですね。作戦に無関係のことや仲間割れを描いてばかり。ストレスはピークに達します。雪はだいぶ積もったけど、1日経つと嘘のように消えてしまうのは手抜きですか?◆恋愛部分についてはそこそこの出来ですが、女が泣きながら辛い過去を告白しようとしているのにそれを止めるのはどうかと思う。見る側のストレスになります。全て聞いてあげないと気が晴れないでしょう。話すことが癒しになるのだから。「もういい、いやな忘れるんだ」はアドバイスとしては失格です。両親が殺され、暴行された女なのに尻軽女っていう印象です。「初めてのキスよ」は絶対嘘。原題の「鐘」は教会の死を知らせる鐘のこと。
[DVD(字幕)] 4点(2011-09-24 06:10:30)
13.  ダンス・ウィズ・ウルブズ 《ネタバレ》 
北軍の中尉だった男がたった一人で辺境の砦の警備の任にあたりながら、ネイティブアメリカン(NA)のスー族と交流を深めていく物語。交流の様子は繊細かつ丁寧に描かれていて大変よく分るのだが、肝心の中尉の人物像が不鮮明のまま。彼の成育歴や家族の事が一切描かれない。彼はどうして戦闘中に自殺行為の行動をしたのか、どうして辺境を見たいと思ったのか?情報がないのでこの人物を理解しようが無い。 ◆スー族の風習が描かれていて興味深い。狩の場面など出色だ。しかし食生活やスウェット・ロッジ、ビジョン・クエストなどの描写はなく、「大いなる神秘」などのスピリチュアルな思想も描かれていない。何を食べているのか、肉の保存はどうしているのか、定住して農作物を作らないのはなぜか等、基本的な部分が省かれている。この映画の目的の一つがNAの紹介であるのは間違いないのに、不思議なことである。中尉と彼らの交流は馬を盗まれることから始まるが、彼らにとって馬は貨幣のようなものであり、馬盗みはスポーツのようなものであることも紹介されない。彼らの価値観が紹介されないので、彼らの行動もなかなか理解できない。監督はチェロキー族の血を引いているので本作品を撮ったのだろうが、原作に頼り切って自ら調査していないのだろう。 ◆ポーニー族は好戦的に描かれるが、実際は白人の軍に協力をして斥候などで活躍している。友好的な一面もあるのだ。スー族にとっては白人もポーニー族も異民族。つねに小競り合いがあり、辺境は暮らしにくいところだ。 ◆「中尉の結婚相手が白人」に対するという批判がある。しかしこれは、人種差別露骨な過去の西部劇において白人がNAを娶る事がよくあり、それを打破するための回避策だ。 ◆終盤になると展開がおかしくなってくる。騎兵隊が中尉をNAと勘違いして撃ったりする。声を張り上げて名乗ればわかる話ではないか。捕虜になった中尉は反逆者とされ、処刑宣告される。これもありえない話だ。何をもって反逆というのか?兵隊の一人が勤務日誌をかってに持ち出すのもあり得ない。 ◆エンディングも温い。中尉は自分がいては白人に襲来の口実を与えるとして部落を去る。しかし本来中尉は白人とスー族の間に入って、争いをなくす努力をすべきである。最初からそうすべきだったのだ。彼以外の適任者はいない。白人の言語を話す人物がいなくなったスー族の未来は明るくない。
[DVD(字幕)] 8点(2011-09-19 23:18:48)(良:1票)
14.  大巨獣ガッパ 《ネタバレ》 
ガッパの子は何を食べて毎日50㎝も成長するのか。何も食べないと言っていたけど。気になるのは、あの檻(研究所の施設)からどうやって出したのかということ。巨大化した子ガッパが通れる出口は無いはずである。壁を壊して出せても運ぶのはもっと大変。子ガッパは暴れず、おとなしく従ったようだね。ヘリ2機で子ガッパを輸送するとは自衛隊も捨てたものじゃない。体が帯電しているのによく作業が出来たと思う。それと鳥に帰巣本能はあっても、自分の所在地を遠隔地の仲間に知らせる能力はないだろうと思うけど。羽はあるけど、ほとんど羽ばたかないで飛行するのは凄い。熱線も吐くし、常識を超えた生物だ。 ◆母ガッパは茹ダコを加えていたが、子供にやるためだとしても、まだ子供が見つかってもいないのに、気が早すぎるではないか。茹でるのには熱線を利用したのだろうが、戦車をも簡単に溶かしてしまうほどの超高温である。まともに当てたら焦げてしまう。タコに直接当てず、周囲の水を沸騰させたのだな。芸が細かいではないか。意外と繊細なところがあるね。目は怖いけど。飛べるのに熱海に上陸したときは海からだった。きっと大ダコを採っていたんだね。 ◆子ガッパのテレパシーを受信して日本にやって来たのに、子ガッパの居場所が分らないのはどうしたことか。羽田に連れて行っても子ガッパの声を拡張機で流させなければ気づかなかった。良くわからないね。音には敏感らしいけど、石油コンビナートを踏みつけて爆発させならが移動しても音や火は全然気にしてないね。 ◆オベリスク島の住民はあの結末で良かったのだろうか。3匹のガッパを島で引き取ることになるのだが。しかも火山活動は大層活発である。地震はガッパのせいではなく、火山性地震だろう。危険すぎる。その割に火山灰などはひとつも見当たらないのは不思議だが。それに米潜水艦が助けた島民は少年だけ?他の人どうなったの。 ◆「ここは一度見たことがある。プレイメイトランドの模型にそっくりだ」という発言があったけど、単なる偶然?何故そっくりなの。 ◆プレイメイト社だけど、将来はないな。国民が真実を知ったら非難の嵐でしょう。税関を無視して未知の生物を持ち込んでいるし。記事を発表したとき問題にならなかったのが不思議。でも社長は改めて親子の愛を知ったので、得るものがあった?
[地上波(邦画)] 3点(2011-02-10 06:44:20)
15.  太陽の帝国(1987) 《ネタバレ》 
冒頭場面は、揚子江に漂う棺桶を軍艦が蹴散らす。最終場面は揚子江に漂うジムの鞄。川は時の流れ、棺桶は死、鞄はジムの少年らしい心の象徴。死と共に戦争がやってきて、ジムの少年らしい心を奪っていった。それは時代の流れであり、個人にはどうすることもできない。「太陽の帝国」とは、多感で夢見がちであり、ロマンと冒険を求める少年の心のことである。戦闘機マニアの少年が、戦争が始まっても敵国の戦闘機に思いを寄せるのは実に子供らしい。しかし戦後には、もう何かにあこがれる心を持ってはいない。一足飛びに「大人の打算世界への精神的脱皮」を強制させられたのだ。不憫でならない。原作者は「奪われた少年時代」を批判するわけではなく、乾ききった目で淡々と述する。事実としては、原作者は捕虜収容所を家族と一緒に過ごした。独りだったとするのは体験の異常さを強調するためだろう。監督は原作に忠実でありすぎた。その為観客は肩すかしを食い、感動できない。主題が解りにくいのだ。 【肩すかし】①ジムは日本軍に入りたいと言い、あこがれの零戦を撫でて飛行兵に敬礼していたのに、米軍のP51ムスタングに狂喜乱舞する。②米国人ベイシーとの友情物語と思って観ていると、ベイシーはジムを利用しているだけ。蘇州行の車に乗せようとしなかったし、地雷地帯に行かせるし、脱走も置いてきぼり。③少年と日本人との友情物語と思って観ていると、最後までナカダ(伊武)とは心が通じないし、唯一心の通じていた少年兵は頓死。④ジムの成長物語として観ていると、生存のためとはいえその世知辛い世渡りぶりは痛い。心が豊かになるのではなく、空虚になり崩壊してゆく。⑤反戦映画として観ると、戦争の悲惨さは最低限にしか表現されていない。爆撃シーンでは死も記号的。原爆を神の写真などと変容させている。⑥家族との愛情物語かと思って観ると、ジムは家族の顔も思い出せない。再会時の父親の存在の薄さ。 【日本人】美しい映像が際立つ。夕日が美しい。火花が背後の零戦が美しい。P51の爆撃場面、原爆の火が美しい。音楽も美しい。ベイシーや医者も躍動している。だが日本人だけは美しくない。トラックから降りてすぐに石を持たせて運べなどとは言わない。飛行場に重機関銃も高射砲もない。少年飛行兵がとってつけたように殺される場面は失笑。
[DVD(字幕)] 7点(2010-07-06 10:48:04)
16.  ダンボ(1941) 《ネタバレ》 
ダンボはしゃべれない。母親のジャンボも歌えるけどしゃべれない。きっと製作者が、表情で母子の愛情を表現しようと意図したからでしょうね。表情はとても豊かで、成功しています。「泣かないで」の歌の場面は愛情あふれてましたね。耳が大きいせいで仲間はずれにされるダンボ。ネズミがいなかったら、どうなっていたでしょう。どうしてネズミはダンボの味方になったのか?道義に厚い性格なんでしょうね。子供のころ一人ぼっちの思いをしたのかな。カラスへの演説は実感がこもっていましたね。カラスも根はいいやつらでよかった、よかった。■ダンボの耳が大きいことが奇妙がられて、仲間にも人間の子供にもばかにされる。大人にピエロにされて、高い場所から飛び降りさせられる。しかし耳で飛ぶことが出来、立場逆転、一躍人気者になる。逆転の発想、ワンナイトサクセスです。しかし考えてみれば、その栄光もサーカスの一員としての成功でしかない。人間に使われたままで本当の幸せ・自由があるのか?幼いダンボにはまだそんな発想もないんでしょうね。今は母親のもとで楽しい日々を過ごしてください。■蛇足ながら、父親はどうなってるんだと気になります。あと「ダンボ」って悪口だったんですね。酒を飲ますのはまずいと思いました。
[DVD(吹替)] 6点(2010-03-04 22:49:28)
17.  ターミネーター2/特別編 《ネタバレ》 
この映画と「ジュラシックパーク」の大成功で、ハリウッドはCG全盛となった。記念碑的作品。最大の見所はCGとアクションだが、それを補完する人間ドラマもよく出来ている。まず設定だが、近未来に核戦争で30億人が死亡する”審判の日”が来るということが前提でなっている。大風呂敷だが、核爆発の映像や未来での機械と人間の戦争などを挿入し、リアリティを与えている。これで映画に重みがぐっと増す。次にキャラのぶっ飛びさ加減を指摘したい。T800が服ほしさに裸でバーで大暴れ、T1000がジョンの育ての親をいきなり刃物で刺す、サラが単独ダイソンの家に乗り込み射殺しようとする。どれも意表を突く行動で、記憶に残る。病院場面で、サラの虐げられている様子と彼女の苦悩がよくわかる。機知に富んだ脱出も秀逸。次はサスペンス。冒頭でT800とT1000の両方が出現し、暫くどちらが善玉が分からない。両者鉢合わせのシーンで、銃撃開始と共に判明する面白さ。前作の悪玉が善玉に替わっているのがミソ。そして度肝を抜く、カーアクション。銃撃戦ばかりじゃ退屈する。ヘリ・アクションもよかった。液体窒素で凍ってからのT1000のしつこさ。本当に恐怖を感じた。最も重要なのは、ジョンとT800の友情部分だろう。ジョンが機械に、かっこいい言葉を教え、命の大切さを教え、感情を理解させようとする。ラストで自ら溶鉱炉に入る場面で、ジョンの涙を見て、T800が「泣く気持ちがわかった気がする」と言う。人間ドラマが描けているから、ここでぐっとくるのだ。徐々に沈んでゆくT800。最後の指のサインは、ジョンに教わった人間らしさの象徴。そして「ターミネーターが生命の価値を学べるなら、人間もできるのではないか」とサラのナレーション。明るい未来の暗示だが、サラも生命の価値を改めて学んだとも解釈できる。残念な点。①裸ではなく、未来の武器を持ってやってきてほしかった。②ジョンにATM現金引き出し詐欺をやらせるな。③ダイソンを殺してはいけない。彼を生かしてこそ”機械に生命の価値を教える”というテーマが生きる。④T1000の破壊力を存分に発揮させる、警官隊との全面対決場面希望。⑤T000が溶鉱炉からも生還し、最後はジョンの機知で倒してほしかった。
[DVD(字幕)] 9点(2009-10-14 07:47:11)
18.  大空港 《ネタバレ》 
見所が随所にあるものの、盛り上がりに欠け、パニックものの名作になりえていない。パニック部分は、飛行機爆破と滑走路の飛行機除去。危険人物が乗車しているのが判明する物語はよく描かれているが、犯人が孤立して爆破に至るまでが短かすぎる。もっと説得なり、争いがあってしかるべき。爆発も被害が小さく中途半端。爆発後、時間を置いて天井や側壁がはがれるなどパニックを持続させるべき。飛行機除去は、マックスパワーで移動できたが、後にはブルドーザーが控えていた。まずブルドーザーが失敗して、その後マックスパワーで成功とすれば盛り上がった。着陸も一工夫欲しい。視界不良で進入に失敗し旋回、何とか着陸するものの障害物などにより、クラッシュ、翼がもげるなどの見所が欲しい。騒音問題は竜頭蛇尾。強引な反対派に説得させる感動場面が欲しい。ドラマの部分は冗長的。タダ乗り老婆はいいが、不自然なほど長い。航空長や機長の不倫の部分はいらない。不倫で妊娠したスチュワーデスが怪我をしても可哀想とは思えない。悲劇の部分は悲劇に徹すべき。機長はあくまで正義感に溢れていてほしいものだ。爆破犯の心理の掘り下げは不十分。どれほど悲惨な人生を歩んできたとか、戦争や仕事で辛酸をなめたとか、妻や子供を愛しているとか、この人物が自殺までしてまで家族にお金を残したかった状況を同情できるように描いてほしかった。単なる異常者扱いではだめ。犯人に同情できれば、心に残る映画になったと思う。更に事件の顛末はテレビで放送されていたのだから、その様子も描くべきだろう。緊迫したアナウンサー様子や、それを見た家族の心配する様子など、盛り上がる要素だ。ツボは、保安主任ジョー(ジョージ・ケネディ)の葉巻。マックスパワーのとき葉巻に火をつけていない。成功したら、ばんざいで後ろに放り投げてしまった。操縦席は禁煙だからだろうか。最後メルからせしめたであろう葉巻の箱をかかえ、葉巻をくわえて登場。飛行機によくやったとねぎらいの言葉をかける。火がついているか知らないが、かっこいいです。絵になる男ですね。ジョーの人間ドラマの部分は少ししか描かれてないが、こういう小物を使うことによって、どういう人物か伝わってくる。他の主要人物のドラマ部分も見習うべきだった。昨今のパニックドラマは、パニック部分がメインで、ドラマが少。そういう意味で、貴重な映画。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-08 04:09:22)
19.  ターミネーター4 《ネタバレ》 
よく出来たアクション娯楽作品です。モンスター型、飛行機型、バイク型、蛇型とさまざまのロボットが出てきて楽しめました。撮影では、ジョンの乗ったヘリが墜落するまでを1カットで見せるシーンが出色です。素晴らしい!ただ残念なことにT1やT2のときのように手に汗を握って観ないのです。一つにはジョンとカイルが生き残ることがわかっているからです。もう一つには、ロボットとの1対1の戦い方に既視感があるから。もう少し工夫してもらいたい。アンドロイド型のマーカスは脇役のはずですが、恋をし、組織を裏切り、臓器提供をし主人公を助けます。比重が大きくなりすぎている感があります。カイルの影が薄いです。突っ込みどころ満載なのも嬉しいです。スカイネットは人間を赤外線などのセンサーを使って発見すればいいですね。潜水艦などすぐに発見できるはずです。聾唖の少女の存在も微妙ですね。中途半端の感があります。ジョンの妻の妊娠も気になります。
[映画館(字幕)] 7点(2009-06-30 23:35:33)
20.  ダンサー・イン・ザ・ダーク 《ネタバレ》 
舞台は差別が残る60年代のアメリカ、共産主義国チェコからの移民という背景が強く影響している。セルマは無学・無教養で愚かしいほど不器用にしか生きられない。遺伝で失明する運命が影を落とす。「子供を抱きたい」という本能で子を産む(たぶん私生児)が、子も失明する運命。子に手術を受けさせたい一心で、好きなチェコを捨てアメリカへ移民。仕事と子育てに邁進する毎日。行動力はある。しかし現実は厳しく、工場勤めと内職に追われる日々。子の誕生日にプレゼントもしないほど禁欲なので、母子関係はぎくしゃく。子は愛情に飢え、学校をさぼるし、「どうしてくだらないことばかり聞くの」とうんざり。愛情の空回りで、つい子を殴ってしまう。周りに親切な人が多く、好意を寄せてくれる男性もいるが、子の手術という望みしか見えない。唯一の楽しみがミュージカルで、レッスンにも通う。しかし歌も踊りもヘタ。苦しい現実から逃れたいときはミュージカルを空想。空想でなら美しく歌い、踊れるのだ。失明が近いと悟った彼女はあせり、レッスンをやめ、深夜勤務までするが、失敗して失職。その日隣人と秘密を分かち合うが、これが悲劇の序章。結果的にお金を盗んだ隣人を「依頼殺人」。取り戻したお金で、病院へ行き、子の手術の段取りを決める。裁判では、自分が不利なのに真実を話さない。お金を取り上げられてしまうからだ。死刑判決で恐怖におののくが、再審請求の道が開ける。が、弁護士費用で手術費用が使われると知ると拒否。死を選ぶ。すでに盲目となり絶望していたが、ミュージカルを歌うことで勇気を得る。だが死は恐ろしく、処刑台で卒倒。そこへ子の手術が成功したのを知る。自分の命と引き換えた唯一の希望が叶えられた瞬間、歌が美しい声となってほとばしり始めた。空想のミュージカルが現実となったのだ。「ミュージカルの最後の歌は聞きたくない」の言葉通りに歌は途切れ、命も絶たれた。だが、途切れた歌は、オープニングの音楽となってループし、またミュージカルが始まる。魂は永遠に子を見守る。愚かな選択だが、無償の愛を貫いた!子もいつかわかってくれると信じて。セルマの空想するミュージカルは明るく、生の喜びそのもの。不幸な人間の心の中にこれほどの「希望」が存在することが、理屈なしに魂をゆさぶる。プロットのアラがなければ、金字塔にもなれた作品。ビヨークの鬼気迫る演技、歌に終始圧倒された。
[DVD(字幕)] 9点(2009-04-10 01:10:26)
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